汐見夏衛さんの『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』を読みました。
汐見さんの小説は初めてです。
この小説は、映画の CM を何度も見たことがあったので知っていました。まいんちゃんこと福原遥ちゃんが主演していました。
タイトルについて、ちょっとした物議を醸したこともありましたね。私もあのアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を見ていて、最終回ではボロ泣きした勢なので、ちょっと「ん?」と思いましたが、まぁそこはね。
CM で映画の内容を何度も見たので、まー多分こういう話なんだろうな、という予想はついていました。この本を Kindle Unlimited で見かけたので借りたんですが、借りたままずっと読めなくて…。多分泣くだろうな、めちゃくちゃ泣くだろうな、と思うとなかなかね…。
まー、そんな事を言っていても仕方ないので、意を決して読みました。
主人公の百合は中学2年生。クラスメイト、担任教師、母親、常に何かに対してイライラしている女の子です。ある日母親と喧嘩をして家を飛び出し、近所の防空壕で一夜を明かしました。
目を覚まして外を見ると、いつもと違う景色が広がっています。わけも分からず道を歩いていると、急に喉の乾きを自覚し、めまいと吐き気に襲われてうずくまってしまいます。そこで声を掛けてくれたのが、彰という青年でした。彼は百合に水を与え、近くの食堂まで連れて行ってくれました。百合はそこに至っても、まだ状況が飲み込めていません。しかし、食堂の女将・ツルと彰の会話、側においてあった新聞で、今が『昭和20年』であることを悟りました。どうやらタイムスリップしてしまったようです。とりあえず元いた防空壕に戻り再び夜を明かしますが、元の世界には戻っていませんでした。
茫然自失のまま食堂に戻ると、ツルは相変わらず優しくしてくれ、百合を食堂で働かせてくれました。百合を助けてくれた青年・彰は食堂の常連で、店の近くの陸軍の飛行場に所属している特攻隊員でした。彰に恋した百合は、彼がこれからたどるであろう運命を思って苦しみます。
まー、案の定ボロ泣きですよ。久しぶりにガン泣きしました。
今の令和の世の中、いやこの小説は2016年みたいだから平成かな。そんな『個』が尊重される世の中で、特攻隊のような生き方が理解できるわけないですよね…。昭和生まれの私だって理解できないです。「そういう世の中だから仕方ない」みたいな諦観、「自分がやらなければ」という自己犠牲、それが普通の時代だったころなんて、想像が難しいです。
彰は早稲田大学の学生だったようです。本文中にも『だって、『国を護るため』と言いながら、結局は国の財産を失っていったということじゃないか』と書かれていますが、まさにその通りですね…。時代がそうだった、と言われればそれまでなんですが、本当に悲しく惜しいことです。
読んでいてふと思い出したんですが、そういえば私は鹿児島県の『知覧特攻平和会館』に行ったことがあるのを唐突に思い出しました。
前の夫の祖母が鹿児島に住んでいたので、結婚するにあたって挨拶に行ったんですよね。…私はバツイチなので。で、特攻平和会館にも行きました。すっかり忘れていて…申し訳ない気持ちになりました。なんせ、お祖母さんにご挨拶に伺ったのに、前夫は朝寝坊して半日くらい放っておかれたりしたので。そもそも前夫のことをあまり思い出したくないので、すっかり忘れていたのです。
ただ、特攻平和会館は行ってよかったなと思います。そんなに頻繁に行きたい、というところではないですが…。なんせ、その時も大泣きしてそのあと落ち着くまで結構大変だったので…。あー、本当にすっかり忘れてたわ…。
『知識があれば見え方も変わる』というのは、本当にそうだなと思います。物語の終盤で、百合の意識が少しずつ変化していったように。彼女がこのあとどんなふうに成長していくか、本当に楽しみですね。
Kindle Unlimited で読みました。
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