宮部みゆきさんの『新しい花が咲く―ぼんぼん彩句―』を読みました。
宮部さんの小説は『模倣犯 5』以来です。
久しぶりに宮部さんの小説を読みました。
やっぱりとても楽しかったです。
この『新しい花が咲く―ぼんぼん彩句―』は、宮部さんのカラオケ仲間が作った俳句に、宮部さんが短編の小説をつける、という企画だそうです。
今回は、12個の俳句にそれぞれ物語がついていました。
おもしろかったです。
ただ、このかわいらしい表紙とは裏腹に、結構ブラックというか、ゾッとする話が多かったように思いました。
最初は『枯れ向日葵呼んで振り向く奴がいる』。
婚約者に裏切られて、相手と子供を作られてしまい、婚約を破棄されてしまった女性。
もう、本当これだけで胸が詰まりそうでした。
バスに乗って着いた植物園で、ひまわりが集団で枯れていて、それを自分の人生に重ねてしまっていました。
なんかとても悲観的になって、「これからどうするんだろう」とちょっと怖くなりました。
でも、彼女はなんかいい方向に立ち直れたような、吹っ切れたような感じで植物園を後にできた…んだと思います。
よかった…のかな…?
2つ目は『鋏利し庭の鶏頭刎ね尽くす』。
これはゾッとしました。
夫には昔、口約束で婚約をしていたようなかわいらしい彼女がいました。
でも、彼女は幼い頃に亡くなってしまって、夫とその家族はそれをずっと引きずっています。
自分と結婚してからも、夫の母親と妹からはずっと「(その女性)だったらよかったのに」という圧力みたいなものを感じていました。
でも、当の夫は違うと思っていた…のに、夫もやっぱりそうだったのがわかってしまいました。
…いやですねー、ムカムカします。
でも、ここまでなら、「まぁあるかもね」という話だったんですが…。
ようやく離婚を決意して、その亡くなった女性の家に行って聞いた話が…本当に怖かったです。
そして、最後に本人が口に出した言葉も怖かった!
…たまにこういう話は聞きますけど、本当に何にもいいことないですよね。
お互いに不愉快になるだけ。
私の夫の両親はすごく大事にしてくれているので、本当にありがたいなと思いましたよ…。
「仲良くしろ」とは言わないですけど、せめて揉め事を積極的に起こすようなことはしないでほしい。
せめて、努力くらいはしたいですね。
でもまぁ、難しいですね、特に、女性同士はね…。
私の母も、自分の姑との関係に苦労してましたのでね…。
3つ目は『プレゼントコートマフラームートンブーツ』。
この人たちが作っていたのは、『羊毛フェルト』のお人形、ということでいいんですかね?
なんか、そのイメージでずっと読んでいました。
きっとかわいらしいものができたんだろうな、と思います。
女性は、勘違いでこのマンションにたどり着いてしまったけど、多分すごくいい人だったんでしょうね。
なんかいろいろ話をしているうちに、みんなが協力してくれて。
重い荷物をもう1回持って帰らずに済んで、よかったと思いました。
4つ目は『散ることは実るためなり桃の花』
これもゾワっとする話だったなー。
この手の『司法試験受験生を支える妻』みたいな話し、たまに聞きますけど…。
まぁ、多分受かって晴れて弁護士になったら捨てられるんだろうな…と、もーーー誰だって思ってしまいますよね…。
本人も、小説とかで読んだらそう考えられるんでしょうけど、いざ自分の身に降りかかってみるとそう思えない、というのが不思議なところです。
お母さんがたまたま現場を見つけて、着々と証拠を固めたにも関わらず、本当は娘もそれに気づいていて、でも今更引けない…みたいな感じでしょうか。
いわゆる『サンクコストバイアス』と愛憎がうまい具合にブレンドされてしまったのかな…。
今回出てきた『絵本』の内容、とても不思議な話だなと思ったんですが、解説に書いてあったんですけど宮部さんの創作とのことです。
すごいですねー、読んでみたいから描いてくれないかな…。
5つ目は『異国より訪れし婿墓洗う』。
ちょっと、いやかなり SF っぽい話。
以前読んだ山田宗樹さんの『百年法』を思い出しました。
こういうのって、「どっちが正しい」とかそういうのは本当にないでしょうし、「そのときの選択がベストだった」と思って生きていくしかないんだろうな、と。
こういうのも、精神科医の益田先生がよくおっしゃっている『トロッコ問題』になるのかな、と思いました。
ただ、こうやってマウント取ってくる人って、本当に現れそうですよねー…。
物理的に離れて住んで、もう顔を合わせないということなのであれば、すっきり忘れるのが一番いいんだと思いました。
どこに行ってもこういう輩っていますから…。
こういうときに、相手側に「実は…」みたいな『何か』が降りかかることを、どうしても期待しちゃいます(笑)。
でも実際には、そんなこともないんでしょうね。
やっぱり、嫌な人の存在を忘れちゃうのが一番いいんでしょうね。
6つ目は『月隠るついさっきまで人だった』。
これは、「本当にありそうな話だな」と思って、とても怖かったです。
大学生になりたてで、明るい希望を持って毎日暮らしていて、知り合った人がすごくいい人で…と思っていたのに、実は…と。
こんな風に少しずつ本性を見せてくるところが、本当に怖かったです。
こういうのも『デート DV』っていうんですかね? ちょっと違う?
