あなたは、誰かの大切な人

読んだ本

原田マハさんの『あなたは、誰かの大切な人』を読みました。
原田さんの小説は『アノニム』以来です。

うわ、1年近くぶりでした。
びっくり。
今回は短編集で、6つの話が入っていました。

1つ目は『最後の伝言 Save the Last Dance for Me』。
こういう男の人、いますよねー…。
私の母方の祖父が比較的近かったかもしれないな、と思いました。
うちの祖父が亡くなったときに、母や祖母が「『腹違いの子供なので、遺産を』と言ってくる人が現れるんじゃないか」とずっとハラハラしていた、と後から聞きました。
私は好々爺である祖父しか知らないんですけどね…。
まぁ、うちの祖父は地元の村長をやっていたらしいので、いわゆる『髪結いの亭主』ではなかったですけど。
じいさんの姿しか知らないから、イケメンだったかどうかもわかんないです。
今回の父親は、まぁさぞかしイケメンだったそうで。
「街を歩けばみんなが振り向く」って、すごいな…。
まぁ、その『才能』を存分に活かして生きてこられたというのは、幸せなんでしょうね。
そして「直前まで逃げ回っていた」というのも、なんとなく想像がつきますね…。
さらに、出棺の直前でこういう状況になるのも、まー正直想像がつきましたけど。
…でも、実際に文章で読んでしまうと、かなりグッときました。
自分の出棺のときの音楽をお願いしていたなんて、なんだかすごいお母さんですね。
それが、自分が生涯かけて愛した男性への最後のメッセージ、かー。
大変なこともすごくたくさんあったんでしょうけど、やっぱり幸せだったんでしょうね。
娘も2人立派に育ったわけですし、たくさんのひとに愛されて、ステキだと思いました。

2つ目は『月夜のアボカド A Gift from Ester’s Kitchen』。
マナミとエスターの物語、というか、エスターの半生の物語でした。
エスターの2番目の夫がすごく辛抱強くて、そしてエスターのことが大好きだったんだろうな、と。
まー、世間一般から考えてしまうと『不倫』の状態というわけですが、本人たち曰く「肩を抱き寄せる以上の関係にはならず」に15年。
本当であればすごいなと思います。
エスターの息子たちも、そんな母の思いを汲んでの『サプライズのプレゼント』。
たった数年しか結婚生活ができなかったですけど、それでも幸せだったんでしょうね。
「この数年のために人生があったんだと思える」というフレーズが、すごく眩しかったです。
マナミの方も、彼氏がずっと不安定な職業だったから結婚に踏み切ることもできず、「別れる」「別れない」の狭間で揺れ動いてたこともあったようです。
でも、彼が作るエスターのレシピのメキシコ料理の吸引力もあり、ずっと別れられずにいたってことですよね。
「胃袋を掴まれる」という状態、ですかね…。
そんな中で、彼氏が今まで勤めていたカフェの新店舗の店長になって、しかも彼のアレンジしたメキシコ料理がとても評判になったというのは、すごいことですね。
今までのもやもやをすべて吹き飛ばすパワーがありました。
…正直、マナミにエスターを紹介してくれた『もう一人の友人』が、ちょっと影が薄いな…とは思ってしまいましたが(笑)、ステキな話でした。

3つ目は『無用の人 Birthday Surprise』。
…すごいタイトルだな、と。
50歳の娘と、数年前に離婚した彼女の両親。
やっぱりこういうとき、男親ってかわいそうだな、と思ってしまいます。
実際、この娘も母親の方には頻繁に会っているみたいですが、父親にはほとんど会っていなかったようでした。
特に、こういう『真面目一辺倒』で『きちんとしている』父親ほど、離婚後はなんだか悲しいことになってしまうように感じます。
完全に偏見ですけど。
本文にも書かれていましたが、「娘はやっぱり母親の言動にかなり影響を受ける」ということで、母親が父親をちょっとないがしろにしている感じ、愚痴を常に言う感じだと、娘もそれを受け継いじゃって父親のことをあまり尊敬できなくなる、というのは…まぁ分かる気がしますねー。
私自身は、自他ともに認めるファザコンなので、正直父親の影響をかなり受けていると思います。
父は、母の悪口をまったく言わなかったんですよね。
私も、「自分の配偶者に対してはそういう風に接するべきなんだな」と自然と学んだというか。
…母は、父の悪口をそれなりに言っていましたけどね。
そして、私と妹が大人になってからは、父も母の愚痴みたいなことをこぼすようになりました(笑)。
なので、今度は却ってどう接すればいいかがわからないっていうのも、ちょっとあるんですよねー。
しかし、この娘の『美術を愛でる心』みたいなものは、実は父親の方からの受け継いだものだった、ということなんでしょうかね。
最後の誕生日プレゼント、とてもステキでした。
ちゃんと『賃貸契約書』まで置いてあって、きちんとしている(笑)。
「ここの季節を、景色を楽しんで」と伝えたかったのかな、と。
しかしなー。
父親がスーパーの仕事を辞めさせられた(?)経緯が、まー正直納得いかないですね。
「主婦の万引きを見逃した」って、本当かなーっていう感じです。
こうやって真面目でコツコツと働いている人が不条理な目に合うのは、ちょっと悲しいです。
ま、その後の本の陳列の仕事が楽しかったみたいなので、だったら良かったのかもしれないなと思えますけど。
一方で、母親の方は韓流アイドルに夢中になっているという感じなので、やっぱり離婚すると女は生き生きとして、男はしょぼくれるっていうのは、まさにそうだなと思ってしまいますね。
どうやらこの話は映画化されるようです。
しかも、原田マハさん自身が監督を務めるらしくって。
そんなに長くない小説でしたが、この尺で1時間半とか繋ぐんだなーと。
まぁなんというか『余白』がある話だと思うので、もうちょっと肉付けして、お父さんお母さんの人生、ひょっとしたら主人公の女性の元恋人みたいな話となんかもいろいろ混ぜてきて…という流れになるのかなーなんて想像します。

