麻野涼さんの『誤審』を読みました。
麻野さんの小説は『県警出動 遺恨の報酬』以来です。
今回はなかなか重い内容でした。重い内容と、そしてなかなかの修羅場というか。
舞台は今回も群馬県だったんですが、前回の『県警出動』シリーズで出ていた財津さんとか塩野くんみたいなちゃんとした刑事はいなかったんですかね…。かなりずさんな捜査で、そのせいで人生を狂わされてしまった人たちがたくさんいました。もちろん、犯罪を行った人が一番悪いのは当然ですが、こんなにテキトーな捜査なの…? と思ってしまうほどでした。でもまぁ、科学捜査がそこまで発達していなかった時代ではそんなものだったのかもしれません。
群馬県の田舎町で夫婦殺害事件起きました。警察は、被害者の幼馴染で建設現場労働者の大船貢を逮捕します。貢は無実でしたが、警察のずさんな捜査と付近住民の怪しい証言のためになかなか無罪判決を勝ち取ることができず、その間に家庭は崩壊してしまいます。
貢の無罪が確定するまでに13年間もの時間が掛かってしまい、その間に母は鬱病になり、長女の佑美は自殺、次女の靖子は行方不明になりました。
事件当時小学生だった三女の典子は看護師になっていました。典子が働く病院に一人の男が入院してきます。その男・箱崎は元教師で、典子の自殺した姉・佑美と接点があったことがわかります。箱崎が就寝中に口にしたうわ言ことから、典子は佑美の自殺の原因、そして夫婦殺害の真相の断片を手に入れ、それを元に凄まじい執念で真犯人へとたどり着きます。
入院患者である箱崎は、まーーそれはそれはろくでもないクズでクズで。末期症状になってからも『ソレ』しか考えられないようなクソッタレなので、同情の余地はまったくないんですが。それにしてもやり方がなかなかのエグさで…。いやー、医療・介護関係者って敵に回したくないですね…。ここまでやってしまうと、さすがに『復讐』の域を出て『虐待』になってしまっていますからね…。
最後、典子が取材を受けて「(真犯人)には真面目に景気を服役してもらい、一日も早く社会に復帰してもらいたいと思います」「殺人犯やその家族にどんな視線が向けられ、どんな思いをするか、刑務所の塀で守られたところではなく、社会に出て、一日も多くその苦しみを体験してほしいと思います」「本当に償いは刑期を終えてから始まるんです」と発言します。これはすごく重い言葉だなと思いました。ずっとずっと苦しい思いをし続けてきた典子であれば、これくらいの発言は許されてほしいと思います。その前に箱崎にやったことはエグいですが…。
先日読んだ『犬を盗む』でも、鶴崎さんは刑期を終えて出所してからも記者にネタにされていました。本人が言わなくても、氏名なんかを変えてひっそり暮らしていたとしても、そういうことってじわっと周りに漏れちゃうものなんですかね…。今のところそういうシチュエーションにいたことがないので、あまりよくわかりませんが…。
にしても、本当に県警の調査がずさんすぎて驚きました。物語だから、だと思いたいです…。
Kindle Unlimited で読みました。
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