銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵 2

読んだ本

中山七里さんの『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵 2』を読みました。
先日の『静おばあちゃんと要介護探偵』の続刊です。

静おばあちゃんと要介護探偵
中山七里さんの『静おばあちゃんと要介護探偵』を読みました。中山さんの小説は『こちら空港警察』以来です。 『静おばあちゃん』シリーズの第2作です。第1作の『静おばあちゃんにおまかせ』は2023年の年始に読んでいたので、今回はこちらの2作目から...

今回も連作短編集。
各章のタイトルをアガサ・クリスティの小説から取っているのも、前回同様です。

そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を読みました。…カラマゾフの兄弟のときも思ったんですけど、もはや教科書に載るレベルの故人である偉人なんですが、アガサ・クリスティー『さん』とすべきなのか…。 Wikipedia では『クリステ...

いつか読んでみたいと想いますが…。
そこまで手が回るか心配です。
いやー、読みたいものがいっぱいあるのは嬉しいですけどね。

最初は『もの言えぬ証人』。
数多の病院がある東京で、なぜまた玄太郎に会ってしまうのか…?
そうしないと話が進まないから仕方ないですけど。
今回は、小工場の事業主で昔気質の老人が点滴のミスにより死亡してしまったという話でした。
容疑がたまたま最近医療ミスを起こしたばかりの医師に向かってしまったことが災いしてしまいます。
結果としては、身内の勝手な判断による『安楽死』だったということで、人騒がせといえばそうなんですが…。
その気持ち、わからないでもないといいますか。
でも、何にせよ、託された孫がかわいそうだなとは思いました。
この孫はどれぐらいの罪に問われるものなんでしょうか…?
まだ就職したばっかりだから二十歳ぐらいだと思うんですが、いくらおじいちゃん大好きっ子だったとはいえ、ねぇ…。
一番やりたくなかったことだったでしょうに。
なんかいい弁護士でもついてくれるといいですね。
御子柴さんならばうまくやってくれそうですが…お金が掛かりそうですし。
話の中で「自分の死因は何だと思うか?」という話題が出たとき、玄太郎がいくつかあげた中に「火事」というのがサラッと入っていました。
前日譚だからわかっちゃっているんでね…、切なかったです。

次は『像は忘れない』。
これは、『象は忘れない』のもじりのようです。
『構造計算書偽装事件』って確かにあったなぁ…と思い出しました。
しかも現実では、建築士の方が髪型を気にするタイプの人だったにも関わらず、こちらでは逆に建築会社社長の方がそうなっていたのがちょっとおもしろかったというか。
笑っちゃいけませんが。
ただまぁ、妹さんに続いて建築士である兄の方もこういう形で亡くなってしまって、あんまり寝覚めのいい話ではないですね…。
どこの業界にもこういう嫌な噂っていうのはあるものなんだなと。
玄太郎おじいさんの容態があまり良くないようなんですが、それでもまだかくしゃくとしていて、やっぱりこういうところは年齢を重ねた人らしいなと思いました。
まぁ、人によるとは思いますが。
にしても、みち子さんも静おばあちゃんに頼んじゃうんですね?
だって、玄太郎おじいさんよりもより静おばあちゃんの方が年上なのに…。
まさに、表紙の絵そのままですね。
しかも健康診断では、静おばあちゃんは全然悪いとこなかったみたいで…。
それもすごい、私もそうありたいものです。

3つ目は『鉄の柩』。
これは、『杉の柩』のもじりでいいのかな?
ハイブリッド車に乗った老人が、園児を避けるためにコンビニに突っ込んでしまったという話でした。
結果的には別のところに突っ込もうと思っていたのに、目前に園児が出てきてしまったからハンドル操作を間違えて、コンビニに突っ込んだようです。
運転していた男性は亡くなっていて、警察官として副所長まで勤め上げた人物だったとのこと。
でも、不肖の息子が犯した罪を悔いて、いろいろ償いをしていたようです。
ビルに突っ込もうとしていた理由はそこにあったんですが、そうしなきゃいけなかったんですかね…。
息子が出所してきたときに再犯しないようにある程度軌道に乗るまで見張ってるとか、そっちの方がよっぽど世間のためになったのでは、と思ってしまいます。
今は無理でも、いつか『悪』はお縄になったかもしれないのですから。
まぁ、それまでは新たな被害者が生まれてしまう可能性もあるので、難しいところではありますけど。
それよりは、自分の息子をなんとかした方がいいんじゃないかなと思ってしまいました。
何と言うか、頼りないというか、変な息子ですね…。
警察官や教師の子供はグレやすいというのはよく聞きますが、その典型と言うか…残念な感じです。
「貧しくても犯罪を起こさない人はいる」というちょっと前にも出た理屈が、ここにもかかってくるような気がします。
『柩』と『棺』という漢字の違いを調べたら、『柩』は遺体が入っている状態、『棺』は遺体が入っていない状態とのことでした。
知らなかったので驚きました。
ドラクエで「棺桶引きずってる」というのは、正確ではないということなんでしょうね。
乗っていた車がハイブリッド車だったので、また運転ミスをメーカーに押し付けるとか、そっち系の話なのかなと思って一瞬身構えてしまいました。
まぁ、そうじゃなくて良かったです。
『池袋暴走事故』は2019年、この本の単行本が出たのは2020年。
どちらが先だったかは厳密にはわからないですけど。

