中山七里さんの『秋山善吉工務店』を読みました。
中山七里さんの小説は『スタート!』以来です。
火事で家が全焼し、大黒柱である父親が焼死してしまいました。
残された母親と長男次男は、父親の実家である
墨田区の秋山善吉工務店で暮らすことに。
子どもたちにとっての祖父である秋山善吉は
それはそれは頑固な爺さんで、
曲がったことが大嫌い、悪いことをしたらよその子でも叱る
という、昔の雷親父のイメージそのままの人物。
80歳を過ぎても眼光や体力は若いものには負けない。
そんな3世代同居の日々が描かれています。
もちろん、中山七里さんの小説ですから
「何が・誰が原因の火事だったのか?」がずっと根底にあって、
それを追いかけ続ける刑事・宮藤も何度も出てきます。
まず、この宮藤という刑事。
これは『スタート!』に出てくる助監督(からの監督)の
宮藤映一の弟です。
はじめ気づかなかったんですが、「兄弟ともに映画好きで~」
というくだりでようやく思い至りました(笑)。
それから、その宮藤刑事の部下である葛城刑事。
この人は、同じく中山七里さんの小説『静おばあちゃんにおまかせ』
に出てくる葛城刑事ですよね? こっちも、
「知り合いのお婆ちゃんが結構それ(善吉の性格)に近い性格だから~」
というところでようやく気づきました。遅い(笑)。
こっちが2019年発売、『静おばあちゃん』が2014年だから、
たぶんですが時系列的にもこっちのほうが後なんだと思います。
こういうのがたくさんあって楽しめるのが、
たくさん著書のある中山七里さんの小説の面白いところでもありますねー。
物語は5章仕立てになっていて、はじめは次男の太一の話です。
彼は小学生なんですが、転校先でいじめにあってしまいます。
これが結構エグくて…。
あれ、いつ設定の小説だっけ? 1990年代だっけ? と思ったんですが、
後で『ツイッター』という単語も出てくるので比較的最近の設定です。
最近は先生も結構目を光らせていると思うんですが、
この小学校では先生はいじめを黙認しちゃっていますね…。
読んでいて、だんだん読むのをやめたくなるレベルでした。
で、いじめられているのがお爺ちゃんにバレて、
お爺ちゃんのアドバイスでなんとか解決します。
あのきっかけ、本当にたまたまだったんですが、
なかったらと思うとゾッとしますね…。
2章目は長男の雅彦。
こっちは中学生で、すでに札付きのワルになっています。
まぁ、まだかわいいもんですが。
かつての先輩に偶然再会して『仕事』を紹介されます。
もちろんまともな仕事ではなく、
やめたいと思ったときにはすでに簡単には抜けられない段階になっていました。
ここも、お爺ちゃんの助けで切り抜けます。
ちょっと前にずっと新宿鮫を読んでいたので、
「こうやってヤクザになっていくのか…」と思ってしまいました。
3章目の主役は母親の景子。
やっぱり義両親(夫の両親なので)との同居は厳しいですよね…。
(景子の実家が田舎だから苦渋の選択だったようですが、
「よく選んだな…」という感想ですよ…)
早く母子3人で暮らせるように頑張って就職するんですが、
その職場でモンスタークレーマーに絡まれてヤバい展開に。
ここは義母のお婆ちゃんの暗躍で切り抜けます。
もちろん、裏ではお爺ちゃんのアドバイスがありました。
4章は、家族ではないですが宮藤刑事。
彼は、この火事が放火殺人であると考え、
景子や善吉を疑います。が、決定的な証拠は見つからず。
善吉と直接対決して見事にやられてしまいます。
本人としてはめちゃ悔しいところでしょうが、
見ているこっちは気持ちよかったですね(笑)。
で、最終章の5章。
お爺ちゃんの性格もいいし、
「静おばあちゃん」シリーズみたいに連続ものになるのかな…
と思いきや、って感じです。
ボロ泣きしました。
展開的には東野圭吾さんのガリレオシリーズ
『真夏の方程式』を思い出しました。ほんの少しだけね。
あのお爺ちゃんがああなのに、
どうして彼の息子である史親はあんな感じだったんですかねぇ…。
もちろん、いいところもたくさんあったんでしょうけど。
2人の息子たちはまっすぐに育ってほしいと願うばかりです。
最後のちょこっとだけ8年後の話が出てきますが、
その時点でもまだ同居しているようなので、
結局はすべて丸く収まったようですね。よかったよかった。
Kindle Unlimited で読みました。
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