さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿

読んだ本

中山七里さんの『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』を読みました。
先日の『おわかれはモーツァルト』と同じ『岬洋介シリーズ』です。

いまいち時系列がわからなかったんですけど、岬洋介シリーズは

  1. さよならドビュッシー(2010年1月8日)
  2. おやすみラフマニノフ(2010年10月12日)
  3. いつまでもショパン(2013年1月10日)
  4. どこかでベートーヴェン(2016年5月25)
  5. もういちどベートーヴェン(2019年3月20日)
  6. 合唱 岬洋介の帰還(2020年4月17日発売)
  7. おわかれはモーツァルト(2021年12月18日)

という順番で発売されています。
(カッコ内は単行本の発売日です。Wikipedia より)
今回の『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』は2011年10月7日発売なので、『おやすみラフマニノフ』と『いつまでもショパン』の間に発売されたものですね。
で、『要介護探偵』というのは玄太郎おじいさんのことなので、『静おばあちゃん』のシリーズを確認すると、

  1. 静おばあちゃんにおまかせ(2012年7月12日) ※玄太郎さんは出ない
  2. 静おばあちゃんと要介護探偵(2018年11月28)
  3. 銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵 2(2020年10月12日)

となっていました。
へー、玄太郎さんをフィーチャーした話としては、この『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』が最初だった、ということですね。
で、物語の時系列としては、多分、

  1. 静おばあちゃんと要介護探偵
  2. 銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵 2
  3. さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿

ということですかねー。
今回の『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』、一番最後の話が例の火事の数時間前っぽい感じだったので…。

タイトル通り、この巻の主人公は『要介護探偵』こと香月玄太郎さんです。
『さよならドビュッシー』のエピソード0という位置づけです。

短編集になっていて、5つの話が入っていました。

最初は『要介護探偵の冒険』。
私としては、『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵 2』以来、久しぶりに玄太郎さんを見ることができて(?)、なんだか嬉しくなってしまいました。

みち子さんの苦労する姿も、本人には申し訳ないですけど、とても微笑ましく見えてしまいます。
これは、ルシアちゃんがもう家にいる時期ですね。
一番最後に『若手のピアニスト弾き』とに書いてあるので、岬先生が司法修習生を辞めて玄太郎さんの所有する物件に住もうとするところのようです。
玄太郎さんと静おばあちゃんは出会う前、ということでしょうか?
今回の事件としては、玄太郎さんがコンクリートを口に含んだ時点で耐震偽装だとピンと来ました。
偽装のときに使うコンクリートは不純物をたくさん入れてゆるくしていることが多いというのを何かで読んだことがあったので、「『しょっぱい』ということは海岸の砂か?」というところまでは行けましたねー。
まぁ、実際にそんなシーンを目の当たりにしたら、みち子さんの立場だったら『異食症』を疑いますよねー。
『死役所』のシ村さんの娘さんも異色症だった、というエピソードを思い出しました。
密室トリックについては、さすが建築屋の発想だな、と。
後から密室を作り上げるというのは、以前読んだ『マレー鉄道の謎』にちょっと近いものがありますね。

でもやっぱりなかなか思いつけないですねー…。

2つ目は『要介護探偵の生還』。
元気だった玄太郎さんが倒れて下半身不随になったときの話でした。
最初の『要介護探偵の冒険』よりも前の話です。
やっぱりリハビリは壮絶で、玄太郎さんのようなかくしゃくとした老人にとってはしんどいことだったろうと想像します。
ただ、みち子さんという素晴らしいパートナーを得て、彼女の機転で模型作りを進めるうちに言葉もちゃんと取り戻して、ついには憎まれ口も堂々と吐けるようになっていました。
こんなに回復が早いことってあるのかな…とは思いますが、そうであって欲しいなとも思います。
しかし、これをただのリハビリ顛末記にしないところが中山七里さんのすごいところですよねー。
『モールス信号』といえば、『金田一少年の事件簿』の『墓場島殺人事件』、それから『殺戮のディープブルー』でしょうか。
でも、今回はまったく思いつかなかったのでびっくりしました。
あと、やっぱり大衆扇動に長けている人というのは、時と場合によってはとっても危険なんだなということが改めてわかりましたね…。
やることなすこと反対してくる人の方が実は味方がだというパターンはたまにありますが、今回はまさにそれだったなぁと思いました。
リハビリ仲間の領家さん孫・翔平くん然り、株主の溝呂木さんしかり。
まぁ、溝呂木さんについては、最後の「良かったな、社長」という言葉が本心なのか皮肉なのか、ちょっと判断がつかないですけど。
本心7、皮肉3くらいの割合かなと。
できれば社長を解任まで持って行きたかったでしょうけど。
その目論見がダメになってちょっとヤケになってるかもしれないですが、それでもやっぱり宿敵の『生還』は嬉しかったでしょうね。
玄太郎さんはいろんな人から憎まれてはいるんでしょうけど、やっぱり同じぐらい味方も多い人なんでしょうね。
『冒険』『生還』と来たら、やっぱり『シャーロック・ホームズ』を意識したタイトルってことでしょうか?

