町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』を読みました。
町田さんの小説は初めてです。
いやー、めちゃくちゃおもしろかったです。
本当に、読んでよかった。
めちゃくちゃ泣きました。
映画化されたのもあまり知らなくて、どういう話なのかもまったく知らなかったんです。
タイトル的に「海洋学か何かを盛り込んだ作品なのかな?」なんて思っていました。
以前読んだ『大地の五億年』みたいな。

結果としては、まったく違いました(笑)。
「そういえば、映画館にポスターが貼ってあったな…ってことは映画化されているのか」と思い、キャストを知りたくてうっかり Wikipedia 見てしまって、アンさんがトランスジェンダーだっていうことを知ってしまいました…。
うーん、やっぱり物語の中で知りたかったですね…、自分が悪いんですけど。
でもそれを知って、アンさんが大きな人に対して強くいけなかった理由っがわかり、同時にアンさんがどれぐらい傷ついて辛かったのが分かってしまって、本当に苦しかったです。
あとは、登場してからずっと、主税のことが好きになれなくて。
キナコはどうしてそっちに行っちゃうのかな、と歯がゆい思いをしていました。
やっぱり強くガッとこられると惹かれてしまうタイプなのかなと思います。
ただ彼女は…なんというか『何か』を持っていますね…。
『そういう魅力』を持っている人、たまにいますね。
いいとか悪いとかじゃなく、本人の想いとは関係なしに、そういう魅力を持ってしまっている人って、たまにいます…。
本人が望んでいるならまだしも、望まないんだとしたら…不幸なのかもしれませんね…。
にしても『愛』という漢字一字で『いとし』ってすごい名前ですね…。
男の子に付けるのか…と…、考えが古いんでしょうけど。
『この音止まれ!』の主人公も『愛』って書いて『ちか』っていう名前ですね。
なんか皮肉なもんだなーって思ってしまいました。
親友の美晴が、人間的に本当に素晴らしい子だなと思いました。
こんな友達がいて羨ましいと、結構本気で思います。
『魂の番(つがい)』というフレーズが何度も出てきましたが、美晴こそがキナコの『魂の番』なんじゃないか、とちょっと思いますけどね。
こんなにおせっかいで、自分のことを思ってくれる友達なんて、そうそうお目にかかれないですよ。
あとまぁ、なんというか…下世話な私としては…。
『52』くんは一応男の子なわけですし、この先キナコとどうにかなっちゃったりとかするのかな、って。
もちろん、性別を超えた友情みたいな感じかもしれませんし、それが愛情に変わったとしても全然問題ないと思いますが。
もし村中と恋人関係になった場合、ちゃんと『52』くんを引き取ることができるのかなー…とか、いろいろ考えてしまいます。
まあその辺は小説なわけですし、小説が終わったあとのことは好き勝手に空想するのがいいのかなーとも思ったりしますが。
まー、急に「52」って呼び始めたときは、美晴が言うよりも前に「囚人かよ」と思ってしまいましたね…。
といっても、最近は囚人番号で呼んだりしないらしいですけど。
あらためて、本当におもしろかったです。
本当に本当に、読んでよかった。
素晴らしい本だなと思いました。
解説で、コロナ禍で発売されて、始めはちょっと苦戦したものの、やっぱり「今こそ売りたい」みたいな書店員さんたちの強い思いがあり、ベストセラーになれた、と。
そして、『本屋大賞』という流れだった、と書かれていました。
この小説は売れるだろうし、売って欲しいし、売れるべきなんだなと思います。
そして、結果として売れて本当によかったです。
単行本の特典なのか、最後の最後に村中の話がちょっとだけついていました。
彼の、なんか不器用だけど温かいところ、優しいところが伝わってきて、ちょっとほんわかした気持ちで終われました。
この『締め』とかも全部まとめて、おもしろかったです。
何度も書きますが、本当に読んでよかったです。
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