汐見夏衛さんの『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』を読みました。
汐見さんの小説は『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』以来です。
この本はその『あの花が咲く丘で～』の続編です。
『あの花が咲く丘で～』のラスト、百合が転校生の涼と偶然出会うシーンの続きから始まります。その前にちょこっとだけ大学生になった涼の現在の心境が語られています。
中学2年生の涼は、父親の仕事の都合で百合の住んでいる街に転校してきました。中学校を見学に行った涼は、偶然現れた百合に心を奪われます。
新学期が始まり、百合と同じクラスになったことを喜んだのもつかの間、百合はどうやらクラスではちょっと浮いた存在なのだということに気づきます。だからといって百合に対して幻滅するということはありませんでした。
社会科見学の事後学習で同じ班になり、夏休みに一緒に図書館に集まって勉強をしたことがきっかけで、百合と涼は一気に距離を縮めました。涼の提案で、彼が以前住んでいた街に海を見に行くデートの約束もし、涼は完全に浮かれきっていました。
しかし当日、百合から聞いた話で、涼は一気に奈落の底に突き落とされてしまいます。百合は「涼は私が以前好きだった人の生まれ変わりだ」と告げてきたのです。百合は以前、戦時中にタイムスリップしたことがあり、その時代に助けてくれた年上の男性・彰に恋をしました。でも彼は特攻隊員で、百合を残して飛び立ってしまいました。涼が百合と初めて合った日に恋に落ちたそのときに、百合は涼を見て彰の生まれ変わりだとわかったというのです。そこで涼は百合に告げてしまいます。「俺には無理だ」と…。
そして2人は疎遠になり、そのまま大学生になりました…。
彰の話は出てきますが、前作よりも『戦争の話』という雰囲気は薄れていて、百合と涼の関係の話になっています。
涼はねー、真面目で誠実ですねー。「彰の生まれ変わり」と告げられたとしても、テキトーに話を合わせて百合とお付き合いする、という選択肢もあっただろうに。好感度は爆上がりですけど、本人としては辛かったでしょうね。
でもまぁ、この手の小説ですので、最後は…ね。うん。良かったですよ。本当に。
この話、実は『ノベマ!』というサイトで公開されていました。
『あの花が咲く丘で～』を読み終えた後にちょっと調べたらこのサイトが見つかって、書籍を読む前にこちらを読んでしまいました。
内容としてはほぼ同じ。ただ、書籍版の最終章『みんな、みんな、幸せに』は WEB 版にはなかったので、書籍版も読んで良かったなと思いました。百合がね、なんかかわいいんですよ。こんなか弱い感じの女の子だったっけ? って。それがまたいい。
あとは、WEB 版を読んでいて、2人が互いに呼び捨てで呼び合おうと約束する前に百合が「涼」と言っているシーンがあったような気がするんですが、書籍版ではそんなことがなかったような気がするので、加筆修正なんかがされているのかもしれません。気のせいかもしれませんが。
あと、つい先日、『あの花が咲く丘で～』のスピンオフ番外編が完結したようです。その名も『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。～Another～』。
『あの花が咲く丘で～』に出てきた、彰・石丸さん・千代ちゃんの物語でした。
…泣かすなぁ…。そんなに長い文章じゃないんですけどね。泣きました。特に、千代ちゃん…。
ふと思ったんですけど、ひょっとして百合は千代ちゃんと再会できたかもしれなかったってこと…? まー、眼の前に年を取っていない昔の親友が現れたら、心穏やかじゃいられないかもしれないなぁ…。
『あの花が咲く丘で～』についてはここで終わりかな。いやー、なかなか浸れました。若さっていいですね! くぅ…。
Kindle Unlimited で読みました。
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