「昔の優しかったころのことが忘れられない」というのもあるでしょうし、「実家がちょっと大変な時期に家族に迷惑かけられない」というのもあるでしょうね。
やっぱり、責任感が強い『長女タイプ』の女の子が巻き込まれそうなイメージです。
今回は、たまたま『おばあちゃんの死』がきっかけでこうやって明るみに出たわけですが、みんなが言っていたようにやっぱり「おばあさんが与えてくれたきっかけ」なんだろうなと。
最後はとても怖い思いをしたでしょうけど、本当に無事でよかったです。
これに懲りちゃうと、新しい人を好きになれなくなってしまいそうですが…。
今回、たまたま一番ひどいパターンに当たってしまったというだけでしょうから、新しく素敵な人に出会ってほしいなと思います。
7つ目は『窓際のゴーヤカーテン実は二つ』
これはなんともすごく不思議な話でした。
ホラーなのかなと思いつつも、別に何か実害を被ったわけでもない…むしろ良かった…?
でも、二つあった実のうち一つは夫が食べて、もう一つは妻が食べて、それで枯れるというのは、不思議な光景だったでしょうね。
この奥さんは願いが叶うといいなぁ、と思います。
…本当に、何事にもマウント取ってくる人いるよなーと。
2つ前の話でも、今回でもそう思いました。
女って悲しいなぁ…まぁ、女だけじゃないか。
8つ目は『山降りる旅駅ごとに花ひらき』
一見『美談』に思えるかもしれないですが、じいさんも結局は生前はこの孫を無視していたわけで。
例えばこっそり彼女にだけ連絡を取るとか、そういうこともできたと思うんですけどね。
なので、ちょっともやっとした気持ちは残ってしまいます。
でも、こうやって気にかけてくれていたのは、やっぱり結局は嬉しかったですね。
なんといっても、やっぱりお金は大事。
やりたいことがやれますからね。
それにしても、姉妹3人いて、そのうちのふたりがとても美形で、自分は…と思ったとき、すごくつらい気持ちになるでしょうね。
じいさんは要するに、無視されている孫は放置、そういうことをしている娘も管理できないし、さらには愛人まで作ってるし、と。
そう考えると、なかなか最低だなと思っちゃいますけど。
でもまぁ、最後の最後で少しはよかったです。
これですっぱり縁を切って、自分の人生を生きていて欲しいですね。
9つ目は『薄闇や苔むす墓石に蜥蜴の子』。
いやー、これはすっごく怖い話でしたねー。
こういうことがあるから、「善意で交番に届ける」みたいなことがためらわれちゃうよなーと。
確かに読んでいて「トカゲ」発言は少し違和感がありましたし、相手が気を悪くするかもな、とも思いました。
でも、それを言ったのはケンイチくん本人ではないし(ケンイチくんのお母さんですよね?)、そこで最後の暴挙に出たのは本当に最悪の最悪です。
やる相手が違う。
まったく違う。
犯人、もしくは母親にやるべきでした。
これは、小さな男の子の心にひどいトラウマを植え付けるだけのひどい行為です。
確かに事情はわかりますけど、これだけは、本当に矛先を向ける相手を間違っていました。
本当にかわいそうでした。
10つ目は『薔薇落つる丑三つの刻誰ぞいぬ』
こういう話があるから、大学生くらいの年頃では1人暮らしさせられないな…と思っちゃうます。
というか、今回は親元から通ってますしね…。
あー、本当に怖いです。
どうしたら避けられるんでしょうかね…本当に悩んでしまいます。
こんな状況で、ミエコは本当にがんばったと思います…。
ケイタとは事を荒立てないように少しずつ遠ざかる努力していたんですけど、相手の方が一番上手でしたね…。
『模倣犯』で出てきた『お化けビル』みたいなところに連れて行かれて、結束バンドで自由を奪われて中に放り込まれるとか…もー、本当にゾッとします。
でも、そこから先の展開は意外と好きでした。
まさか、こんなハートフルな話になるとは…!
こういうお化けだったら、会ってもいいな…。
しかも、その見た目が『貞子』だった理由も、おもしろかったです。
その後、『悪い奴ら』にも鉄槌が下ったようですしね。
ただ、ミエコのご両親は、本当に本当に本当に心配しただろうな…と思うと辛いです。
そして、本人にも変なトラウマが残らないといいなと思うんですけど…。
最後、『バラ』で気持ちが伝えられたような感じになって、よかったです。
たとえ人ならざるものだったとしても、助けてもらえて感謝を感じたわけですから、それをちゃんと伝えられて良かったなと思いました。
11つ目は『冬晴れの遠出の先の野辺送り』。
『野辺送り』という言葉を知らなかったんですが、お葬式のあとに火葬場まで棺を運んで歩くこと、とのことです。
そういう風習がある地域に縁がなかったので、まったく知りませんでした。
野辺送り中に、たまたま一緒になった中学生の女の子。
「亡くなった兄と関係がある子なのか?」「なぜ野辺送りについてくるのか?」
兄が死んでしまった理由。
兄から聞かされていた『彼女』との話。
今まで自分が知っていた『兄』とは違う顔を見てしまい、兄はそのまま死んでしまった。
…妹としては辛いでしょうね。
『お兄ちゃん』が優しい『お兄ちゃん』のまま思い出にできなかったのはつらいですね。
でも、中学生の女の子のおかげで、一番最後にお兄ちゃんの『彼女』に嫌なことをせずに終われたというのは、よかったのかもしれません。
私も、前の旦那と離婚した後に向こうの母親がやってきて、ちょっとムッとしたことあったから…。
まー、ちょっと毛色が違いますけどね(笑)。
最後は『同じ飯同じ菜を食ふ春日和』
おもしろい話でした。
全部「カギカッコ」付きの会話だけでできている話。
数年ごとに、父・母・娘の3人が、高台にある展望台みたいなところに来て、いろんな話をしています。
始めは小さかった女の子も少しずつ大きくなって、最後は大学生でした。
父と母と娘の関係も、その時々によって変わっていて。
すごく仲がいいときもあれば、ちょっとギスギスしているときもあり、それが会話の端々から伝わってきて、想像するのがおもしろいですね。
まー、ギスギスと言っても、こういう遠出に着いてきてくれるレベルですからねぇ。
ここを訪れるときは、いつも展望台の近くの釜飯屋さんでご飯を食べるようですが、毎日来るところじゃなくて数年に1度しか訪れないスペシャルな場所だからこそ、成り立つ『数年前からのギャップ』みたいなものが浮き上がってきて、すごくおもしろかったです。
一番最後、釜飯屋さんが潰れてしまって、でもお母さんがその釜飯屋さんのレシピをネットで見てお弁当を作ってきた、というところで終わります。
これまでの話の流れだと、意外とダークな感じで終わっちゃったりすることも考えられたんですが、なんだかほっこりする感じで、平和に終わってよかった(笑)。
私はホラーはあまり好きではないんですが、今回は10個目の『薔薇落つる丑三つの刻誰ぞいぬ』が一番好きでした。
ただまぁ、全体的に女性や子どもが嫌な目に遭う話が多くてね…。
まぁ、『模倣犯』もそうでしたしね…。
宮部さんの短編集って意外と読後感が悪いものが多いので(いい意味で)、そんなことを思い出して懐かしくなりました。
最後の感じだと、またこういう形式で小説を出すってことですかね?
それも楽しみにしたいと思います。



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