横山秀夫さんの『顔 FACE』を読みました。
横山さんの小説は『動機』以来です。

こちらも再読です。
購入したのが2021年なので、5年ぶりでした。
やはり、内容は意外と覚えていました。
やっぱり横山秀夫さんはすごい作家さんですね。
以前ドラマ化されたことがある作品です。
主人公の瑞穂を仲間由紀恵ちゃんがやっていました。
2003年のドラマなので、20年以上前ですね…。
ただ、ちゃんと見た記憶がないので、他のキャストについてはあまりわかっていません。
とりあえず、瑞穂は仲間由紀恵ちゃんで想像しながら読んでいました。
主人公の平野瑞穂は『婦人』警官・「ふけいさん」です。
小学校の頃に学校に来て交通ルールを教えてくれた婦人警官に憧れを抱き、自分も警察官になりました。
『似顔絵捜査官』として奉職していましたが、似顔絵の改ざん騒動に巻き込まれて遁走してしまったため、現在は『似顔絵捜査官』ではなく広報として働いてる状態です。
『完全男性社会』である警察組織の中で女性が働くということ。
その大変さ・つらさがすごく伝わってくる小説だなと思っています。
プロローグでは、小学校の頃に埋めたタイムカプセルの話題が出てきます。
瑞穂がどれだけ警察の仕事に憧れを抱いていたかがわかります。
そして、先を読み進めるごとに、瑞穂の気持ちが少しずつ摩耗して失望が色濃くなってしまうのが悲しいですね…。
連作短編集となっていて、全部で5つの話が入っていました。
最初は『魔女狩り』。
複雑な気持ちを抱えながら広報で働く瑞穂が描かれています。
広報の仕事も大事だとはわかっているんですけど、本人の希望にはそぐわないわけで、少しずつやる気を失っている感じです。
記者たちとの駆け引きで、自分の自分らしさ、警察官への想いなどが毎日薄くなっていってしまっています。
この話での『事件』は、いわば内輪もめみたいなものですから、警察の現場の仕事のいざこざではないです。
でも、この風間という記者。
本当に卑怯な男だなと思いました。
他社とはいえ、本人の同意があるとはいえ、一人の女性の人生を踏みにじっていいわけじゃないと思うんですよね…。
彼女の心の柔らかい部分に泥を塗って去っていきました。
結局本人には何の沙汰もなし、ですかね。
警察沙汰ではないですが…モヤッとしてしまいます。
2つ目は『決別の春』。
広報の次に配属になったのは電話相談室。
現場を渇望していた瑞穂にとっては、この異動がいいものなのかどうなのかはわかりません。
でも。
あまり言いたくはないですけど、体力や筋力などの『女性であるがゆえのハンデ』がありますから、女性にとってはいい配属なんじゃないかな、と思いました。
以前読んだ『お電話かわりました名探偵です』のシリーズのような『安楽椅子探偵』的な動きが、聡明な瑞穂には合っているなと思いました。

そして、相変わらず『事件』がうまいですよねー。
放火事件を通じて、過去の事件の真相を暴き出しました。
『片側』からしか見ていないと気付けない真相で、それを知ったときに事件の様相が一転しました。
瑞穂でないと解決できない事件だったかもしれません。
この先ずっとそれを抱えて生きていくことを考えたら、ここで瑞穂と出会えて本当に良かったんじゃないでしょうか。
3つ目は『疑惑のデッサン』。
これもまた辛い話です。
そもそも、瑞穂が『似顔絵捜査官』でなくなってしまったきっかけになった事件。
それと同じことがまた繰り返されようとしていました。
現在似顔絵捜査官をしている後輩に対しては、妬む気持ちもあり守ってあげたいという気持ちもある。
これは、本当に偽りのない気持ちなんだと思いました。
瑞穂はとても優しい子ですからね…。
でも、その後輩は、瑞穂とは違って『大丈夫そう』な感じで…。
それとはまた別に、瑞穂が心の拠り所にしていた絵画がありました。
それが人手に渡ってしまうことになり、しかもそれを購入したのはその絵画に描かれていた女性と瓜二つの人。
その女性と話す機会を得て、瑞穂はまた新しい視点を得ることができたようです。
世の中には、男女を問わず、人を傷つけても平気な人間がいます。
傷つけられたとき「自分が悪かったんだ」と考えてしまう人もいます。
本当に難しい話だなと思いました。
4つ目は『共犯者』。
『訓練』という、どこを取っても悪くなさそうなことでも、こんな風に事件が起きる可能性があるんですね。
結局、これはどうすればよかったんでしょうか。
訓練自体はやるべきですよね。
真剣にやるためにも、訓練だと知らせないという方法は間違っていないと思います。
でも、それでこんなことに発展してしまうんですね。
その彼女が傷ついたとき、誰かが心のケアをしてあげられればよかったんですよね。
辞めてしまったら、職場の関係ではそれを担える人がいなくなってしまいます。
だから、ここで警察や元の職場を責めるのはお門違いなんじゃないかな…と思ってしまうんですけど。
「家族がケアしてあげて」と、当然ながら言われたでしょうしね。
でも、今回の本人も、これが八つ当たりだってきっとわかっていたと思います。
今回の瑞穂は、労力をかなり使い、遠回りではありましたが、すごい執念で突き止めていました。
瑞穂は、本当にいい『ふけいさん』だと思いました。
最後は『心の銃口』。
…こういう人がいるせいで、他のたくさんの真面目にがんばっている人たちが悲しい思いをしてしまうんですよね。
私自身も警察好きではありますが、こんな風に警察そのものに迷惑をかけるような真似は、したいとは思わないんですけどね…。
というか、ここまで警察好きなのであれば、がんばって警察官になればよかったのでは…?
でも、以前読んだ『教場』シリーズを思えば、まーこういう輩は教場には耐えられないか、とも思います。

しかし、体力的にも筋力的にも、やっぱり女性に男性と同じ現場を求められるのはしんどいなと思いました。
銃の腕がすごかったとしても、やっぱり結局はこうやってやられてしまっているわけですもんね。
瑞穂も先に行けなかったことで『犯行』を完遂させてしまったわけですし。
20年以上前に読んだ小説(確か、乃南アサさんの『凍える牙』だったと思います)に「女性は尿管が短いから張り込みに向かない」みたいなことが書いてあったような気がします。
女性の警察官は絶対に必要だと思いますし、同じ女性として「活躍してほしい」とも思うんです。
けど、『適材適所』としてメインの仕事をやらせないと『男女平等』ではなくなるし、かといってまったく同じ仕事は厳しいし。
どの世界・業界でもそうなんでしょうけど、本当に難しい話だと思いました。
でも、こうやってがんばってくれている警察官のみなさんががいるから、毎日平和に暮らせるんだな、とは思います。
この『顔 FACE』って、「かお・フェイス」って読むんでしょうか?
ドラマのときは単に『顔』というタイトルだったようで、最初はそちらで覚えていたんです。
なので、後ろに『FACE』と付いていてちょっとびっくりしました。
この話、シリーズ化されているわけじゃないんですよね。
続き読みたいなーっていつも思うんですけど、もう無理なのかなー。
この後瑞穂がどうなったのか、今も元気に「ふけいさん」として働いているのか、ぜひとも知りたいんですけど、どうでしょうか…?


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