横溝正史さんの『死仮面』を読みました。
横溝さんの小説は『蝋面博士』以来です。

今回は、久しぶりにジュブナイルじゃない金田一さんでした。
…よね? 多分そうだと思います。
中編が2つ入っていました。
最初は表題作『死仮面』。
以前読んだ『首』に『生ける死仮面』という話も入っていましたが、また違った内容です。

巻末の解説に書いてあったんですが、この物語が『完成』するまでの経緯もおもしろかったです。
この原稿が発見されたとき、一部だけ見つからず、いろんなところにアナウンスして情報を求めたけれど、結局見つからなくて…という経緯があったようです。
で、この本に収録されているものの一部は、その解説を書いた中島河太郎さんの書いたものだとのこと。
後に不足していた原稿が見つかったみたいなので、この本とは別に『オリジナル版』として『春陽文庫』の『死仮面』もあるようです。
…まぁ、抜けているのが最後ではなく途中なので、結末が違うということはなさそうだし、このままでいいかなー(笑)。
しかし、こういう感じの原稿保存、時代を感じますね(笑)。
さて、死仮面=デスマスクということで、以前読んだ森博嗣さんの『数奇にして模型 NUMERICAL MODELS』や法月綸太郎さんの『生首に聞いてみろ』なんかを思い出します。


前半の壮大な『愛の物語』、謎の死仮面を送られた財力のある女性、そしてスキャンダル。
いやー、すごい話でした。
壮大な『ホラ話』から始まるミステリー、島田荘司さんの『占星術殺人事件』を思い出しました。

巨大な学校法人を経営していて、常に品行方正であることを求められる女性・夏代。
息が詰まりそうでかわいそうではありました。
そんな身の上にも関わらず、『他人に公言できない姉妹』が2人。
これは、毎日心休まる時間がなかったかもしれないですね。
夏代がやってしまったことは許されないことではありました。
でも、それから更に心労を重ねて、最後は殺されてしまいました。
しかも犯人がなー…、結局金の問題、怖いですね。
途中から登場した女子高生・澄子。
最後は火災の中からなんとか生還しました。
…まー、火事だけじゃなかったですけど。
急に、とても大きなものを背負わされたのは大変ですが、夏代の遺志を継いでがんばってほしいと思います。
もう1つは『上海氏の蒐集品』。
これは『ミステリー』というよりは、『とても悲しい物語』という印象でした。
金田一さんは出てこず、上海氏(しゃんはい・し)という記憶喪失の男性が主人公です。
記憶喪失を過度に気に病むこともなく、絵を描いてなんとか暮らしていました。
たまたま仲良くなった少女・亜紀と心が通じ合う…かと思いきや、殺人事件に巻き込まれてしまいます。
戦後、高度経済成長期、地価の高騰で急に金持ちになる。
この戦後の怒涛の流れ、私は経験したことがないですが、何もかもがガラッと変わっていく感じで、大変な時代だったろうなと思います。
上海氏も時代に揉まれて大変な思いをした人で、結局死んでしまいました。
利用された現場監督も死んでしまいました。
結局事件は解明されず、亜紀も真相を知らないまま遺産を受け継ぎます。
これで良かったのか、誰にもわからないですね。
こちらは横溝先生の絶筆に近い作品のようです。
解説には『長く著者の筐底に置かれていた』と書かれていたんですが…、それってどういう状態なんでしょうか?
本当に箱の中に入っていたんでしょうか?
言葉の綾なんでしょうか?
いずれにせよ、前の『死仮面』と同様、出自が一風変わっていたということなんでしょうか。
物語全体に漂う虚しい感じ、ノスタルジックな感じが、なんだか妙に心に残る話でした。
Kindle Unlimited で読みました。
[AD]死仮面 [AD]Kindle Unlimited


コメント