檀乃歩也さんの『北斎になりすました女 葛飾応為伝』を読みました。
檀さんの本は初めてです。
葛飾北斎の娘、謎多き女性葛飾応為について書かれた本でした。
昨年見た映画『おーい、応為』のおかげで、登場人物や時代背景などのイメージが比較的容易にでき、とてもおもしろく読むことができました。
ただ、「応為は極端なワシ鼻で顎のしゃくれた女性」というのが、映画で主演された長澤まさみさんと合わなくて、とっても混乱します(笑)。
最初にこの本を見たとき「『なりすました』というのは応為に失礼ではないのか…?」と思ったんですよね。
でも、内容を読んでいくにつれて、おそらくですけど「応為自身もそれを望んでいたのかもしれないな」と思うようになりました。
『葛飾北斎』という超ビッグネームの娘として、一番近い弟子として、ずっと北斎と行動をともにし、北斎から学び、北斎を支えていた女性。
もちろん、自らの名前を全面に出したいと思ったこともあるだろうとは思います。
ですが、それよりも「『北斎』と名が入っている方が金になる」というのはなるほどな、と思わされました。
以前息子に買った漫画の葛飾北斎の伝記も読んでいたので、『北斎=貧乏』みたいなイメージは確実にありました。
以前読んだ『たゆたえども沈まず』などでも、「浮世絵は荷物の緩衝材として使われている」と書かれていたので、勝手に「だから当時は『価値が低い』と思われていて、貧乏のままだったのかな」思っていました。
ですが、本書の中で「当時の画材は高いものもあり、どのようなキャンバスにどのような絵の具が合うかなどの研究などをしていた影響もあって、北斎はいつもお金がなかった」というような内容が書かれていたんです。
これは本当に驚くとともに、ものすごく納得しました。
応為の代表作として『吉原格子先之図』が挙げられていました。
この絵は、映画『おーい、応為』でも長澤まさみさんが描いているシーンがありました。
その美しさに、私自身もうっとりしてしまいました。
他にも『夜桜美人図』や、『北斎』の名前が書かれていても応為の作品ではないかと思われているものなども掲載されていました。
正直、浮世絵に描かれている人物ってだいたいおんなじ顔をしているので、誰の作品かなんて私はわからないんですが、応為の作品の特徴として『指先まで丁寧に描かれていること』、『ほつれ髪があること』などが挙げられていて、女性ならではの視点で丁寧な作品だということがわかり、すごいなと思いました。
映画でも、北斎に対して『足の爪先』の描き方がおかしいと指摘するシーンがありました。
…春画のワンシーンでしたけど。
「浮世絵には『影』がない」と書かれていて、私はそれに今まで気づいておらず驚きました。
息子は知っていたみたいで、「ゴッホは浮世絵に影響を受けて、影がない絵を描いていた」と言っていました。
へー。
影がない理由も、当時の日本の住宅事情などによるものだそう。
そんな中で応為は、『光と影』に魅せられていたようです。
先ほど挙げた『吉原格子先之図』も、光と影のコントラストが本当に美しいです。
『光と影』に対する探求が、彼女のライフワークとなっていたんですね。
映画でも、北斎の死後の応為のシーンはほぼなくて、「その後の応為の消息は知られていない」的な『字幕エンド』になってしまっていました。
本書には少しだけ書かれていて、北斎亡き後も『北斎』の名前で作品をほそぼそと発表していたとのこと。
応為が生きた時代、今とは比べ物にならないくらい『女性』の役割がガチガチに決められていて、自分の名前で好きな絵を書くこともままならなかっただろうことが想像できます。
そんな中でも精一杯生きていた応為、彼女がどんな人物だったのか、もっと知りたいなと思いますね。
記録がほとんど残っていないのは、とても残念です。
今回いろいろ見ていて、たまたま知ったんですが、渋谷の太田記念美術館で今年(2026年)の10/6~12/6に葛飾応為の『吉原格子先之図』が4年ぶりに公開されるとのこと。

これは見に行きたいですねー。
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