有栖川有栖さんの『妃は船を沈める』を読みました。
有栖川さんの小説は『捜査線上の夕映え』以来です。
火村英生シリーズです。
この本、最初の『はしがき』に書いてあったんですが、まず成り立ちがおもしろかったです。
そもそも『妃は船を沈める』というタイトルの物語は収録されていないんです。
第1部の『猿の左手』が先にできて、そのうちに続編の第2部『残酷な揺り籠』を思いついて、2つ合わせて1つの作品となったとのこと。
タイトルもなんか素敵ですし、表紙のお上品な感じの手袋の絵もすごく合っているなと思いました。
というわけで、今回は中編2つです。
まず、第1部の『猿の左手』。
「気持ちの悪いオバハンもいたもんだなぁ」と、正直思いました。
しかも、終わってみたらまさかそんな事情があったとは、とさらに驚き。
自分の運命を変えてくれた人に報いるためにやったことなんでしょうけど、まぁそんな姿を見せられたらすべて洗いざらいしゃべりたくもなってしまいますよね。
「催眠術で人を殺したり殺させたりするようなことはできない」というのは、20年以上前に宮部みゆきさんの『魔術はささやく』に同じようなことが書いてあったので知っていました。
『魔術はささやく』では、「自殺しろ」という命令はできなかった(効かなかった)ので、「とにかく逃げろ」という後催眠をかけたんでしたよね。
そしてその結果、事故にあって死んでしまった、みたいな感じだったような気がします。
今回の事件とはちょっと違いますけど、『催眠繋がり』ということで。
にしても、悪夢として何度も出るぐらい、罪悪感は感じていたんですね。
それは本当気の毒だな、とは思います。
まぁ、確かに助けにに行けないよなー、そんな状態じゃ。
いろんな意味で、従順な人だったんでしょうね。
この場合、『妃』の方は罪になるんでしょうか?
なってほしいんですけど…流れ的には野放し、という感じでしょうか。
第2部『残酷な揺り籠』
これは、地震さえ起きなければ『完全犯罪』になってしまっていたんだろうか? と思ってしまいます。
結局、前に出てきた『猿の左手』が叶えた『いびつな願い』だった、みたいな感じになってしまいました。
とはいえ『妃』がようやくお縄になって良かった、とは思いました。
しかし、犯行を終えてから地震が発生して、一瞬でここまで組み立てたのは、本当にすごいことですね…。
やっぱり頭の良い、賢い女性だったんでしょうね。
まぁ、もったいない生き方だな、と思ってしまいますが。
大体、ミステリーで車椅子の人が出てきたら、本当は足が動けるんじゃないかと疑え、というのが定石ですかね。
『探偵学園 Q』の『雪月花殺人事件』 とか、以前読んだ『美濃牛』とか。
でも、今回は結局、本当に動けないようでした。
ラストの犯人との対峙のところで、犯人がかなり饒舌な感じで、一瞬勢いに負かされそうになってしまいました。
火村先生もちゃんと論破していましたし、肝心の動機のあたりはアリスさんがサポートしていたみたいですし、改めていいコンビだなーと思っちゃいましたね。
そして、今回この話がコマチさんの初登場だったみたいで、先日の『捜査線上の夕映え』を読んだ後だと、なんか感慨深いものがありました。
かなり手強い人だったので、ここでようやく仕留めることができて、なんだかほっとしています。
それこそ、浜真千代や有働さゆりやスズキタゴサクみたいにならなくてよかったなと思ってしまいました。
まー、なってしまったらそれはそれで火村先生が追いかけるんでしょうけどねー。




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