宮島未奈さんの『成瀬は都を駆け抜ける』を読みました。
宮島さんの小説は『成瀬は信じた道をいく』以来です。
いやー、『成瀬シリーズ』最新刊にして最終巻、買ってしまいました。
ケチな私は、文庫化を待つか、Audible 化されるのを待つか…という感じなんですが、息子が「読みたい」と言ったもので。
たまたま予約中にポイント50% 還元だったときがあって、興奮しながら予約してしまいました。
ただまぁ…こうやって買っちゃうと…前の2巻も欲しくなる…あら不思議…。
そのうち買って、もう1回読むのもいいですよね…。
今回も短編集の体裁でした。
6つのお話が入っていました。
最終巻にふさわしく、豪華だったと思います。
1つ目は『やすらぎハムエッグ』。
確か、前巻の『やめたいクレーマー』のときにはすでに大学生でしたよね?
なので、まさか入学式から話が始まるとは思っていませんでした。
『友達と同じ高校に進学する』っていうのはそこそこあることですが、『友達と同じ大学に進学する』っていうのはそんなに多くないことだと思うので、入学直後ってすごく不安ですよね…。
幸い私は、中学校からの友人と同じ大学に入学したので、そんなに不安を感じずに進学できましたが、他県から来た場合ってすごく心細いでしょうね。
そして、やっぱりなんだかんだで、成瀬の行動にジーンと来ちゃうんですよね。
本人はそんな気はないかもしれないですけど、何と言うか、その『自己肯定感が高い』ところにものすごく惹かれる人って多いんだろうなと思います。
まー、逆にそれが原因で過去にちょっといじめられたこともあるみたいですし、「そういうところが嫌だ」と思う人も少なからずいるだろうなとは思いますけどね。
今回の語り手・さくらちゃんは、まさに成瀬のその『何気ない行動』とか、『何でもズバッと決められるところ』に、とても救われた女の子なんだろうなと思いました。
これからどの程度彼女と親密な関係になるのかはわからないですけど、でも成瀬みたいな子がいたら惹かれるし、いい影響を受けられるんじゃないかなと思います。
高校の時までの同級生の男の子・早田くんと大学が離れてしまったということは、まあなんとなくよくある展開な感じもします。
でも、せっかく京大に受かったのに、早田くんが東大行ってたとか、ちょっと悲しいですね…。
さくらちゃんのことだから、別にこのままずっと何もしない状態が続くんだろうな、と思ってしまいます。
まぁ、ここで樺沢先生だったら「告れ!」って言いますよね(笑)。
このケースだと、私もそう思うかなー。
同窓会なんか行かなければいいわけですし、『このまま何も伝えないで会えないでいる』のと、『思い切って振られて気分を切り替える』というのを天秤にかけた場合、どっちがいいのかな、という感じですかねー。
振られる前提で書いちゃってますけど(笑)。
でも、私も自分が大学生の時は、そんなこと考えられなかったですけどね…。
成瀬と島崎との関係が男女関係っぽくと誤解されてるところもおもしろかったです。
訂正しようにも、「そう思われてる」ってこと自体分かってないでしょうしね。
せっかくの大学生活、楽しんでほしいものです。
2つ目は『実家が北白川』。
『北白川』と言われても、東北出身である私には全然ピンとこない場所だったんですが…。
ただ森見登美彦さんの小説はいくつか読んでいるので、『達磨』とかそういうところで笑ってしまいました。
まー、やっぱり『京大』といえば『森見登美彦』ですよねー。
確かに言われてみれば、成瀬は『黒髪の乙女』ですね…。
『夜は短し歩けよ乙女』も読んだので、なんだかちょっと方向が違うような気もしますけど、まぁでも『変わった女の子』であることは間違いないです。
この先、会長とどうにかなるのか、もしくは、会長ではなく梅谷くんとどうにかなるのか。
…いやいや、成瀬には、『成瀬は天下を取りにいく』で彼女を見初めてきた、広島の西浦くんがいるじゃないか。
…なんて、いろいろ考えてしまいました。
私が通っていた大学はほぼ単科大学みたいなもので、在学中は私の学部以外にもう1つ学部があったものの、そこの人たちとはほとんど授業がかぶらなかったんです。
なので、「他の学部の人と同じ教室にいる」というのがなかなか想像できないんですよね。
「そういうこともあるのか」と、今更思いました。
『哲学の道』は、確かに森見登美彦作品では何度も出てきていました。
というか、前の話の『鴨川デルタ』とかも、「あぁ、これは森見登美彦の世界だな」なんて思いながら読んでいましたね。
梅谷くんの父の「京大は森見登美彦以前と森見登美彦以降に分けられる」、これは名言ですね。
…迷言、かな…?
