新釈 走れメロス 他四篇

読んだ本

森見登美彦さんの『新釈 走れメロス 他四篇』を読みました。
森見さんの小説は『ペンギン・ハイウェイ』以来です。

ペンギン・ハイウェイ
森見登美彦さんの『ペンギン・ハイウェイ』を読みました。森見さんの小説は『夜は短し歩けよ乙女』以来です。『ペンギン・ハイウェイ』は映画化されましたよね! 近くにある映画館が入っているショッピングセンターに、でっかい広告が貼ってあるのを見ました...

『他四篇』とあり、

  • 山月記(中島敦)
  • 藪の中(芥川龍之介)
  • 走れメロス(太宰治)
  • 桜の森の満開の下(坂口安吾)
  • 百物語(森鴎外)

の計5篇でした。
本当に残念なんですが、この中だと『走れメロス』しか知らなくて。なので、3番目の『走れメロス』を読むまで、この小説の立ち位置がわかりませんでした。で、走れメロスを読んでようやく「あぁ、森見さんの小説だー」と。オリジナルを知らなければ、どの程度アレンジされた話なのがわからないですからね…。
要するに、『京都の腐れ大学生たち』を登場人物に据えて現代版にアレンジした名作たち、なんですが、どれくらいアレンジしたかというのが、これまたすごくて。

『走れメロス』しかオリジナルを知らないのでそこでしか計れないんですが。
『走れメロス』では、王を殺害しようとして捕らえられたメロスが、メロスの妹の結婚式に出るために親友のセリヌンティウスを身代わりにして王の元を離れ、「戻ってこないだろう」という大方の予想を裏切り処刑ギリギリの時間に戻ってきて、王様が感動して無罪放免にしちゃうって話ですよね。すごく簡単に言うと。
『新釈 走れメロス』の方だと、『図書館警察』のトップである図書館警察長官が、情報網を張り巡らせて握った数々の生徒たちの弱みを武器に横暴を繰り返していて、それに立ち向かった主人公・芽野は売り言葉に買い言葉で『公開処刑』をされることになってしまいます。で、芽野は姉の結婚式に参加するために親友の芹名を身代わりにして京都を離れようとします。ここまでの流れは大体一緒なんですが、芹那の証言から芽野には姉などおらず、「約束を守るようなつまらぬ羽目になっては芹那に申し訳ない」と京都中を逃げ回ります。しかし、長官の追手がものすごくしつこく追い回し芽野を捕まえようとする…という、オリジナルと似ているような似ていないような話です。
今後、『美しく青きドナウ』が聞こえるたびに笑ってしまうじゃないですか。いい曲なのに。たまに『スケーターワルツ』と間違えちゃうけど。
物語の端々に『パンツ番長』とか『自転車にこやか整理軍』とか『猫炒飯』とか、『四畳半シリーズ』を彷彿とさせる単語がたくさん出てきて、そのたびに笑ってしまいます。
いやー、森見さんにかかれば、教科書にのるような名作たちもこんなに面白い話になってしまうんですね。

はじめの4篇はそれぞれ別の登場人物が出てくるんですが、最後の『百物語』にはほとんど全員が出てきていて、さらに主人公が『森見君』。やっぱりご本人なんですかね。やっぱりオリジナルを知らないのでどんなふうにアレンジされたのかがわからず残念ですが、なんだか不思議なような不気味なような話でした。もちろんおもしろいです。『interesting』でもあり『funny』でもあります。

過去の名作とかおとぎ話・昔話のたぐいを現代版にアレンジしたものはいくつか読んだことがありましたが、ここまではっちゃけているのは初めてだったのですごく新鮮でした。いやー、おもしろかったなー。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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