ファラオの密室

読んだ本

白川尚史さんの『ファラオの密室』を読みました。
白川さんの小説は初めてです。

2024年の『このミステリーがすごい!』大賞の作品です。
タイトルのとおり、『エジプト』を舞台にしたミステリーでした。
エジプトのミステリーというのは今まで読んだことがなかったので、なかなか新鮮な気持ちで読むことができました。

まず、なんとも不思議な世界観でした。
時制が『現在』じゃないから、というのももちろんあるんでしょうけど、『死者が蘇える』という現象を…、もちろん会う人みんなびっくりしてるんですけど、そこまでびっくりしているわけでもない、というか。
「へぇ、そんなこともあるんだねー、それでね…」みたいな感じで、みんな意外と受け入れるんですよね。
それがなんだかすごくおもしろかったです。
あとは、『死者の世界』や『太陽に腕がいっぱい生えている』など、オカルトチックな感じもあるんですが、肝心の『ミステリー部分』はちゃんと謎が解決されていて、『オカルト』でまとめていなかったのでよかったです。

謎としては大きく分けて二つ、でしょうか。
一つは、毎日一番に出発している奴隷のグループが、なぜか毎日ビリでゴールに到達するという謎。
構成員の奴隷の人たちが、たまに別のグループで同じ作業をするとき、いつもと同じぐらいのスピードで出発して普通にそのままゴールできるのに、そのグループになるとなぜかいつも一番ビリになるという。
これはまぁ、なんとなくそうじゃないかな、と思っていたのが当たりました。
だけど、なるほど『この時代』の『この場所』じゃないと使うことができないトリックなんだな、と思っておもしろかったです。

もう一つは、ほぼ密室状態の部屋から人間の遺体がなくなって別の場所で発見された、というトリック。
これは正直わからなかったんですけど…。
謎解きを読んで、「あぁなるほど、『金田一少年の事件簿』の、みんなのトラウマ『雪霊伝説殺人事件』みたいなモンだな」と。
あぁ怖い。
でも、もうすでに亡くなっているから、別にいいのかな…?
いや、そういう問題ではない…?

主人公のセティは、一旦亡くなってミイラとして復活し、「なぜ自分が死んだのか」「なぜ自分の心臓の一部が欠けているのか」の謎を解いていきます。
途中で、「父との関係があんまり良くない」ということがわかってから、なんとなく『違和感』を抱いたまま読み進めました。
後半の父からの言葉で、「なるほど、そういうわけか」と一旦納得はするんですけど…。
「でも、それだったら、なんかもっと喜んで父に尽くしたりするんじゃないのかな…?」という新たな違和感が生まれるんですよね。
それが、一番最後の自身の告白で、「なるほどそういうわけだったのか…!」という驚きに繋がります。
まったく想像していなかったので…。
まぁ確かに『その状態』だったら、生活もいろいろ大変だったでしょうしね…。
身体的な成長と心の成長があべこべになってしまっただろうことは、想像に難くないです。
そういう意味で、いつも『希死念慮』的なものを抱えていたとしても仕方ないかな、と思いました。
まぁ…なんというか、みんな不幸だったな、と。

途中で奴隷の少女・カリが出てきます。
彼女に関する記述は、読んでいるとかなりきついものがありました。
昔見ていた『ロミオの青い空』を思い出しました。
ロミオは『奴隷』ではなかったですけど、生活の状態はそれにかなり近かったですよね…。
あとは、『DQ5』でしょうか。
(私はDQ5を発売されてずいぶん経ってからプレイしたので、『ロミオの青い空』よりも後でした)
同じ人間なのに、こんな風にひどい扱いを受けなければいけないのか…と無力感でいっぱいになってしまいます。
今の日本では一応ないはずですけど…、いろんな境遇でこんな扱いをされている人が、完全にいないわけじゃない…かもしれないですよね…。
カリは最後幸せになれたようです。
それだけでも、よかったなと思いました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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