朝井リョウさんの『何者』を読みました。
朝井さんの小説は初めてです。
いやー、これはキツかった…。
以前、『闘う君の唄を』でも思ったんですが、『共感性羞恥』からなのか、もーーーしんどかったです。
あ、もちろん、小説としては素晴らしいと思います。私は主人公を危機的状況にするようなストーリー展開が書けなくて、「シナリオ担当とかダメだな…」と思ったことがあるので、ちゃんと山あり谷ありで主人公を上げたり下げたりしつつ、最後に一皮剥かせた話の流れはすごいなと思いました。
ただ、なんというか、いたたまれなくて…うぅ…。
主人公の拓人は演劇サークルで脚本を書いていた学生でしたが、ずっと一緒に活動していた仲間と方向性の違いで別れてしまっています。現在は就職活動中。
拓人は同じ大学の同級生光太郎とルームシェアをして暮らしています。光太郎はバンド活動をしていましたが、最終ライブを終えて就活に専念することにしました。
そんな光太郎は以前瑞月という同級生と付き合っていました。瑞月は拓人がほのかに思いを寄せる女性でしたが、瑞月がアメリカでインターンシップをしていたときに光太郎とは破局しています。
瑞月は同じインターンシップ仲間の理香と就活を乗り切るべく協力していて、その理香はなんと拓人たちが住んでいる上の階に暮らしていました。
理香は現在彼氏の隆良と同棲中。隆良はバイトでそれなりに充実した仕事ライフを送っているらしく、『就職活動』という皆が同じ服を来て同じことを喋らされているような儀式に疑問を持ち、自分は就活しないと宣言していました。
そんな5人の男女がどんなふうに就活を乗り切るのか。SNS で近況を報告し合ったり、誰かの愚痴を言い合ったりしながら、自分たちの進むべき道を模索していきます。
瑞月と理香の女性2人がそれぞれ辛辣…というか、ものすごく正論なことを長くしゃべるところがあるんです。これ、言われたらしんどいなぁ、っていうようなことです。言ってる方もしんどい…かな。理香の方は半ばヤケクソだったかも知れませんが。ただ、言われた方は本当に幸福だったと思います。こんなこと言ってくれる人、いないです…。相当きついでしょうけどね。でも、だからこそ、本書ラストに載っている面接ではなんか吹っ切れた感じで自分を出せたんだろうし、新たに踏み出す勇気を出せたんでしょうねー。一番最後の行を読んだとき、なんだか成長を感じて泣いてしまいました。
にしても、Twitter (的な SNS)でこんなにいろいろ他人のこと呟いたりするもんなんですかねぇ…。
私が学生だったときは(20年以上前…) Twitter(X)なんてなかったので、個人で掲示板を作って書き込みする程度のことしかできなかったんですが、同じ学科の男子たちがそこで教授の悪口を書いていたらしく、当の先生に見つかったことがありました。教授は「そういうことは鍵のかかる掲示板を作ってからやりなさい」と叱っていましたが、今回の話もまさにそんな感じでしたねー。『想像力』。
まぁ、こんな話は古今東西どこにでもある類のものですね。トイレで手を洗いながら先輩の悪口話してたら個室に先輩がいた、とか。まさに『想像力』。
何年経っても、どんな媒体になったとしても、こういうことってなくならないんでしょうね。
自分も2002年卒の就職氷河期だったので、就活はしんどかったなー。もう二度とやりたくない。でもまぁ、はるか昔の出来事になってみたら、まぁ思い出にはなりましたね。ナムコにもセガにもフロムソフトウェアにもテクモにも行きました。全部落ちたけどねーーー。
そういう自分の昔を思い出して、さらに共感性羞恥もあり、読むのは結構辛かったですが…。おもしろかったです。みんながんばれ。
Kindle Unlimited で読みました。
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