漂流

読んだ本

吉村昭さんの『漂流』を読みました。
前回の『羆嵐』に続いて吉村昭さんの作品です。

羆嵐
吉村昭さんの『羆嵐(くまあらし)』を読みました。『三毛別羆事件』という、日本史上最悪の獣害を元に書かれた小説です。 きっかけは『呪術廻戦』です。最近アニメが始まったのがフックになって、既刊のマンガを全部読み直しました。(よくやるんです…)で...

本を開くと、まず吉村さんがどうして『漂流』に惹かれるかが
とうとうと語られます。
その中で、
アナタハンの女王事件(桐野夏生さんの『東京島』の元の事件ですね)や
横井庄一さんなどの残留日本兵などについても触れられています。
前情報無しで読んだので、「そういう話なの?」と思いながら読みました。

内容としては、上記の漂流記よりも前、江戸時代の話です。
主人公は長平という船乗りの男性。
彼は3人の仲間とともに船で米を運び、
その帰りに黒潮にさらわれてしまい、
伊豆の鳥島というところまで流されてしまいます。
その島は無人島、アホウドリしか住んでおらず、湧き水もない過酷な島でした。
住む場所や飲水、食料の確保にも苦戦し、
長平を残して他の3人は次々と亡くなっていきます。
たった一人になってしまった長平は絶望し、自ら命を断つことも考えますが、
船乗りゆえ泳ぎが達者で溺れ死ぬことも叶わず。
「いつか本土に帰れる日も来るかもしれない、それまで生きてみよう」
と考えを改め、念仏を唱えて心を穏やかに保ちながら、
簡単に穫れるアホウドリの肉だけでなく魚や貝を食べ、
体を動かすことを欠かさぬよう気をつけながら生きながらえます。
ある日別の船が流れ着きますが、その船も難破船でした。
人数が増えて彼も寂しさを紛らわすことができ喜んでいましたが、
現状は変わりません。
あとから来た船乗りたちと共同生活をして更に年月を過ごします。
その間にも何人かが亡くなりました。
その後、もう1度船が流れ着きますが、それも難破船。
彼が島に流れ着いてから5年以上の時がたったにも関わらず、
難破船以外の船影を見ることがない。
ここは船の航路からはずれた島なのだと確信し、
自力での脱出を計画します…。

長平さんは結局この伊豆の鳥島で12年もの時間を過ごしました。
小説では吉村さん節で淡々と描かれていますが、
この話はどうやら史実を元にしているようです。
12年って…恐ろしいですね…。
水は湧かないものの、アホウドリが恐ろしいほど来る島だったようなので、
食料に困らなかったのがせめてもの救いでした。
…と言っても、アホウドリは渡り鳥なのでいない時期もあり、
その間にどう暮らすかなんかの工夫も大変でした。
まぁでも、この状況に食糧難までプラスされたら
本当に目も当てられない大惨事になっていたことでしょう…。

アホウドリといえば『11ぴきのねことあほうどり』
くらいの知識しかないのでちょっと調べてみたんですが、
今は絶滅危惧種のようですね。
小説内でも「近づいても逃げず、人を恐れないため穫るのが簡単」
という記述があるんですが、
人が近づいても怖がらないアホな鳥ということでアホウドリだそうで…。
大体人がいない島に生息するから人を恐れないらしいんですが、
ひどい名前ですねぇ。
逃げないせいで乱獲されて絶滅危惧種になってしまったようですが、
小説では次第に人を警戒するようになっていったようです。
親鳥から子鳥へ語り継がれたんでしょうか?

船乗りの男たちは、無人島で火を囲んでよく女房の話をしたそうです。
自分がいなくなって死亡届が出されて、
自分の妻が他の男に娶られるのが悔しい、と。
自分は船乗りである身分を利用して港みなとで女を買っているのにー。
まったくずるいですねー。
まぁ、時代柄仕方ないんでしょうけど。

長平さんの生きる気力がすごいと思いました。
彼はよく念仏を唱えるんですが、
瞑想・マインドフルネス効果がよかったんですかね。
あとはいっしょに漂着した3人のうちの2人が
アホウドリの肉ばっかり食べて横になっていて次第に衰弱していったので、
体を動かすことを心がけていました。
やっぱり人は動かないとだめなんですね。
そういうことに自分で気付けるのがすごいです。

新しい船が流れ着く度、木片や使えそうな道具が流れ着く度
彼らは喜びますが、
それはこの近辺で船が難破して誰かが亡くなったという証。
それを喜ぶ自分に嫌気が差してしまう場面もあります。
つらいですね…。

脱出後無事に故郷の土を踏むことができるんですが、
最後の最後に書かれていた一文で私が救われました。
良かった、本当に。

吉村さんの作品、また機会があったら読みたいです。
この淡々とした、でも鬼気迫るような感じ、クセになります。

Kindle Unlimited で読みました。

さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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