映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~

読んだ本

稲田豊史さんの『映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~』を読みました。
稲田さんの本は初めてです。

この本が発売になった時にちょっと気になったんですが、タイトルからして「ん? 私にケンカ売ってるのかな? ん?」という感じだったので読んでいませんでした。でもずっと気になっていて…。
Amazon のレビューにも書いてありましたが、倍速視聴ユーザーにケンカを売っている内容では全然ありませんでした。それどころか、今の若い人の考え方とかを知ることができてとてもおもしろかったです。

私はかれこれ20年以上『倍速視聴』のユーザーです。
私が『倍速視聴』というものの存在を知ったのは、昔サンヨーから出ていたビデオデッキの CM ででした。所ジョージさんが CM していて、調べたら1993年頃だったようです。確かにそのくらいの時期だったなーと思います。
昔は、早送りすると音声は無音になるか妙に高い音程になるかのどちらかでしたが、このビデオデッキは早送りでも音程が高くならずに聞き取れる、というものでした。「すごいなー」と感心したものです。
大学を卒業して一人暮らしして、数年経った頃にハードディスクレコーダーを買いました。そのころの私は SONY 信者だったので(今も結構そうですが)、SONY のものを買いました。そこに1.4倍速でそのままの音程で再生する機能がついていて、それ以降はもっぱら『倍速視聴派』になってしまいました。
新卒で入った会社の先輩に、「アニメはオープニングとエンディングを飛ばして1.4倍速で再生すると、だいたい15分くらいで1話で見られるんですよ!」って喜んで話したのを覚えています。呆れられてたんだろうな…。

本の内容で印象に残っているのが『若者はオタクに憧れている』『個性がないと生き抜けない』ということ。
私の世代から言わせれば「ホントか~!?」と思ってしまいますが。まー、乃木坂46の子たちがでていた『乃木坂って、どこ?』という番組を初回からずっと見ていたんですが、生駒ちゃんが「NARUTO が大好きで!」とか言っていたのを見て「アイドルなのにそんなこと言ってしまって大丈夫なの!?」とヒヤヒヤしたものでした。今はそういうのも普通に受け入れられる時代なんだなー、としみじみします。まー、番組自体は結構前のものですけど。
私は小学生の頃からゲームオタクで、よく「女のくせにゲームやってる」と言われたものです。自分自身勝ち気な性格だったので気にしていませんでしたし、転校を繰り返したことによって培われた(?)コミュ力のお陰でいじめられることはありませんでした。あと、ガチ目体育会系のオタクだったため、同じクラスタの人がほとんどいなくてほぼスタンドアロン型のオタクだったのと、基本的にゲーマーってあんまり情報交換しないんですよね。ネタバレになってしまうので。もちろんオタ友はそれなりにいましたが、そんなに目立った活動をしているわけではありませんでした。教室の隅でこそっと話す。PS 版の FF7 を発売当日に買って、教室でみんなで説明書を読む。それくらいでした。
だから、オタク=個性的で『憧れ』、というのがおもしろいなーと思って読みました。

更に印象深かったのは、「だからといって、今からのめり込んでも先人がいるためにオタクを名乗れないので、深堀りはしない」ということ。これもおもしろいですね…。私はすぐ『同じ作者の別のシリーズ』とか『過去作』とかに手を広げるタイプなので、「気にしないでやっちゃえばいいのに」と思ってしまいます。スタンドアロン型だからこその思考回路なんでしょうか。
最近思ったのは、家の息子も深掘るタイプなんですよね。ピクミン3でピクミンにハマって、夫の実家から Wii を持ってきて自分でテレビに繋いでプレイしていました。オタクの子供はオタクになるんですかね…やっぱり。

あとは『推し』という言葉のうまい使われ方。『オタク』を名乗るには知識や経験が少ないけど、『推し』であればもっと気軽に表明できる、という感覚がおもしろいです。なるほど、たしかに『推し』って便利な言葉ですね。日本語っておもしろいなーと思いました。

『倍速視聴派』でも、「流行についていくために数をこなさなければいけないから」という人たちは、倍速視聴と10秒飛ばしを併用するそうです。これは本当に驚きました。10秒飛ばしなんかしたら意味わかんなくなっちゃわないのかなって。でも、なっても良いそうなんです。これはおもしろい、そしてあまり理解できない感覚でした。私は確かに倍速視聴しますが、倍速視聴しながらでもしっかりと泣きますからね!
本の中にもあったんですが、私は「時間がないから倍速視聴している派」みたいで、今の若い人たちとはどうやら違うらしいです。…若ぶれるかと思ったのに残念だわ。

とにかくたくさんの『コンテンツ』が溢れている世の中で、流行っているものについていかなければいけないという生き方で、若い子たちは大変だな…と思いました。精神科医の益田先生もよくおっしゃっていますが、10代は人の目が気になる脳なので、どうしても左右されてしまうみたいなんですね。私も10代の頃があったはずなんですが、そういう面ではあまり気にせずにオタクできてて幸せだったんだなーと思います。
あと、息子にはこのまま彼の道を進んでいってもらいたいです。好きなだけ深堀りしていってほしいですわ…。

世代が違うと価値観も違いますね。改めて感じました。いろいろ考えられて、いろいろ知れて、とてもおもしろかったです。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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