宮部みゆきさんの『模倣犯 2』を読みました。
先日の『模倣犯 1』の続刊です。
次から次へと出てくる女性の被害者。
「これが小説でよかった」と思います。
怖いです。
特に、鞠子のことを思うと本当に悲しくなります。
彼女はとても善良な子で、辛そうに見えたヒロミに対して親切に振る舞っただけなのに。
なんでこんなことに巻き込まれるんだろう…。
他の子達みたいに、何かしら非があってっていうバックグラウンドがちょっとでもあるのであれば、「事件は『そちら側』で起きているんだ」って自分から切り離すことができるんですけどね…。
彼女は瑕疵が見つからなくて、本当に善良な普通の人だから、本当に恐ろしいです。
『善良な子』であっても、こんな恐ろしい事件に巻き込まれてしまうんだったら、この世の中どうやって生きていったらいいんだろう…と思ってしまいます。
もちろん善良じゃないからといって、誰かに命を理不尽に奪われているということにはならないですけど。
今巻は、ヒロミとカズの幼い頃から今までのお話がメインでした。
ピースも出てきますが、あくまで脇役な感じです。
ピースがどんな人間だったのかはまだわからないし、それがちゃんと明らかになるかもちょっと覚えていないです…。
なので、今のところはヒロミとカズのことだけ考えようと思います。
カズは本当にいい子で、ずっとヒロミのこと心配してて。
「あいつはいいやつなんだ」って、ちょっと思考停止かもしれないけど、幼い頃の思い出を忘れられずにずっと気にかけています。
それであんな事件に巻き込まれてしまって…。
やっぱり、善良なだけでは生きてるのが辛い世の中なのかなと思ってしまいます。
『電話相談』を何度も利用しているところはなんだかカズらしくて微笑ましかったですが、相談の内容がだんだん深刻化してきて、微笑んでもいられなくなっていきます…。
『模倣犯』自体は既読なんですが、大まかな流れしか覚えてないので、この時電話相談にかけた声紋とかで、カズの疑いが晴れるんだったらいいなって思うんですけど、どうだったかな…。
カズはちゃんと自分で立って生きてきているのに、それができていないヒロミなんかにいいように操られて、最後は利用されて…。
とても悲しいです。理不尽です。
ヒロミもヒロミで、家庭環境には一定の同情はあります。
母親は、死んでしまった子供の年を数えるような人間で、赤ちゃんのときに死んでしまったヒロミの姉の幻影ばかりを見つめているから、ヒロミにちゃんと向き合っていません。
父親は父親で、母親の悪口を泣きながら息子に語るような人物です。
2人とも『責任逃れ』をしている人間なので、そういう意味ではヒロミはかわいそうな生育環境だったと思います。
だからと言ってこういう事件を起こしていいというわけでは絶対ないし、そんなバックグラウンドなんてどうでもよくて。
自分がやってきたことの責任は自分で取らなきゃいけないんだし、辛い目にあったってちゃんと真っ当に生きてる人だっているんだし。
…どうしたらこんなモンスターみたいな大人に育てなくてすむのか教えて欲しいです。
幼い頃からすでにモンスターの素質があったんでしょうけど。
鞠子以外の被害者の女の子たちの背景も明かされていきます。
彼女たちはかわいそうではあるけど、自業自得な部分ももちろんちょっとあるんですよね…。
今まで何も怖い目に遭わなかったのは奇跡なんじゃないかっていうくらい、何というかゆるい感じで生きている子たちばっかりで。
だから、男性は女性よりも力が強くて恐ろしい存在であるっていうことを、誰からも教えてもらえなかったんですね。
かわいそうな子たちだとは思います。
だからと言って殺されていいわけではないです。
私にも娘がいます。
もちろん、こんな恐ろしい事件の被害者になんかなってほしくないです。
私が娘にできることは、「男の人は力ずくで女性を押さえつけて、暴力で支配することもできてしまう性別なんだよ」ってちゃんと教えてあげることなのかなとも思います。
もちろん、そんなことをしない男性が大多数だと思いますし、自分が逆の立場にならないようにもしなきゃいけないけですけどね。
こんな理不尽で通り魔的な事件なんて、現実には起きなければいいですね、本当に。
[AD]模倣犯 2 [AD]Audible
コメント