稲垣栄洋さんの『生き物の死にざま』を読みました。
稲垣さんの本は初めてです。
『事実は小説よりも奇なり』とはよく言ったものですね。
泣きながら読んだ箇所が多数ありました。
すごい、生き物ってすごいなぁ、と。
表紙のかわいらしい動物たちのイラストが印象的です。
なんとなく哀愁が漂っているように見えるのは、タイトルの『死にざま』という文字のせいでしょうか。
生き物たちの死の間際の様子が29個入っています。
哺乳類だったり鳥類だったり、魚類だったり昆虫だったり、種類は様々です。
淡々と描かれているにも関わらず胸を打つような内容でした。
特に印象に残ったのは、まず『ハサミムシ』。
ハサミムシの母親の最後の仕事は、自分の産んだ子供に食べられることなんだそうです。
もちろん、種の保存とかという観点から見るととても理にかなった行動なんだとは思いますが、なんともグロテスクです。
でも、そんな中に『母の無償の愛』を感じてしまうのは、私がそういう物語を望んでいるからなんですかね…。
少ない個体を産んで大切に育てるか、たくさんの個体産んで生き残らせるか。
後者のそれが生存戦略だというのはわかっていますが、すごい世界だなあと思います。
完全に『個』としての存在はなく、『種』を存続させるためのコマにすぎないと言うか。
本当に合理化されたシステムだな、と感心してしまいます。
最後に『卵』に接触している方が面倒を見るというシステム。
魚に関しては、メスが卵を産み付け、その後にオスが精子をかけるので、居残っているオスが面倒を見ることが多い、というのを大学の時教養で取った生物で知りました。
ものすごく驚いたのを覚えています。
ハダカデバネズミの話もありました。
おもしろい名前で「聞いたことあるな」と思ったのですが、調べたら以前読んだ貴志祐介さんの『新世界より』のバケネズミのモデルだということを思い出しました。
そこから小説の内容がブワーと蘇って、ちょっとゾワッとしてしまいました…。
改めてネットで画像を検索してみましたが、確かにすごい容姿だなと思ってしまいますね。
『不老長寿』だなんてうらやまーと思いますが、実際はどうなんでしょうね…?
ニワトリの一生も印象的でした。
人間はそうやっていろんな命を糧にして生きてるんだな、とつくづく感じます。
文章で見ると、なんて残酷なんだと思いますが…。
「かわいそう」と言うのは簡単ですが、そうしないと生きていけないですからね。
漫画『GANTZ』の最後の方を思い出しました。
それぞれの生き物に『心』があるかどうか、というのは興味深い問いではあるけど、考えてしまうと何もできなくなりそうで怖いです。
私は、『心』があるのとないのと、どちらを望んでいるんでしょうかね…。
今は夏で、時期的に『蚊』によく遭遇します。
いつもであればパンッとやってしまうんですが、ついつい娘が蚊を邪険に扱うのを止めてしまいました(笑)。
はぁ、影響されやすいなぁ。
1話が短くまとまっているのでサクサク読めるんですが、涙を誘う話も結構あって。
余韻に浸りながら読みました。
とてもおもしろかったです。
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