辻村深月さんの『傲慢と善良』を読みました。
いやー、おもしろかった。
表紙が女性のイラストで、紹介文とかに『婚活』とあるので、
女性が現在進行形で何度も婚活で打ちのめされる話だと思っていたんですが、
全然違いました(笑)。
まぁ、ちょっとかすってはいるのかな。
勝手な思い込みはダメですね。『【推しの子】』のときと同じですね。
物語は大きく分けると2部構成かな。
はじめは架(かける)という男性視点。
婚活で知り合った女性と交際して2年。
前の彼女を引きずったりしてなかなか結婚に踏み切れなかったけど、
ある『事件』がきっかけとなって同棲から結婚へ。
順調にいっていたと思っていたある日、婚約者の女性が失踪する。
彼女を探す過程で、自分と知り合う前の彼女を知り、
婚活・結婚・友人などについて深く考えるようになる。
次は、その架の婚約者で失踪してしまった女性、真実(まみ)の視点。
彼女がどうして失踪したのか、
今どこにいて何をしているのかが描かれています。
それに交えて、架の視点でも読んだ物語を真実の視点で語り直しています。
真実視点の開始直後が秀逸だな、と思いました。
架視点の開始直後と『ほぼ』同じなんです。
ただ、行間にいろいろ言葉が追加されているだけで、
ガラッと意味合いが変わる。
読者は架視点の開始直後を先に読んでいるから、
それを拠り所にしてなかなか見破ることができないんですが、
なるほどそういう意味だったのね、と唖然とします。
…別にミステリーじゃないから、
嘘を書かれていたとしてもいいのかもしれないけど、
「さっきああ書いてあったんだから、そうなんじゃないの?」と
私はずっと引きずってしまっていました。
真実みたいな女の子、いるんでしょうね…。
若干いらっとするけど、まぁ仕方ないかな、と思いますね。
『女の子』なら。
でも、彼女はもう30超えていてその状態なので、
ちょっとしんどいですね…。
私も女の子を持つ親として、
真実の母親のようにはならないようにしないとな…と思ってしまいました。
私の母はちょっとだけ真実の母親のような感じなんですが、
私達姉妹はどちらかというと真実の姉の希実タイプだったので、
2人して自分勝手にやらせてもらいましたが。
私は『婚活』はしたことがないんですが、
『就活と似ている』と書かれていて、「なるほどな」と思いました。
たしかにアレはきついですよね…。
しかも、就活だと大体1年くらいで終わりますが(たぶん)、
婚活は自分がやめない限り続いてしまいますよね…。
つらいわ。
架の「またこれを繰り返すのか…」という独り言がずっしりときました。
真実のことははじめはもちろん、中盤くらいまでキライだったんですが、
彼女が脱皮したくていろいろもがいているところを見て
なんだか愛おしく思えるようになっていきました。
すごいものです。
にしても、『東京の女性』って、
架の女友達の美奈子と梓のように描かれますね…。
私は地方大出身なのでとても怖いです(笑)。
本編とは全く関係ないんですが、
今回も Kindle の読み上げを使って耳読していました。
Kindle 読み上げの Mizuki さんは
架(かける)のことを「か」としか読んでくれません。
それを念頭において聞いていれば不都合はないんですが、
「婚活で架みたいな…」という文を
「コンカツデカミタイナ…」と読んでくれるので、
『婚活刑事(デカ)』という新しい職業があるのかと思ってびっくりしました(笑)。
『マスク警察』みたいな。
ラストで架が下した決断が、この先どうなるのかが見ものですね…。
本当に大丈夫なのかな、とちょっと心配になります。
真実が評したように、架は鈍感なんですかね。
いろいろ大変そうですが頑張ってほしいものです…。
最後の解説は朝井リョウさんだったんですが、
物語に出てくる人物が辻本さんの別の作品にも出てくるようなので、
機会があったらそっちも読みたいですね。
というか、辻村深月さんの作品は今回これが初めてだったんです。
樺沢先生が『かがみの孤城』の映画を大絶賛していたので
小説読んでみたいなと思っていたんです。
楽しみがまた増えて嬉しいです。
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