法月綸太郎さんの『法月綸太郎の功績』を読みました。
法月さんの小説は『法月綸太郎の冒険』以来です。

また、読み終えてから「しくじったな」と思ったんですが、こちらは短編集3作目だったようで…。
前回読んだ『法月綸太郎の冒険』が1作目なんですが、その次が『法月綸太郎の新冒険』になるそうです。
だって、『冒険』と『新冒険』、表紙が似ているから同じだと思っちゃったんだもん…。
まー、どちらも短編集なので、多分大丈夫だとは思うんですけどね。
本作には5本の短編が収録されていました。
1つ目は『イコール Y の悲劇』。
ダイイングメッセージについておもしろい考察が飛び交う話でした。
でも、最終的なところまで読み終えて、「結局旦那が悪いんじゃねーか」っていう…。
まぁ、犯罪なんて大体そんなモノでしょうけどね。
妹さん、本当に何も悪くなくてびっくりですよ。
っていうか、そんなこと考えて実行してしまう姉って…何だかなって…。
私自身も『姉』なので、なんだか悲しい気持ちになります。
そんなにこの浮気野郎がいいかなと。
そういうもんなんでしょうかね…。
別で殺されてしまったお友達も、完全にとばっちりですね。
確かに法月さんの推理通り、姉にとっては「自分と夫の絆をより深めるチャンス」ぐらいにしか捉えてたのかもしれないですけど。
「そこまでこだわるぐらい『いい男』なのかな?」とも思いますが、いずれにせよ自分の人生がもったいないですね。
2つ目は『中国蝸牛の謎』。
最初に『新作のための覚書』と出てきたので、そもそもこの本全体が『法月綸太郎の新作小説』っていう体なのか? と思ったんですけど…多分そうじゃないですよね。
鹿沼という大御所の作家と対談し、その数日後に彼が謎の死を遂げてしまって、またまた法月さんが巻き込まれるという話でした。
「木の葉を隠すために森を作る」的な発想がめちゃくちゃ飛躍しまくった感じでしたねー。
『糟糠の妻』に不義理をしてまで新しい嫁さんをもらったけど、多分そんなに幸せじゃなかったんだろうな…というのが率直な感想です。
でも、やり口としては正直理想的だなとは思いました。
私も、何かのっぴきならないことが起こってしまって自殺せざるを得なくなったら、誰かに殺された風に装いたい、と常々思っています。
あ、今のところ、予定はないです(笑)。
でも、このやり方だと、ダメージを受けるのは男の方だけなんですよねぇ…。
やっぱり、新しい嫁さんのこと、大好きだったんですかね…。
うーん。
3つ目は『都市伝説パズル』
これはなかなかおもしろかったです。
この手の都市伝説はたくさんありますが、それをモチーフに誰が犯行を行ったかを考えていく、まさにパズルでしたね。
アリバイの大元になる『前提』のことが崩れたとき、「なるほどもっと単純に考えればよかったのか」とアハ体験があるのがおもしろかったです。
ただ、こんなことをとっさに考えられる聡明な人が、『そんなもの』にハマってしまったのか…と悲しい気持ちにはなってしまいました。
ちなみに、精神科医の樺沢先生は「日本人とアメリカ人の構造が違うからか、SSRI は日本人にとっては『ハッピードラッグ』にあまりならない」とご自身の YouTube でおっしゃっていました。
ただ、『プロザック』は『厚生労働省未承認の処方箋医薬品』とのことなので、なるのかもしれないですねー。
それとも、たまたま日本人でもハッピードラッグとして使用できる人たちだった、ということでしょうか?
4つ目は『ABCD包囲網』。
はーーー、これもなかなかおもしろい話でした。
なんというか、1つ目の『イコール Y の悲劇』に似た感じかもしれないですね。
普通、『オオカミ少年』的に考えると、確かに4つ目の殺人を防ぎたいと考えてしまいます。
しかも、それを依頼してくる人も出現するし。
でもそうじゃなくて、本当に隠したかったのは…と。
これ、まさに4つ目の『事件』を起こさずに相談にも来なかったら、『完全犯罪』として闇に葬られていたかもしれないですね…いやー、恐ろしい。
あと、本来であれば怪しくて疑わなければいけないはずの人を、まったく疑っていなかった自分にがっかりです。
『美濃牛』のときと同じパターンだったじゃん! と。

残念だなぁ。
最後は『縊心伝心』。
こちらも、思いもよらぬところから犯人が湧いて出たので、私的にはすごくびっくりしました。
まさかなぁと。
『ホットカーペット』が出てきたので、『探偵学園 Q』みたいに死体に被せて死亡推定時刻をずらしたりとかそういう系かな、と思ったら…。
これまた違って、『コンセント』の方が大切だったということみたいですね。
確かに、ホットカーペットは基本的には2つのパーツに分かれるので、下の方はつい見逃すなぁと思いました。
…今のホットカーペットもそうなのかな?
にしても、あとがきにも書いてありましたが、男女関係のもつれ、要するに不倫などの題材が多いな、とは思いました。
でも、実際にもきっとそうなんだろうなとは思いますね。
まぁ手塩にかけて育てた一人娘が変な男に引っかかって、お母さんは気が気じゃなかったでしょうねぇ。
その点についてはものすごく同情するな、とは思います。
そして、このお母さんがあまり気にしないタイプだったとしたら、こちらもまた『完全犯罪』として片付けられてしまったかもしれないですね。
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