中山七里さんの『アポロンの嘲笑』を読みました。
中山さんの小説は『ドクター・デスの再臨』以来です。
中山さんの東日本大震災絡みの話としては、映画化もされた『護られなかった者たちへ』がありますね。
映画化のニュースを知る前に読んで、主演が佐藤健さんだと知り、「女装…するのかな」と思った記憶があります。
映画、見に行けなかったんですよねー…。
女装、したのかな…。
今度見てみようと思います。
今回の『アポロンの嘲笑』も、また震災絡みの話でした。
発売は2014年とのことで、『護られなかった者たちへ』の2018年よりも前だったんですね。
舞台は福島。
3.11がついこの間発生してしまった、という状況です。
そんな中で、『殺人事件』の通報があったんですが、震災でてんやわんやしている最中に通報されても、人手も足りないですし、みんな正直「それどころじゃない」という状況ですよね…。
私自身は、阪神淡路大震災当時は仙台に住んでいましたし、東日本大震災は東京にいてほとんど被災していないので(食器が割れたくらいでした)、『現場』がどれぐらい混乱してたかなどはあまりわかっていません。
「会社、何日もお休みになったなー…」くらいでした。
東野圭吾さんの『幻夜』でも、冒頭が阪神淡路の被災地の避難場所での話だったと思うんですけど、女性を狙った事件が描かれていました。
20年くらい前にそれを読んで、とてもショックだった記憶があります。
「こんな非常時にそんなひどいことをするのか」と。
今は…まぁ、「非常時だから、する」という、人間の心理とか生物の生存本能的なものとかも知ったので、まぁあるんだろうな…という感じです。
もちろん許されることではないですし、そんな事件は起きてほしくないですが。
今回は、その『殺人事件』から、なんというか…『国際問題』というか『テロ』というか…。
すごい方向にどんどん進展していきました。
主人公(?)で殺人の容疑者である加瀬くんが、なぜだかわからないけど、今回の震災での一番の『現場』である『福島第一原発』に向かって逃げている、という状況です。
殺人で逃亡するならそんな方向に行く必要はないですし、雰囲気的にも多分「何かを食い止めに行くんだろうな」という感じではありました。
まさか、そこからそんな風に発展していくとは…。
今回、彼を追っていく刑事・仁科さんが、加瀬くんの意を汲んでくれる人で良かったな、というところです。
最後に2人でバイクに乗って現場に向かうときに、すれ違った警察官から敬礼で見送られるという描写がありました。
…一見『美談』な感じがしましたし、私自身もぐっと来たんですが、よくよく考えるとどうなのかな…という感じですね…。
ただ単なる『民間人』に『日本の安全』を託してしまっているわけですし、『見てみぬふり』になちゃったわけじゃないですか。
警察の組織は大きいので、重大なことを迅速に決められないというのは分かりますが、いくら何でもちょっと丸投げしすぎじゃないかな、と思ってしまいました。
でもまぁ、あの大震災の最中、実際にこういうことが起きていたら…まぁこうなってしまいそうだな、という感じではあります。
結果的に加瀬くんは亡くなってしまいました。
でもまぁ、それでよかったのかもしれないですね…。
仁科さんも言っていて、悲しいですけど私もそう思いました。
生きていたらどんな罪に問われるかわからないですし、警察官の足を撃っているわけですしね。
それに、ものすごく被爆してしまっているでしょうし。
髪の毛とかも抜けて、後遺症にものすごく苦しんで、何年も入院したり…という生活になってしまっていたかもしれません。
どちらが良かったかは、本人しかわからないですけど。
周りの人、裕未さんからしてみれば、たとえどんな姿だとしても生きてて欲しかった、と思っているかもしれないですね。
しかし、もちろん創作とはいえ、阪神淡路も東日本も両方被災して、その間もいじめとか虐待とか、人の何倍も大変な人生を送ってきて、最後の最後で宝物を手に入れたのに…それを守るために、自分の命を使い切ってしまったんですね。
すごい人生でした。
どうか、天国では安らかに過ごしてほしいです。
加瀬くんはズバリの『殺人』ではなく、なんなら裕未さんのお兄さん・純一さん自殺っぽい感じですけど…まぁ、『証拠』がないですもんね…。
震災の混乱の中、『通報しない』という手はなかったんですかね…いくらなんでも、それはないか…。
加瀬くんは、結果として国を救った英雄になったわけですが、ごくごく一部の人しか知らない事実となってしまいました。
表向きには『殺人をした上に逃亡した』ということになってしまうのかな。
なんだか、それはちょっとかわいそうだな、と思いました。
まぁ、誰に何を言われるわけじゃないですけどね。
結局のところ、『張本人』は国外逃亡をしてしまったわけですよね。
そこはいいのかな、というのがちょっとモヤっとしてしまいます。
本当であれば、『越境刑事』の冴子さんのように、追いかけていってほしいです。
でも、「それはまた別のお話」になってしまうのかな。
Kindle Unlimited で読みました。
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