キネマの神様

読んだ本

原田マハさんの『キネマの神様』を読みました。
原田さんの小説は『まぐだら屋のマリア』以来です。

まぐだら屋のマリア
原田マハさんの『まぐだら屋のマリア』を読みました。原田さんの小説は『美しき愚かものたちのタブロー』以来です。 原田さんといえば美術に関する小説、という感じですし、表紙もそれっぽい絵だったので、今回も美術に関する小説なんだと思っていました。私...

先日も書きましたが、原田さんといえば美術に関する小説というイメージなので、まさか映画の小説まで書いてらっしゃるとは。いやー、原田さんの引き出しの多さには毎回驚いてしまいます。

円山歩は都市開発を行う会社で課長をしているキャリアウーマンでした。しかし、社内の風向きが変わって歩に対する風当たりが強くなり、歩は会社を辞めることにしました。ちょうどそのタイミングで歩の父・円山郷直が手術を受けるために入院することとなり、両親がやっていたマンションの管理人職を臨時で歩が引き継ぐことになりました。その時たまたま、父が管理人日誌に書いていた映画の評論文を読んで影響され、真似をして評論文を書いて管理人日誌に挟みました。
父・郷直の手術も無事に終わり、歩も転職活動をしていましたが、なかなかうまく行きません。それに、郷直はギャンブル依存症の気があり、歩と母はそれをなんとか更生させたいと思っていました。ギャンブル依存症の家族会に参加し、「ギャンブルの代替になる行動を」と勧められた歩のもとに、ある日雑誌『映友』の編集から電話がありました。歩が書いた映画の評論文を郷直が雑誌『映友』のホームページに投稿したらしく、読者からの反響が良かったようで、ライターにならないか、とのお誘いでした。
歩はライターの仕事をしながら、映友社の新規ホームページの立ち上げ案件に参加します。そこで、郷直に『キネマの神様』という企画で評論文を書かせることになりました。『ギャンブルの代替』として父に映画を与えることにしたのです。
郷直は PC もあまり使えないような状態から、少しずつ練習して文章を投稿していきます。『キネマの神様』は映画ファンから話題になり、歩の元会社の同僚の手伝いもあって海外版サイトも作られました。しかし、郷直の評論は徐々にたるんできてしまいます。質の低下を懸念していたある日、海外版『キネマの神様』に『ローズ・バッド』というハンドルネームで書き込みがありました。それは、郷直の映画評論のヌルさを批判し鋭い切り口でえぐってくるような内容でしたが、郷直はそれに刺激を受けておもしろい評論を次々とアップし、ローズ・バッドとの掛け合いを楽しむようになり…。

Amazon のレビューには『都合の良い展開』との書き込みもありました。たしかにそうかもしれません。映画会社の公式とはいえそこまで話題になるものかどうか、『巨匠』が海外版とはいえ日本のサイトに書き込みなんかするかどうか。
でも、泣きました。こういう世界があってほしいなぁと思います。『映画』というものでつながった人たちの輪がみんなを優しく照らしているようで、それは本当に映画の神様のようだなと思いました。
新村さんと歩のこのあととか(あるのかわかんないけど)、ばるたんくんのこれからとか、この先についてもどうなるか気になりますね。

しかし、映画の評論って大変そうですよねー。以前読んだ『映画を早送りで観る人たち』の著者の稲田さんも映画の評論の仕事をしていた、と書いてあったような。それで、とにかくたくさんの映画を見る必要があるため倍速で『消費』していた、というのがあの本の始まりだったように覚えています。

映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~
稲田豊史さんの『映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~』を読みました。稲田さんの本は初めてです。 この本が発売になった時にちょっと気になったんですが、タイトルからして「ん? 私にケンカ売ってるのかな? ...

評論を書くにはとりあえず全部見ないといけないでしょうし、好みの映画じゃない場合もあるでしょうし…。大変だな。
『食いしん坊バンザイ』でも、嫌いなものがでても笑顔で食べなきゃいけない、と舞台裏を話していたのを聞いたことがあるので、おんなじような感じですかね…。すぐに顔に出る私には務まらない仕事です。依頼もありませんが。

話がずれました。
とても心が温まる小説でした。
自分の大好きなことにのめり込めるのはとてもうらやましいですね。それが、『ギャンブル』じゃなく『映画』になって本当に良かったです。
最近映画行けてないなー。何か見に行きたくなりますね。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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