神様の裏の顔

読んだ本

藤崎翔さんの『神様の裏の顔』を読みました。
藤崎さんの小説は初めてです。

藤崎さんは高校を卒業してから6年間お笑いコンビの芸人として活動されていて、その後はアルバイトなどをしながら小説を書かれていたそうです。
なるほど、『神様の裏の顔』はなんだか舞台映え・映像映えしそうな話だなと思いました。ユーモラスであり、かつ畳み掛けるような展開で目が離せなくなります。まぁ、私は相変わらず耳読でしたけど。

教師・坪井誠造が亡くなりました。彼は生前とても多くの人から慕われていて、『神様のような男』と言われるほどでした。教え子・同僚・大家をやっていたアパートの店子、様々な人が彼の葬式にやってきて、彼との思い出話に花を咲かせます。
通夜振る舞いの席で、鮎川茉希はずっとどこかで考えていた『疑惑』が少しずつ実体化していくのを感じました。彼女は坪井先生の教え子でしたが、行く宛がなかったところを坪生先生に助けられ、先生のアパートに住まわせてもらっていました。程なくして男女の関係にもなってしまいました。しかし、彼女は「自分の部屋が坪井先生に盗聴されているのではないか」と感じていたのです。同じアパートに住む寺島というお笑い芸人の卵と話していて、いよいよその疑惑が現実味を帯びてきました。まさかあの人格者である坪井先生がそんなことをするはずはない、そう思っていましたが、坪井先生の同僚の根岸、坪井先生の元教え子の斎木、アパートの隣家に住む香村広子も集まってきて、それぞれの『違和感』が集められ、それがすべて坪井先生のもとへ集約されていくようでした。
茉希・寺島・斎木・根岸・広子の5人で話しているところを、坪井先生の娘である晴美に気づかれ内容を知られてしまいました。娘の晴美は5人の言い分に顔もあげられないほど恐縮し沈痛な面持ちでいましたが、寺島のふとした発言から1つ、また1つとその『疑惑』が覆されていきます。

この手の話ってだいたい、

  1. 疑惑が持ち上がる
  2. 疑惑を補強する材料が集まってくる
  3. ふとしたきっかけで、次々と疑惑が払拭される
  4. でも本当は、疑惑が事実

みたいな流れが多いと思います。
で、ぶっちゃけていっちゃうと今回もその流れなんですが、『4. でも本当は、疑惑が事実』の『事実』が誰の事実だったのか…。タイトルの『神様の裏の顔』の『神様』はこっちの神様だったか…と、思わず唸ってしまいました。なんというか、「そっちから来るの!?」みたいな意外性がある意味コントっぽくて。しかも、もう一つの『事実』を知ると、一瞬混乱して、それからじわじわと怖くなってきます。

疑惑は最終的に全部で7つ出てくるんですが、これがまたなかなか絶妙で。本当にまったく関係のなかったもの、偶然だったもの、意図して故意にやったもの、それぞれ織り交ぜられています。そして、同じ1つの出来事だとしても見る人が変わればまったく違う出来事になるんだなということにあらためて気付かされます。いやー、人間って怖いですねぇ。そして、おもしろい。

Kindle Unlimited で読みました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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