白夜行

読んだ本

東野圭吾さんの『白夜行』を読みました。
東野さんの小説は『誰かが私を殺した』以来です。

誰かが私を殺した
東野圭吾さんの『誰かが私を殺した』を読みました。東野さんの小説は『容疑者 X の献身』以来です。東野さんの Audible 作品はこの1冊だけです。電子書籍化と同じ感じで、東野さんご自身が認めてらっしゃらなかったようですが、今回は『オーディ...

先日、染井為人さんの『正体』を読んで、無性にこの『白夜行』を読みたくなりました。

正体
染井為人さんの『正体』を読みました。染井さんの小説は『震える天秤』以来です。ここ最近はずっと染井さんの小説を読んでいましたが、ついにこの『正体』を再読しました。『正体』は、以前 WOWOW で亀梨和也さん主演でドラマ化されていて、そのニュー...

20年近くぶりの再読だったかもしれません。
そして、毎度結末も途中の流れも全部わかっているはずなのに、ボロボロに泣きました。
やっぱりドラマが頭にあるので、キャストは雪穂は綾瀬はるかさん、亮は山田孝之さん、笹垣刑事は武田鉄矢さん、松浦は渡部篤史さんで読みました。

…そもそもの元凶は、やっぱり雪穂の母親なんでしょうか。
でも、彼女も別に何か悪いことをしたから生活が困窮することになったというわけではなかったはずです。
夫に先立たれてしまって、日々暮らしていくだけでもきつかった。
そこを悪い奴らに目をつけられて、娘にひどいことをさせなければいけなくなってしまった。
…ここで雪穂の母親がそんな悪魔からの誘惑を断ち切る勇気を持ってさえいれば、そもそも何も起きずに、19年も長引かせることはなかったのかもしれないですね。
まぁ、それでは何の事件も起きずに、そもそも『小説』が成り立たないんですけどね。
「辛い思いをした子供たちはいなかった」ということになるわけですからね…。

にしても、今回小説を読んでいて、改めてやっぱり秀逸だなあと思いました。
証拠とか、話の順番とか、証言を明らかにする順序とか、それぞれやっぱり神がかっていて、本当に鮮やかだなと思います。
すべてが美しく計算されつくされていて、最後まで全部引っ張って行ってもらっているような感じ。
途中、ダレるところがまったくなかったのが、本当にすごいなと思いました。
…ただ、『気に入らない女の子を襲わせる』っていう手段が3回も出てきたのは、自分も女だし女児の母親でもあるので、正直気持ちのいいものではなかったですけど。
でも、3回目の時に雪穂自身が語った「悪魔は1人だけではなかった」「その時のこと思い出しそうになったら、自分(雪穂)の顔を思い出せばいい」という言葉。
あれはきっと本当のことだろうな、と。
それを思うと、本当に苦しいです。

図書館のすみっこで同級生と切り絵に興じていた幼い2人が、どうしてこんなに過酷な運命に巻き込まれなければいけないんでしょうね。
『現場』を見つけてしまった亮の心は、一体どんな衝撃を受けたのか。
自分を愛してくれている父親と、自分が密かに慕っている女の子の、おぞましい現場を目にしてしまった彼は、その瞬間壊れてしまったんですかね…。

ずっと不思議に思っていたことがありました。
亮は何のためにこんなことをしているのかな、と。
もちろん、自分の父親が雪穂に対して取り返しのつかないことをしていたという罪悪感はあるでしょうけど。
でもそれは、あくまで『父親が犯した罪』であって、彼には罪はないはずです。
にも関わらず、彼はそれ以降の人生をずっと彼女に捧げると決めてしまいました。
笹垣刑事は「2人の間にどんな密約が交わされたかわからない、かわされなかったかもしれない」と言ってましたが、残りの人生すべてを犠牲にして雪穂のそばにいると決めたんですかね。
少なくとも小学校のときは、亮は雪穂をとっても大好きだったと思うんですけど、そんな彼女が別の男と付き合ったり、結婚したりていう場面を影からアシストしていたのは、どんな気持ちだったんですかね…。
「雪穂を幸せにしなければ」という気持ちなんでしょうか。
理解できるような、できないような、したくないような。

やっぱり小説版ですと、亮と雪穂のモノローグみたいなものが一切ないから、本当に2人で計画して鮮やかにこなして、私達の目には写ってしまいます。
けど、ドラマ版のプロデューサーの方が当時「2人をただのモンスターにしたくなかった」と語っていて、私はそのドラマを見てすごく救われたような気がしました。
本当に完全にモンスターだったら悲しかったですけど、2人もやっぱり良心とか愛とか葛藤とかそういうものがあったんだなって、ドラマ版を見て伝わってきます。
それに、綿密に鮮やかに立てられた計画で実行されていった犯罪が、本当は結構すれすれなところで、ものすごく危ない目にも遭っていて大変で、そういうことが何度もあったという描かれ方になっていました。
だからこそ、私はドラマ版も大好きでした。
亮と雪穂が直接喋っているところって、小説の中では多分なくて。
まぁ、図書館で目撃されたときだけですかね。
でもドラマ版だと結構会話していて。
「もう、2人で何をかも全部投げ出して、どっかに行っちゃえばいいのに」って何度も思いました。
でも、歩き出しちゃってるから、もうそれもできなくて。
それでも生きて行かなくちゃいけないんですよね。

子供の頃にあった、ものすごくつらい出来事を、こんなにこんなに長い間引きずって生きていかなきゃいけないなんて、本当に残酷です。
きれいで柔らかい子どもの心に大きな傷をつけてしまった大人たちが、本当に憎いですね。

でも、2人とも、自分たちを支えてくれて愛してくた人たちを、全部全部裏切って進んで言ってしまいました。
結局、最後あんなことになってしまって、雪穂は振り向きもせずにそのまま歩き去ることになって、これで本当に良かったのかな、と思ってしまいます。
彼にすがりついて大泣きできれば、本当は良かったんでしょうけどね。
そんなことをできないですもんね。
今までやってきたことを全部捨てることになっちゃいますもんね。

この小説には、明言はされていませんが『幻夜』という続編があります。
残念ながらそっちは Kindle 化されてないんですよねー。
久しぶりに読みたいなと思うんですけど、Audible でもいいからやってくれないかなと思っています。
だめですかねー、どうでしょうか?

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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