4つ目は『緑陰のマナ Manna in the Green Shadow』。
『マナ』といえば『聖剣伝説』じゃないですか(私の中では)。
『聖書の中に書かれている』というのはなんとなく知ってはいたんですが、どんな内容なのかは全然知らなかったので、なるほどこういうものだったのか、と。
お姉さんからの言葉にショックを受けたのはまぁ当然だと思いますし、お姉さんの気持ちもよくわかります。
どっちも相手が羨ましいっていう感じだったのかな? なんて、第三者としては思っちゃいますが、本人たちからしてみれば「勝手に想像すんな」っていう話でしょうね。
「お母さんの梅干しがあとほんの少ししかない」という状況で、それを一緒に分かち合いたいと思える人がいて、幸せなんじゃないかなと思いました。
かなり以前にテレビで見たんですが、亡くなった人が作った料理をずっと冷凍保存していた人がいて、「その味を再現してほしい」みたいな願いを聞き届けて、成分なんかを科学的に分析したりできる場所があるみたいではあるんですよね。
今回のも、それにお願いすれば、お母さんの味に近しいものはできるかもしれないですけどね。
それはそれで無粋かもしれないですね。
それよりも、残り少ない梅干しを自分の大切な人と一緒に分かち合って、その思い出とずっと暮らしていくという方が、今回の場合は合ってるかもしれないなと思いました。

5つ目は『波打ち際のふたり A Day on the Spring Beach』。
40代も過ぎると問題として上がってくるのが、やっぱり親の介護なんですね…。
主人公とその親友は、独身でバリバリ働いています。
でも、それぞれの母親が病気だったりで、ちょっと不安定な感じでした。
どちらの母親も、旦那さん(彼女たちそれぞれの父)はもうすぐ亡くなってしまっているみたいなので、それだとやっぱり不安ですよね…。
私の家ですと、同じように母が不安でも、とりあえず父はまだそれなりに元気なので、母の面倒を見てくれているから、なんとかなっているんだと思いました。
姫路と東京を月に何往復もする、とのことだったので、経済的にもかなり負担が大きいでしょうね…。
結局、主人公は自分の拠点を東京から姫路に移すと決意した、というところで終わってしまったんですが、親友が言う通り「何とかなる」と思いますし、なんとかしていくんだと思います。
「母親と親子でいられる時間には限りがある」というのは、ちょっとずしっときましたね…。
まぁ一方で、それは私と私の子供たちの間でもそうなんだよな、と。
主人公の母親は認知症で要介護3になってしまったんですが、私自身はできる限り認知症にならないように、運動を欠かさずやっていこうと思いました(いつもの結論)。

最後は『皿の上の孤独 Barragan’s Solitude』。
途中で出てきた女性は、『月夜のアボカド A Gift from Ester’s Kitchen』に出てきた人と同じなのかな?
なんか最初に、「夫がいても別の人と恋をしている」みたいなフレーズがあって、そこからあまり脳が受け付けなくなってしまったんですけど(笑)。
結局、青柳くんと一緒にバラガン邸に行かなかったのは、彼のことを本当は好きだったから…とかそういう感じ? なの?
最初に会ったとき「彼はそういう対象には見られない」みたいなことも言っていたと思うんですが…。
それはあくまでファーストインプレッションであって、その後仕事上のパートナーとして一緒に過ごすようになってから考え方が変わった、ということ?
なぜ「これ以上言ってはいけない」と自分を律しなければいけなかったのか、その辺がちょっと分からなかったです…。
やっぱり最初に遮断されちゃったので、うまく飲み込めませんでした。
乳房の片方を切除しなければいけないという苦しみは、私は経験したことはないですが、ものすごくつらいことでしょう。
私はそんなに胸が大きい方ではないけど…いえ、はっきり言ってしまえば貧乳なんですが、「なくなってしまう」というのはまた全然違う話で、それこそすごい喪失感でしょうね…。
いろいろ折り合いをつけて、心安らかに生きていけることを願います。

今回はなんというか、中年女性の日常的な悩み、みたいな感じの短編集だったように感じました。
今の私にちょうどドンピシャな感じです。
今のところ特に悩んでいることはないですが、これからこういう問題がでてくるんだろうな…と想像するのにとても参考になると思いました。
それぞれの人にそれぞれの人生があって、だからこそあくまでも『参考』にしかならないかもしれませんが、自分がいざその場に立つときに選択が広がる感じがします。
それとは別に、それぞれの人生をなぞることができておもしろかったです。
映画、公開されたら見に行きたいなぁ。

Audible で読みました。

[AD]あなたは、誰かの大切な人
さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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