アンディ・ウィアーさんの『火星の人(上・下)』を読みました。
アンディ・ウィアーさんの小説は初めてです。
…いやー、これ、今までちょっとでもためらっていた自分が恥ずかしくなるくらいおもしろかったです…!
いつからかわからないんですが、外国の小説に変な忌避感があったんですが、去年読んだ『ザリガニの鳴くところ』以来少しずつ減ってきていました。で、今回でなくなったと思います。いやー、よかったよかった。それどころか、本当におもしろくて、読み始めたら止まらなくて。1日で上下巻読んでしまいそうな勢いでした。実際にはちょっとだけ時間が足りませんでしたけど。
この『火星の人』は、映画『オデッセイ』の原作だそうで。映画公開は2016年か…。映画見に行く余裕とかあんまりなかったときだな…。なので映画も未視聴です。
主人公のワトニーは植物学者でエンジニアの宇宙飛行士。火星での船外活動の最中の事故で不幸にも吹き飛ばされてしまい、そのまま気絶してしまっていました。
さらに不幸だったのは、吹っ飛んでいった彼を見た他のクルーメンバーたちが「ワトニーは死んでしまった」と認識し、様々な協議の結果、彼を残して火星を去ってしまったこと。こうしてワトニーは、地球からはるか彼方の火星で一人ぼっちで取り残されてしまいました。
しかしワトニーは諦めることなく、自分の植物学者・エンジニアとしての知識をフル活用し、なんとか次の火星探査のクルーが火星に来るまでに生き残って帰還することを目指します。
一方地球では、ワトニーの『死亡』はすでに報道されていました。NASA の職員が火星の遠隔映像の不審な点からワトニー生存説を唱えはじめ、それが現実であることが判明します。喜ばしいことである一方、通信手段もなく、次のクルーが火星に到着するまでの食料は当然ない状態。どうやってワトニーを救出するか頭を悩ませます。現在地球への帰路を辿っているワトニーの同僚たちには、安全な生還をしてもらうためにその事実は伏せられることになりました。
ワトニーはなんとか地球と通信をするため、今回よりも以前のミッションで使用された古い通信機器がある場所まで移動してそれをゲット、なんとか持ち帰って修理を行い、通信を回復させました。NASA はそんな彼の動きを映像から察知してあらかじめ備えてあったため、高速ではないものの双方向の通信ができるようになりました。
ワトニーは機転を利かせて火星でじゃがいもを栽培しはじめ、それをなんとか軌道に載せようとしていました。が、ある日資材の耐久が限界を迎えたせいで破損し、ワトニーは無事だったもののじゃがいもを失ってしまいます。このままでは餓死してしまうため、なんとかしてワトニーに食料を届ける必要があります。NASA は急ごしらえでロケットに食料を積んでを打ち上げましたが、失敗に終わってしまいました。
次のロケットができるまでにはワトニーは餓死してしまう…そんなとき、中国の国家航天局(中国の NASA のような機関)が自分たちのロケットを提供すると申し出てくれました。渡りに船でそれを提供してもらうことにしましたが、さてどのような形で使用するかを考えなければいけません。
ワトニーは助かるのか助からないのか。全世界が注目しているミッションが佳境を迎えました。
火星に一人ぼっちって、ものすごい状況で想像がつかないというか…まぁ自分には縁がないまま一生を終えることは確定だと思いますが。仮に、万が一、億が一にでもそんな状況になったら、絶望で自ら命を絶ってしまうような気がします。ワトニーはというと、作業ログの中で悪態はついているものの、全てユーモアがあるというか、決して絶望していないんですよね。それが本当にすごい。どんなことでも前向きに検討し、少しでも希望があれば動き、ユーモアを持って生活している。すごいバイタリティです。だからこそ、宇宙飛行士になれたんだと思いますが…。
この小説のラストが結構あっけないんですけど、私はそれが却って良かったなと思いました。
同じ『宇宙』をテーマにした映画といえば、私が思い浮かべるのは『アルマゲドン』なんですが、あれは生還してから感動的な再会とキスシーン、みんなに迎えられて…テーマソングドーンみたいな演出で。もちろんボロ泣きでした。でも、『火星の人』のあっさりした感じ、というか逆にちょっと避けられている感じ(笑)がすっごくおもしろくてよかったです。「うわー、リアルー」と思いました。実際にその状態のワトニーが来たら、私も避けると思います。
あと、タイトルの『火星の人』が秀逸だなと思いました。
もちろん小説全体を端的に表しているタイトルだなと思いますが、初見では「いやいや、あっさりしすぎだろ」と思っていました。
でも、実際にワトニーがいたとして、数年後に彼を話題にして話すとき、
A「マーク・ワトニーって覚えてる?」
B「誰だっけそれ?」
A「ほら、あの『火星の人』だよ」
って会話、絶対するでしょ…。まさに『火星の人』で認知されるんだろうなーって。おもしろいです。
1つだけ、ちょっとだけ違和感があったのが、国家航天局がロケットを提供すると申し出ることなんですけど…やっぱり申し出るんでしょうかね…? 人一人助けるために…? 電車は埋めるのに…? それとこれとは関係ないですが…。でもまぁ、他に提供できそうな国はないのかー。
とにかく本当におもしろくて、あっという間の時間でした。読んでよかった。
この『火星の人』は年に数回割引されることがあるっぽいので、その時を狙って購入されるといいかも知れません。もちろん、定価で購入したとしても十分満足できると思いますが。
アンディ・ウィアーさんの他の小説も読む予定です!
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