佐藤青南さんの『犬を盗む』を読みました。
佐藤さんの小説は初めてです。
肩に載せられたかわいい犬がこっちを向いている表紙、そして『犬を盗む』というなんともインパクトのあるタイトル。それらに惹かれて読みましたが、おもしろかったです。
私自身は犬、というか動物全般にそこまで接点はないんです。父が転勤族だった関係でずっと社宅暮らしだったので飼えなかったし。でも、見るのは好きです。よくじーーーーっと見つめ返してくれるので、なんだか幸せな気持ちになりますね。いつか飼ってみたい、と思いつつ、無理だろうな…とも思います。なんせ、『すごく世話が簡単な植物』ですら枯らしてしまうくらいなので…。
世田谷の広い敷地の中にある家で、80歳の女性・木戸タカ子が殺害されました。彼女は近所に住む親族とも折り合いが良くなく、以前飼っていた犬の関係で知り合った人たちとほそぼそと交流しているのみ。その犬も1年以上前に死んでしまい、そこからは近所でもあまり見かけられなくなっていました。
現場から徒歩圏内にあるコンビニエンスストアで働いている鶴崎は、同僚の松本が最近飼い始めた犬に興味を持ち、時折散歩したり世話を買ってでていました。鶴崎は実はとある雑誌の契約記者で、松本が過去にある事件を起こしていて、彼の身辺を探る目的で近づいたのでした。
木戸タカ子は1年前に犬を亡くしていたはずですが、どうやら最近あたらしい犬を買い始めていたようです。しかし、事件後にその犬は行方がわからなくなっています。犬はどこに行ったのか? 木戸タカ子は誰に殺されたのか? 2人の刑事が事件を追いかけます。
『犬』のモノローグから物語が始まります。途中途中でなんどか入ります。で、この独り言が、なんか少しおかしいんですよ。まぁ、『犬』だから仕方ないのかな(って失礼ですけど)、なんて思っていたんですが。最後まで読んでみてびっくり、なるほど『本当のこと』しか言ってなかったな、と。
過去の事件の真相は、多分そんな感じだろうなと思っていました。現在の犬に対する愛情を考えれば、そんなことができるような人ではないと思えますからね。
そして、過去のこの事件ですが、以前本で読んだことがあるノンフィクション本でも類似の事件があったし、昨今では『教育虐待』という言葉も浸透してきていますからね…。
途中で小野寺真希という作家が出てくるんですが、彼女はなんだか『闇』みたいなものを担当させられちゃった損な役回りでした。勝手な思い込みで結果的にひどいことをしてしまったし、自分の幸せも壊してしまった。先日読んだ『鍵の掛かった男』の犯人を思い出しました。
小説には視野狭窄になって外からの声が聞こえなくなるキャラクターがたまに登場しますが、自分も気をつけなきゃいけないなとつくづく思います。大体、結果的に残念なことになる担当ですからね…。
この小説には、『碑文谷』『鷹番』なんかの世田谷区の地名がでてきます。私は世田谷に住んだことはないんですが、この地名は『ハサミ男』の舞台にもなった場所ですね。
やっぱり世田谷あたりは小説になりそうな感じの風景なんでしょうかね。作家さんもたくさん住んでいそうな感じしますねー。いい環境の町なんだろうな。
佐藤さんの小説は初めてだったんですが、過去作のタイトルを見るとなかなか惹かれるものがたくさんあったので、これから少しずつ読んでいきたいなと思います。先日の有栖川さんもそうですが、好きなものが増えてきてしまって、嬉しい悲鳴ですねー。
Kindle Unlimited で読みました。
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