3つ目は『ぼきののか』。
『おのののか』さんのようなまとまりの単語で、一瞬何のことかわかりませんでしたけど、やっぱり人名(?)でした。
そして、やっぱりなんだかんだでまたいい話になってて、なんかずるいですね(笑)。
今回は京大の子ではなく、立命館の女の子が出てきました。
『簿記の試験に受かるために YouTube 配信をやっている』という設定で、『ぼきののか』。
おもしろかったです。
しかも1回炎上してしまって、その謝罪会見を、前巻の野宿 YouTuber・城山くんが手伝うという。
様々なリソースを余すところなく使うのが、素晴らしいです。
こうやって友達って増えていくんですね…増やせなかった人間にとっては目からウロコですよ。
『スパチャ』を『売掛金』と言う、などの細かい設定がおもしろかったですけど、それよりも、視聴数や登録者数などの『数字』ではなく『相手の顔』を想像することができるようになったののかちゃん。
この時点で気づけて本当に良かったと思いました。
うちの息子もちょいちょい YouTube やっているようなんですが、やっぱり数字とかを追いかけるとつらそうだなと思いますね…。
まぁ、そんなに追いかけられていないみたいですけど。
こうやって、みんなで同じことをワイワイ言いながらできるっていうのが、まあちょっと(いや、かなり)羨ましいです。
この歳になると本当にそう思います。(45歳です)
この間読んだ伊坂幸太郎さんの『砂漠』もそう思いました。
まー、今は今で幸せですし毎日楽しく暮らせていますけど、もう大学のころには戻れないわけですからね…。
あれ、『自分の大学時代』には、あんまり戻りたいと…思わないかも…?
今回は「私はこの夏を簿記に捧げようと思う」という、かつての迷言を思い出させる一言がありましたね…。
あと、生配信のときの成瀬の回答に「まだ死なない」というのがありました。
多分「死ね」と書かれたものに対する返答だったんだと思うんですけど、なんかこの言葉いいなと思ってしまいました。
「死ね」って、言われたらすごく傷つきますよね。
今から25年以上前に初めて『2ちゃんねる』を見たとき、その字面ですごく怖かったのを思い出しました。
もうさすがに慣れましたけど…。
でも「まだ死なない」って返せばいいんですもんね。
やっぱり、成瀬はかっこいいです。
4つ目は『そういう子なので』。
私の地元・仙台にも、平日の夕方の地元の人がよく見ている情報番組はありました。
でも、こういう『市民1人にスポットを当てる』みたいな企画は…あったかな…?
最近は見ていないのでどうなのかわからないですけど。
私が見ていた25~30年前にはなかったと思います。
だって、『普通の人の人生』を見ても「別に…」となってしまいますしね。
まぁ、成瀬は普通の人ではないですから、見ていて楽しいと思いますが、それはこの物語の主人公だから、ですしね。
成瀬のお父さんは、前回の受験のときなどで何回か登場していますが、お母さんに関してはちゃんとフォーカスされたのは初めてかもしれないですね。
…成瀬はお母さん似なんですね!
