鍵の掛かった男

有栖川有栖さんの『鍵の掛かった男』を読みました。
有栖川さんの小説は初めてです。

…そう、有栖川さんの小説は初めてなんです。お恥ずかしながら。
もちろん名前はずっと存じ上げていたんですが、正直避けていたのはあります。だって、もうすでに膨大な著書があって、今からハマっちゃったら大変だーって思っていたので…。
今回は、なぜかわからないけど『鍵の掛かった男』というタイトルと、鍵を引きずって歩く寂しそうな男性の後ろ姿に惹かれました。
そして初めて有栖川さんの小説を読んだんですが…今まで読んでこなかったことを後悔しましたねー…。なんというか、文体がめちゃくちゃ好みで。なんだか『文章』を読んでいてすごく楽しかった。そして、もちろん内容もとてもおもしろかったです。これは仕方ない、と割り切って、少しずつ読んでいきたいと思います(笑)。

『鍵の掛かった男』というタイトルで、はじめは貴志祐介さんの『鍵のかかった部屋』を思い出しました。いわゆる『防犯探偵・榎本』のシリーズです。嵐の大野くんが主演でドラマ化もされたやつ。密室の話がメインの小説なので、この『鍵の掛かった男』もそうなのかと思いきや。鍵がかかっているのは、『部屋』ではなく『男』でした。まさにタイトル通り。

作家の有栖川は大御所作家である影浦浪子から「相談したい」と伝言をもらい、彼女と面会しました。依頼の内容は、影浦がよく利用する大阪のホテルで知人の男性・梨田稔が亡くなったが、『自殺』として処理されてしまいそうだ、とのこと。影浦には梨田が自殺するような人物には見えなかったため、殺されたはずだと言いはります。驚くべきことに、そのホテルのオーナー夫婦も『殺人説』に賛成しているとのことでした。
有栖川には大学の准教授で犯罪学者の火村英生という友人がいて、彼は警察の依頼を受けて数々の難事件を解決した経歴を持ちます。影浦も、有栖川が火村の友人だということを知って依頼をしていました。大学入試の時期と重なってしまったため、有栖川は火村に先んじてそのホテルに向かい、独自に調査を行います。ホテルは昔ながらの建物で、セキュリティが万全というわけでもなく、監視カメラだらけというわけでもありません。当時捜査を行った警察からも事情を聞き、それでも梨田が殺された可能性を探すべく、生前の梨田がどのような人物だったのかを丁寧に洗い始めます。そこから浮かび上がった、梨田稔の正体とは…?

いやー、すごく鮮やかだなと思いました。本当に、全て書いてある、という感じで。些細なことから人はどんどん転げ落ちていってしまうということ、些細なことが殺意につながってしまうということ、恐ろしかったです。常に心穏やかでいられる人なんで存在しないですよね…。行きていくって難しい。
あと、『産婦人科医』ってキーワードになりますね…。これは、『金田一少年の事件簿』の『黒死蝶殺人事件』でもそうだったので覚えていたはずなのに、今回もなんだかんだでスルーしてしまった…! くやしい。そうなんですよね、すごく新しい技術のように錯覚しがちですけど、1950年ころからすでに始まってるんですよね…。

亡くなった梨田さんの『正体』が少しずつ明らかになっていって、すべてが繋がったときにはものsk国ないてしまいました。彼は幸せだったのかな…そうだったらいいな…。

というわけで、まんまとハマってしまったので、仕方ないです。先ほども書きましたが、これから少しずつ読んでいく予定です。まー、また楽しみが増えたと思って、ゆっくり味わっていこうと思います。

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