麻野涼さんの『死刑台の微笑』を読みました。
麻野さんの本は初めてです。
『死刑台』で『微笑』というのがインパクトがあって読み始めました。
『微笑』は「びしょう」かな「ほほえみ」かな。『微笑みの爆弾』世代としては気になるところですが、まー多分「びしょう」かな。ちなみに、本文を『微笑』で検索してもルビはふってませんでした。
小宮清子は一人娘を殺害されました。犯人はすでに逮捕されていますが、いずれも少年です。いわゆる『少年法』で守られてしまっています。
清子は夫を亡くし、一人娘の静代と二人で生活してきました。静代は交際していた石川孝太郎とドライブに出かけ、そこで犯人たちに襲撃されてしまいます。孝太郎は静代を守ろうとして殺害され、その後静代も凌辱されて殺害されます。それよりも前に犯人たちは、仲間だった少年を一人とホームレスをしていた男性を一人殺害しています。
犯人の少年のうち主犯格と思われる遠藤は、逮捕される前に逃亡をしていて、その当時の状況が明らかになるにつれて少しずつ事件に対する見方が変わっていきます。
一体何が真実なのか。それを明らかにするために、遺族たちはそれぞれ自分の『できること』で真相に迫っていきます。
この本を読んで真っ先に思い出したのは『名古屋アベック殺人事件』ですね…。1988年の事件なので私はまだ小学生だったんですが、ものすごく怖かったのを覚えています。少し大きくなってから事件の詳細を知って、更に怖くなったのも覚えています。本当に恐ろしい事件でした。
まず、静代の母の清子の執念がすごかったです。今まで裁判なんかには全然縁のない生活をしていたにも関わらず、小六法や辞典などを買い込んで賢明に勉強し、仕事を辞め、それ以降の公判をすべて傍聴してノートを取り…。
物語のはじめの方に出てくる意見陳述の文章はとても理路整然としていて、まさに『法定モノ』という感じでした。まさかちょっと前まで『素人』だった人が書いた文章だとは思っていませんでした。このような文章を書くようになるまでの血のにじむような努力と執念が、物語を通して伝わってきます。
胸糞の悪い事件、遺族の気持ちを踏みにじるような展開。途中で「え、ひょっとして…まさか…」と思ってしまうような証拠が出てきて、この気持ちをどこに持っていけばいいのかわからなくなっていきます。でも、それがすべて『計算された』ものだったことがようやくわかり、最後の最後で少し気が晴れるというか…。計算し過ぎて計算ミスした感じがあって、「やっちまったなー」と。「ざまぁみろ」と。最後の最後、相手の弁護士に対しても溜飲が下がる思いでした。
私にも2人子供がいます。下の子は女の子です。こんな事件に巻き込まれるようなことは想像したくない。恐ろしいです。どうしたら巻き込まれずに暮らしていけるんですかね…。「運が悪かった」じゃ、納得できないな…。
物語の結末としてはスッキリはしたし、とてもおもしろかったものの、やりきれない気持ちは拭えないですね…。
Kindle Unlimited で読みました。
[AD]死刑台の微笑 [AD]Kindle Unlimited
コメント