何というか、「動じないところ」というか。
そして、お母さんが6年生の担任に言ってくれた「そういう子なので」という言葉を、成瀬が嬉しく思っていたということ、お母さんが知れてよかったと思いました。
お母さんは「そんなことしか言えなかった」という後悔を持っていたようなんですが、この瞬間にそれは消えたでしょうね。
他人事ながら、ちょっと胸が熱くなりました。
…まぁ、学校の先生は当たり外れが多いですね…。
こういう書き方をすると、すごく親身に対応してくれている先生に対してすごく失礼ではありますが、やっぱり相性やその先生の指導法もあると思います。
小さい子にとっての『学校』って自分の世界は大きな割合を占めているものなのに、そんな風に否定されるようなことを言われたら、やっぱりショックだったと思います。
成瀬は「この人が自分のお母さんでよかった」と思ってるんじゃないかな。
5つ目は『親愛なるあなたへ』。
…やっときたーーー!!
広島から来た西浦くん、やっぱり京都に進学で来ていました!
しかも、まだ成瀬とも文通を続けているとのこと!
私は『西浦くん推し』なので、また出てきてくれて嬉しいです。
しかし。
夜に手紙を書いて、それを出す出さないで葛藤する、なんて…なんだか乙女っぽくてかわいらしいですね。
1日の成瀬に付き合ってみて、彼女が本当に多忙であることがわかったんでしょうねー。
他の人だったらちょっと引いちゃうかもしれないですが、西浦くんだったら全部そうやって受け止めていくんだろうなと思いました。
献血も麻雀も全部受け入れているし、忘年会まで…。
そして、気に入られたのか『桃鉄大会』にまで誘われてるし…。
最後の『手話』が、またいいですねーーー。
成瀬は、こういう風に全部を受け止めてくれる優しい人と付き合ったらいいと思うよ…。
しかも、最後の「俺が手紙を間違えなければ、この人たちと出会うことはなかった。1つ1つの行動が積み重なって、なぜか今ここにいる」。
こんなこと、この歳で思えます!?
本当にいい子ですね。
成瀬を支えてあげてほしいと思いました。
最後は『琵琶湖の水は絶えずして』。
『成瀬シリーズ』の最終巻なのに、島崎が出ないのはちょっと寂しいな…と思っていたところでした!
やっぱり、最終話は島崎と閉めてほしいなと思っていたんですよ。
やっぱり、なんだかんだいってジーンとする感じに持っていきますもんね。
やっぱり、プロの小説家さんはすごいなと思います。
今回は、ちゃんとみらいちゃんも呉間夫妻もみんな出てきました。
達磨研究会の人たちも(また)出てきました。
最終話にふさわしい、オールスターな感じでしたね。
島崎が思っているとおり、成瀬はいろんな人を照らしていますけど、そんな成瀬もやっぱり疲れることはあるでしょうし、今回みたいに病気になっちゃうこともありますよね。
私も高3のとき盲腸やったんですよ。
別に命に関わるような病気じゃないんですけど、私も普段病気とは無縁の人生だったので、「人生の初の入院で同じように弱気になったなー」と思いだしました。
島崎とは、まさかの一緒に観光大使もできましたし、島崎に癒されて一緒にいられることを幸せに思っただろうなと思いました。
そして一番最後、「私も200歳まで生きようと思うの」と宣言してくれた島崎。
成瀬にはいろんな友達ができましたけど、やっぱり親友は島崎なんでしょうね。
前の話で成瀬のお母さんも言っていたけど、島崎と同じマンションで本当に良かったんだと思います。
いい友達がいて羨ましいです。
こんなに自分のことをわかってくれる友人は、本当に貴重な存在ですね。
…本当に今回で終わっちゃうのかなー。
せっかく素晴らしいキャラクターのいい小説なので、是非ともこれからも続けていってほしいんですが…。
島崎じゃないですけど、私も『ゼゼカラ』がどうなるのか、成瀬と島崎は何歳まで生きるのか、いろいろとっても気になります。
これからも成瀬の活躍を見守っていたいな、と思うんですよね。
『最終巻』なんて言わず、もっと大人になった成瀬たちを味わわせてほしいです。





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