雨穴さんの『変な絵』を読みました。
雨穴さんの小説は『変な家』以来です。

いやー、『変な家』には大変お世話になりました。
息子の夏休みの読書感想文を『変な家』にしたんですよ。
まぁ、読書感想文の題材としてどうなの、というのは置いておいて(笑)。
本人も楽しみながら読んだようで、なんとか感想文も書けたようです。
Audible で読んでもらいながら、手持ちの Kindle で文字を追っていく、という贅沢なスタイルで読んでいました。
今回の『変な絵』は、その続編です。
『変な家』と話がつながっているわけではないです。
でも、やっぱり摩訶不思議な感じの話で、やっぱり雰囲気は似ています。
一見すると全然関係のない短編集のような感じになっているんですが、最後にすべてが繋がるという仕掛けになっていました。
以前読んだ『いけない』みたいに絵がキーワードになっていて、そのそれぞれの絵を見ながら物語を聞いていくスタイルです。


はじめは、誰が主軸なのかなかなかわからなかったんですが、それがわかってからはすべてが一つに繋がる感じ、急速にパズルのピースが埋まっていく感じがして、驚きとおもしろさが急にやってきます。
全部で4つの話が入っていました。
1つ目は『第一章 風に立つ女の絵』。
これは少々こじつけかな、と思うところもありましたね…。
ヒントにするにしても、もうちょっと分かりやすく描いて欲しかったよなーと。
丸の大きさ・起点はわかるようでいてわからないし、これを全体像なしに個別に描いたんだったらものすごい才能だと思うんですけど。
…もちろん下絵があったか、今まで描いたものを出してきたことですよね…?
「自分が死んだ後、息子を守ってね」という意味を込めたんでしょうか。
後でわかったことですけど、「少しずつ少しずつ殺されていっている」と気づいたときは、本当に怖かっただろうなと思います。
ただ、もうちょっと抗うことはできなかったかな…。
飲んだふりするとか、誰かに伝えるとか…。
死んでしまったら終わりなんですから。
確かに「逆子でも大丈夫」とか言ってる助産師がいるんだったら本当どうなの? って感じだけど、なるほどなと思った。ここで出てきた『栗原くん』っていうのは、『変な家』の栗原さんってことでいいのかな。なるほど、昔から想像力豊かでひらめきがすごくて推理力もあったということなんだろうね。
2つ目は『第二章 部屋を覆う、もやの絵』
なるほどー、子供を叱りすぎてしまったことに対して異様なまでの後悔を見せた裏には、こういうことが隠されていたんですね。
まぁ、ちょっと納得はしました。
ただ、自分のこと「ママ」って呼ばせるのはどうなの…。
他人の家庭のことだから別にいいんですけど、近所にいたら警戒しちゃいますね…。
「ママ」と呼ばせる気持ちは、後々わかっていくことになるんですけど。
それにしてもちょっと気持ち悪いなと思います。
お友達が「あそこの家は複雑だから」と言っていましたが、まぁ別にそこまで複雑ではないんじゃないですかね。
うちの近くにも同じような形態の家族がいます。
ただ、『おばあちゃんの感覚』が複雑だったなとは思います。
息子の霊園を1時間以上かかる場所にしたというのも、なかなかの執念というか嫉妬心というか…。
怖いです。
3つ目は『第三章 美術教師 最期の絵』。
ここでこういう風に繋がるのかー。
何というか、整理できてすっきりしたというか、気づきに対してアハ体験というか。
まぁ…感情的には『スッキリ』はしないですけど。
ここでも、もうちょっと他にやりようはなかったかなと思ってしまいますね。
そんなことして殺さなくても…。
でも、今みたいに DV とかがちゃんと認知されていなくて、さらに『シェルター』なんかの知識も持っていなかったら、そういう方向に行かざるを得なくなってしまうのかもしれません。
まぁ、この人の場合、生い立ちがかなり不幸だったというのもありますし、その後もいろいろ不幸に見舞われすぎていますけどね…。
少し『呼び込み体質』もあるんじゃないかなと疑ってしまいますが…それをいうのは酷ですかね。
それにしても、キャンバスに穴が開いていて、その穴を基準にして絵を描くということ自体はすごくおもしろいと思いました。
ちょっと調べてわからなかったんですけど、実際に存在している手法なんでしょうか?
そして、こんな少ないヒントからこの短い時間で真相にたどり着いた、この若い記者もすごいです。
…ただ、すごいですけど、彼も不運でした。
いい記者になれたかもしれなかったのに。
4つ目は『最終章 文鳥を守る樹の絵』。
全ての真相が明らかになって、記者のおじいさんが養子縁組をしてくれて。
まぁ、これからは幸せに生きていってほしいなと思います。
入院してきたのは栗原くんってことでいいんですかね?
「先輩がいる」って言っていたので…栗原くんの方が後輩だったんですよね。
まぁ手術を無事終えて、これからまだわからないけど、とりあえず元気にはなったっぽかったから良かったです。
しかし、『七篠レン 心の日記』かー。
またまたすごいアナグラムというか…こういうのもアナグラムって言うのかな?
物語も冒頭に繋がって、ようやく謎が解けたというか。
結局、彼女は何人殺めていますか…?
ヤバイほどのシリアルキラーじゃないですか…。
全員分、ちゃんと実証できますかね…?
孫ちゃんがかわいそうかもしれませんが、養子縁組しているから少しは隠せるでしょうか?
全体的な不気味さや不思議さは残りましたが、物語が着地してホッとしました。
なんというか、雨穴さんの小説には不思議な魅力があるので、クセになりますね…。
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