3つ目は『要介護探偵の快走』。
まぁ、殺した・殺されたという話より少し犯罪性は薄いとは思いますけど、やっぱりそうやって偽装するのはダメですよね。
法律違反なわけですし。
にしても、『老人に変装する』といえば、以前読んだ『生首に聞いてみろ』、それから『美濃牛』もそうかな。

あとは、随分昔に読んだ東野圭吾さんの『マスカレード・ホテル』。
あれも『変装』していましたよね。
年寄りに化けるというのは、簡単なものなんでしょうか…?
特殊メイクとか…。
昔たまに見ていた水谷豊さんの『探偵 左文字進』シリーズ、あれいつも「不自然だな…」と思っていたんですよね…。
『金田一少年の事件簿』では『秘宝島殺人事件』では、若い男の子が年上の女性に変装していました。
事件の内容としては、たまに報道でも同じような内容を聞くことがありますね。
まぁ、月に20何万もらえるんだったら、変装することぐらい大したことないなと思ってしまうかもしれないですね。
もちろん犯罪ですけど。
そんなにもらえるんですねー…。
しかし、小学校の運動会の種目でそんなのが出てきたら、確かに外野からとやかく言われそうですね。
よくもまぁ、ゴリ押ししたなぁと。
そして、玄太郎さん、よく勝ったな…、すごいです。
しかも、「毎年やれ」って…。
出場者はどんどん減ってしまうのでは…?
あ、でも新しく追加もされるのか…。

4つ目は『要介護探偵と四つの署名』。
玄太郎さんらしい、素晴らしい采配だなと思いました。
ただ、悲しいかな、彼らが出所してくる頃には、玄太郎さんはもう…と思うと、なんだかすごく悲しくなります。
『四つの署名』とのことですが、内容としては『赤毛連盟』かな、と思いました。
明らかにこの小山内が怪しいなと思いましたが、まぁそんなもんかー、まったく。
しかし、彼の言ってることが正しいとすると、クビになるだけじゃなく、その損失の分まで請求されてしまう、というのは、やっぱり銀行員は大変なんだな、とつくづく思いました。
そういうのをかばってくれるのが会社、いつも多く給料をもらっている上司、なんじゃないんですかね…。
それにしても、玄太郎さんの知識の幅はものすごいですね。
頑固ジジイではありますが、お話をしていたらすごく楽しい人なんだろうな、とも思います。
まぁ、まともにお話ができるようになるには、かなりの年月を必要としそうな感じがしますけど。
この4人がちゃんと『お勤め』を終えて出てきて、その先も悲観せずにがんばれるような世の中になればいいな、とは思いますが…中々難しいですね。
やっぱり『少年院帰り』『累犯者』というのは色眼鏡で見られる大きな要因の1つになってしまいますからね。
最初から道を踏み外さないようにするのがいいんでしょうけど…人生どこにトラップがあるかわからないですからね…。
難しい。

最後は『要介護探偵最後の挨拶』。
ラスト、本当に本当に、もう数時間後の話だったんですね。
最後の最後で岬先生と分かり合うことができて、あとがきにもありましたが「間に合って良かった」という感じでした。
トリックの方は正直まったく想像がつかなかったです。
アナログレコードなんて、子供の頃に父がかけてたのを見たきりまったく触れてこなかったですし、「再生しろ」と言われても多分できないと思います。
それぐらいの存在ですから、『儀式』としての再生のルーチンもまったく知らないですし、そんなところに隠れていたとはまったく想像もしていませんでした。
私も、レコードと CD の音域の違いで、そのカットされる部分に何か細工がしてあるのかな、なんて思いましたが、まぁ現実的にそんなことできるはずがないですよね…。
今回は父親と息子の『葛藤』というか『対立』というか、そういうものがテーマになっていたような気がしました。
今ですと『毒親』という言葉で一蹴されてしまうんでしょうねー。
子供だから自分と同じくらいできるだろう、というのはわかってはいるんですけどついついそう思ってしまいます。
私も自分の息子に対してそういう考え方をしてしまうことがあるので、気をつけなければいけないですね…。
私は元々あまり人に期待するタイプではない…と思っているんですが、それでも「やっぱりちゃんとできるんじゃないか」と思っちゃいます。
この間、YouTube で精神科医の益田先生が「ADHD や発達障害人たちは、他人が当然できることをできないというのを、周りもちゃんと理解していなければいけない」とおっしゃっていました…。
ちょっと話がそれました。
これからお話の中では火事が起きて、ルシアちゃんと遥ちゃんと玄太郎さんが巻き込まれて…という『さよならドビュッシー』の流れになっていくんですが、まさかその直前に岬先生とこんなやり取りがあったなんて…。
もちろん『後付け』ではあるんでしょうが、なんだか感慨深いです。

玄太郎さんは、確かに下半身不随で車椅子がないと動けない人でしたが、それでもこんなに元気で頭もはっきりしていて、まだまだいろんなことができたでしょうに。
本当に惜しい人を亡くしたなと、つくづく思います。

中山七里さんの他の『ご老人』といえば、静おばあちゃんと『秋山善吉工務店』の秋山さんですかね。

以前も書きましたが、この3人で何か話を作って欲しかったな、という思いがあります。
みんな頑固で、でも1本筋が通っていて、素敵な人たちでした。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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