4つ目は『葬儀を終えて』。
岬洋介さんがゲスト出演していました。

さよならドビュッシー
中山七里さんの『さよならドビュッシー』を読みました。中山さんの小説は『ラスプーチンの庭』以来です。 ようやく読めた中山さんのデビュー作。音楽関係の仕事してたの? というくらい、演奏シーンとかは迫力がありました。音の表現もすごく染み込んでくる...

この後で、まさか玄太郎の孫であるルシアのピアノの先生になるとは、という感じですが…まあ小説だと言われればそこまでですけど、不思議な縁だなと思いました。
静さんの元同僚の判事が亡くなり、その死因に疑問が残るものの、亡くなった後しばらくたってからの発見だったため、事件性を見い出せずにそのまま葬儀になってしまいました。
まさかの静さんから玄太郎さんへのヘルプ要請で、火葬を何とか思いとどめて解剖に回したことで、事件性が発覚しましたが…。
火葬を止めた方法が、すごくアクロバティックな方法だったなぁと。
そしてまた、今回も息子がろくでもないやつでした…。
警察官や教師などの子供はグレる可能性が高いとは言われていますが、まぁ判事もそうなっちゃうかな…。
静おばあちゃんも言っていましたが、警察なめすぎっていうのはどうかと思いますね。
ちゃんと調べられて発覚しちゃって。
でもほんとギリギリだったので良かったですよ…。
このまま火葬にされていたら、発覚せずに終わってしまったかもしれないと思うと、怖いですね。
こうやって発覚しないでもみ消された犯罪、一体どれくらいあるんでしょうかね…。

最後の事件、『復讐の女神』。
ここでようやく円ちゃんが登場しました。
14歳とのことなので、『静おばあちゃんにおまかせ』よりも8年ぐらい前になるのかな?
彼女の両親の事故と、その捜査の結果でずっとふさぎ込んでる感じです。
それに加えて、前の章で出てきた昔の判事仲間も殺害されてしまって、なんだかいよいよ大変な感じになってきました。
結局犯人は捕まりましたが、誰かから焚き付けられた感じでした。
さらに静おばあちゃんの家に怪しい脅迫電話までありました。
それも、最後はちゃんとまるっときれいに治まった感じにはなりましたけど。
ここでもやっぱり玄太郎さんの無茶さと財力に物を言わせる感じが役立って、犯人を捕まえられた感じでしたねー。
まぁ、そっちの犯人は捕まったんですが、結局円ちゃんの両親の件はそのままってことですよね。
円ちゃんの「運転手は酒臭かった」という証言は取り上げられず終わってしまった感じです。
彼女の思い違いなんだったら仕方ないんですが、そうじゃなかったんだったらとっても嫌な感じです。
結局、先日読んだ『有罪と AI は告げた』では、円ちゃんも判事になったわけですから、法に対する絶望みたいなものはちゃんと払拭されたんだろうなとは思います。

有罪、とAIは告げた
中山七里さんの『有罪、とAIは告げた』を読みました。中山さんの小説は『さよならドビュッシー』以来です。 こういうタイトルの新刊が出る、という知識しかない状態で読んだので、『静おばあちゃんにおまかせ』の円(まどか)ちゃんが主人公だというのは嬉...

多分、玄太郎さんのおかげなんだろうなって。
お別れの時「これで会うのも最後かも」と静おばあちゃんは思ってたみたいですが、多分本当にそうなっちゃったんでしょうね。
円ちゃんも「遥とルシアに会いたい」みたいな感じで話はまとまってたけど、それも実現できないままだったんでしょう…。
3人が会うことがあれば、それからのルシアの運命はちょっと変わってたのかな、なんて夢想してしまいます。
みち子さんに対する忌避感も、最初に比べたら全然なくなっていました。
むしろ、いい味出してるなと思いました。
彼女の未来も知っちゃってるから、ちょっと悲しい感じですけどね。

今回で『静おばあちゃんと要介護探偵』シリーズは終わりです。
円ちゃんの登場はこれからも続くかもしれませんが、この2人がタッグを組んで事件にあたるのは、これで最後でしょう。
前日譚とかは出る可能性があるかもしれませんが…。
私としては、『秋山善吉工務店』の善吉おじいさんも加えて、3人で活躍してほしかった気もします…。

秋山善吉工務店
中山七里さんの『秋山善吉工務店』を読みました。中山七里さんの小説は『スタート!』以来です。 火事で家が全焼し、大黒柱である父親が焼死してしまいました。残された母親と長男次男は、父親の実家である墨田区の秋山善吉工務店で暮らすことに。子どもたち...

まぁ、3人とも無理ですね…。
悲しいです。
でも楽しかったです。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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