葉真中顕さんの『Blue』を読みました。
葉真中さんの小説は『絶叫』以来です。

図らずも、今回の『Blue』にも刑事・奥貫綾乃が登場していました。
前回の『絶叫』では鈴木陽子に完敗してしまいました。何かと疑念は持ちつつも、結局陽子を捕まえることはできなかったわけなので…。悔しいとは思うものの、なんというか清々しさもありました。
今回の『Blue』も『絶叫』と同様、一人の人物の人生をずっと追いかけていく物語です。
『Blue』の主人公は『青』と言う名で『ブルー』と呼ばれている男性です。平成の始まった日に生まれ、平成の終わった日に死んだ男。この話は、彼の30年余りの悲しい人生の物語でした。
「世間体が悪い」と存在を隠された女性から生まれ、出生届を出されなかったため無戸籍児として育ち、母の家族からも疎まれてしまう。家庭環境が悪すぎて、「かわいそう」だけでは済まされないですね…。まともな教育も受けられず、案の定まともな生活もできず、日の当たらない場所を歩いていくような人生を送らざるを得ません。
そんな中でも、家族・親戚以外の人間関係は比較的良好といえたのが、少しは救いだったんでしょうか…。いろんな偶然と縁が、彼を優しい人間として育てたんだと思います。ただ、それでも幾度も犯罪に手を染めなければいけなかったんですけどね…。
刑事・奥貫綾乃は平成元年からブルーを追いかけていた…わけではもちろんなくて、第2部である平成31年4月中旬から参加します。平成終了までカウントダウンが入っているような時期です。
彼を追い詰めて、あと一歩で手の届くところまで行けたにも関わらず、最後の最後で『逃がして』しまった…。綾乃さんは捕まえて、ちゃんと罪を償って、今度こそはきちんとした一人の人間として行きてほしかったんだと思いますが、それも叶わなくなってしまいました。
以前読んだ、『青の炎』のラストを思い出しました。ブルーが望んだ結末ではないと思うので、ちょっと違いますが。
綾乃さんの中の罪の意識がブルーに投影されていて、それがつらそうでした。エピローグ前の綾乃さんのエピソードで、少しでも癒やされていることを願います…。
『技能実習生』の話はたまにニュースとかで見ていましたが、日本にいる私が見るのは『技能実習生に迷惑をかけられた日本側の話』なんですよね…。もちろんすごく、すごく嫌な気持ちだし、こんなことあってほしくないとは思いますが…きっとあるんでしょうね…。
平成30年間のダイジェストのようなところもおもしろかったです。「あー、これってこの時代だったのかー」というエピソードが、ブルーたちの物語と混ざり合って描かれていました。それが、この物語がリアルにあったんじゃないか…という錯覚を覚えさせます。本当にあったら大事件でしょうけど、報道も難しいかもしれませんね。
ずっしりと重い話でした。でも、おもしろかったです。
Kindle Unlimited で読みました。
[AD]Blue [AD]Kindle Unlimited
コメント