殊能将之 未発表短篇集

読んだ本

殊能将之さんの『鏡の中は日曜日』を読みました。
殊能さんの小説は『鏡の中は日曜日』以来です。

鏡の中は日曜日
殊能将之さんの『鏡の中は日曜日』を読みました。殊能さんの小説は『黒い仏』以来です。今回も、前回同様『石動戯作シリーズ』です。これが3作目でした。前回の『黒い仏』が、正直私には合わなかったので、「今回も『黒い仏』みたいな感じだったら困っちゃう...

短編集ということで、4つの話が入っていました。
短編集で4つっていうのはちょっと少なめでしょうかね。

最初は『犬がこわい』。
『こわい』がひらがななので、『まんじゅうこわい』の派生系かと思ったら違いました。
本当に犬が怖かったみたいです。
この話の冒頭に、

世の動物好きの方々は、動物が嫌いで嫌いで仕方ない人間が存在することを理解していないのではないだろうか?

とありました。
犬好きの人と犬嫌いな人がいかに相容れないかがつらつらと書かれてるんですが、すっごくよくわかります…。
私、犬はまぁ遠くから見る分には好きなんですが、近くに行くとちょっと怖いんですよね…。
正直、やっぱり言葉が通じないから、いきなり噛みつかれたりとかするかもしれないし、怖いです。
昔追いかけられたことがあるせいだと思うんですが…。
だから、この主人公の気持ちはすごくよくわかります。
幸い、私の周りには押し付けてくるような人はいなかったから良かったですが。
話としては、普通にありそうな、ちょっとゾッとする感じの話だった。
引っ越ししてきた時に1回しか会ってない人の顔なんて、そんなに細部まで覚えてないですよね…。
そういう状況だったら、すり替わりは簡単にできちゃうかなーって、怖いですね。
昨今、近所の付き合いは希薄ですからねー。
しかし、アレが3つ並んでるのを見て、さぞかし怖かっただろうな…と。
でも、それよりも犬がこわいんだって。
でもでも、結局飼うことになっちゃってますしねー。

次は『鬼ごっこ』。
これは…どういう話なんでしょうか…?
結局、『高木』とか『黒川』とかは、人間じゃなかった、ということで大丈夫ですか?
なんだか、先日読んだ『黒い仏』を思い起こさせるような内容でした。

黒い仏
殊能将之さんの『黒い仏』を読みました。殊能さんの小説は『美濃牛』以来です。これが石動戯作シリーズの2つ目です。今回の話は…なんというか、読み終えて愕然としました。これまで私が読んだ殊能さんの小説と、まったく毛色が違う話だな、と。前作の美濃牛...

にしても、『鬼ごっこ』でこんなに一般人を巻き込んで、ぐっちゃぐちゃに殺しまくっているんですが…。
彼らがもし『神様』なんだとしたら、プリキュアの戦闘シーンが終わった後みたいに「すーん」っていう感じで原状回復したりするんでしょうか…?
もしくは第3新東京市みたいにビルが生えてくるとか…違うか。
なんかすごいむちゃくちゃなお話でしたね。
でも、ギリシャ神話とか神様って結構むちゃくちゃな存在だから、そういうものなのかな、という一定の納得感もあったりします。
まぁ、本当よくわからない話だったな、っていうのが正直なところです。

3つ目は『精霊もどし』。
いやー、なかなかシュールでおもしろい話でした。
どうして広永ではなく主人公の方に見えてしまったんでしょうか?
その魔法陣が書いてある本をもうちょっとちゃんと読んだら、立場を逆にしていた方が良かったんじゃないのかな…と。
しかも、真知子さんの「あたしが言うんですから、信用してください」は、まぁある意味説得力があるというか…。
『信じている人』にとっては、ちょっとショックなお知らせですかねー…。
まぁ、死んじゃったら何もないってことですよね、きっと。
にしても、真知子さんには何がそんなに魅力的だったんでしょうね。
広永がそんなに夢中になって、狂おしいまでに求める奥さんは、何がそんなにすごい人だったんでしょうかね…。
しかも、電話かけたり、コーヒーを買いに行ったりできるじゃないですか。
すごい有能な霊ですね。
正直あんまり怖くなさそうだし、そういう霊だったらちょっと会ってみたいかも…なんて。

最後は『ハサミ男の秘密の日記』。
『田波正』さんがいかにして作家『殊能将之』になったか、その過程が描かれている日記形式の文でした。
どこまでが本当でどこまでが嘘なのかもわからないですし、今となっては確認しようもないのかもしれないですけど、とても興味深い人だったんだな…と思いました。
やっぱり体が弱かったのが、早い逝去に結びついてしまったのかなと思うと悲しいです。
お兄さんに電話を止められたから、わざわざ嫁いだお姉さんのところに行かないと電話が使えなかったり、速達を受け取れなかったためにせっかく受賞した知らせをもらっていなかったり。
これは『事実は小説よりも奇なり』っていう感じがしました。
やっぱり、かなり変わった人だったんだろうな、と思いつつ。
ただ、殊能さんが高校生ぐらいの時から、一部界隈ではとても有名な方だったらしいので、ようやく芽が出てこれからすごい作家さんに育っていくところだったのにな…と思ってしまいます。
今回の『鬼ごっこ』を読んでいれば、以前読んだ『黒い仏』もまぁなるほどなーと思えるので、普通のミステリーだけじゃなくて、SF というかホラーというかファンタジーというか、そういう系統の作品もこれからたくさん書く予定だったのかな、とも思います。
何にせよ、本当に悔やまれます。
ただ、いつも思うんですが、こういう『日記』っぽい本というのは、本人は公開されることを望んでるのかな…と。
私だったらちょっとやだなーって思ってしまうので…。
まぁ、「そう思うだろうな」と思いながら読むのも、またちょっとした背徳感がありつつも楽しい感じではあります。

殊能さんの『小説』は、これが最後です。
…さみしいです。
他には、『殊能将之 読書日記 2000-2009』があるようなんですが…それはまぁいいかな…。
なんかやたら高いし…。
小説はすべて読んだことになるんですが、やっぱり『ハサミ男』がとても良かったですね。
あとは、『鏡の中は日曜日』も好きです。
石動戯作シリーズを、もっと読んでみたかったです。

私は新参のファンですが、とても楽しませていただきました。
殊能さんのご冥福をお祈りします。
ありがとうございました。

[AD]殊能将之 未発表短篇集
さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

さちこをフォローする
読んだ本
さちこをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました