殊能将之さんの『鏡の中は日曜日』を読みました。
殊能さんの小説は『黒い仏』以来です。

今回も、前回同様『石動戯作シリーズ』です。
これが3作目でした。
前回の『黒い仏』が、正直私には合わなかったので、「今回も『黒い仏』みたいな感じだったら困っちゃうなー…」と思いながら読んだんですが…杞憂でした。
おもしろかった!
そして、『普通の話』で安心しました(笑)。
いや、まぁ、何が『普通』なのかよくわからないですけど。
今回は中編が2つ入っていました。
どちらもおもしろく、少しつながっているところも良かったです。
1つ目は表題作『鏡の中は日曜日』。
なんか、石動さんが殺されただの殺されないだので事件になっていました。
まー、メタ発言っぽくて恐縮なんですが、『キマイラの新しい城』で石動さんが生きているのを知っているので、「殺されたってことはないよな」ってとりあえずは落ち着いて読んでいました。

もちろん、石動さんは殺されてなかったです(ネタバレ)。
物語の構成がとてもおもしろかったです。
14年ぐらい前に起きて、この物語の中でノベライズもされた『ある事件』がありました。
その小説で描かれた『事件の真相』が本当は違うんじゃないかと疑いを持った人が、石動さんのところに事件の再捜査を依頼して来るところから始まります。
現在と過去の2つの事件が同時並行に動いていく感じがよかったのに加えて、同じようなアルツハイマーの患者を家族に持っている家庭が2つ出てくるもんだから、どっちがどっちなのかがわからなくなります。
もちろんわざと誤認させるように書いたんでしょうけど、それがまた複雑な感じがして、真相にたどり着いたときにはぱっと霧が晴れるような思いでした。
さらに、そのノベライズで描かれた名探偵『水木優臣』という人物がなかなかおもしろい人だったんですが、実は…。
わざと誤認させるような書き方、ノベライズした時にわざと『逆』に書き換えたために、そういう混乱が起きていて、何が何だかという感じでした。
ノベライズの方で出てきた『部屋割り』のこと、私があまり深く考えなかったのが悔やまれますねー。
なぜそういう部屋割りになったのかをもうちょっと考えていれば、もう少し早くに気づけたかなー…って。
ちょっと悔しかったです。
もう1つは『樒/榁』。
『鏡の中は日曜日』を受けて、同じ『水木優臣』が登場する話でした。
「シュンちゃん」と呼ばれているのが石動さんで、ここでまた『春泥』という俳号が出てくるのがなんだかおもしろかったですね。
「美濃牛だー」って。
サインを求めたくらい憧れていた『水木探偵』と、実はニアミスしてたっていうのがなかなかよかったです。
今回も『鏡の中は日曜日』のように、過去と現在がオーバーラップしながら進んでいました。
前回と同じ『密室トリック』が、今回でもまた同じように使われそうになっていました。
読んでいて『探偵学園 Q』の『サイキック・マーダー』の話を思い出しました。
まー、そこまで似てないか。
『理由』がちょっと不純な感じっていうのが、なんか失敗した子供が叱られるみたいな感じでしたね…。
まぁ、石動さんにとってはちょっと不幸な出来事でしたけどね。
村おこしイベントの、ちょっとした『裏』みたいなのが垣間見えたのもよかったです。
水木さんと石動さんの共演というか『絡み』というかを、もうちょっと見ていたかったなと思いました。
この話の後が『キマイラの新しい城』で、もう『石動戯作シリーズ』はこれで終わってしまったみたいです。
『黒い仏』や『キマイラの新しい城』のようなフィクション色の濃い話もあり、『美濃牛』のような本格ミステリもあり、いろいろ混在していておもしろいシリーズだったんですが…残念です。
殊能さんがご存命だったら、あとはどんな話になっていたんでしょうね…。
Kindle Unlimited で読みました。
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