小杉健治さんの『境界殺人』を読みました。
小杉さんの小説は初めてです。
猫? を左右反転させたような表紙。2匹を対峙させることで『境界』の対立を表現している、ということでしょうか。
猫だったらかわいいんですけどねー。今回は人間の境界の話なので、かわいくはなかったです。むしろドロドロしていました。
あ、ちなみに、小説内に猫は出てきませんでした。残念。
今回の主人公は『土地家屋調査士』という職業の女性です。
大変失礼ながら、『土地家屋調査士』という仕事を初めて知ったもので、『お仕事もの』としてもおもしろいなーと思いながら読みました。
たまに、道路で小型のビデオカメラに似た機械で測量している方を見かけますが、その方がこの『土地家屋調査士』だということなんでしょうか? あの測量の場面、幼い頃はビデオを撮ってるんだと思っていて、友達とピースしながら通り過ぎたこともあったなーって。今思い出すとちょっと恥ずかしいですね。
赤とか黄色とか金属とかの円形のボタンのようなものが地面に埋まっている? 刺さっている? と思いますが、それもこの『土地家屋調査士』の方たちが使うんですよね。アレの上を跳びながら歩いたりするじゃないですか。『F-ZERO』の回復ポイント的なイメージで使ったり。…しますよね…?
アレやアレに類するものがキーとなる話でした。
今回の話、犯人・被告人は確定していました。殺害方法も確定していて、被告人本人も認めています。
しかも、弁護士側だけでなく検察側も被告人に同情的。なんせ、殺害された人物がちょっと…な人間だったもので。
さらにさらに、被告人が余命幾ばくもなくてねー…。なんだか形式的にやっている裁判、っていう感じだったんです。
争うところもなく、比較的穏やかにつつがなく終わると思われた裁判でした。
一点だけ、真の動機が隠されているという点を除いては。
『境界』を確定させるというのは、すなわち土地の所有権をはっきりとさせるということで、それはつまり『財産』(の一部)が確定するということです。これが揉め事に発展してしまうと、本当に厄介ですね…。
今回の殺人事件もそれが動機だと思われていました。なので、土地家屋調査士の主人公・西脇ゆう子が、クライアントである牧橋が犯した殺人で翻弄されていたんですが、実は境界争いを隠れ蓑にした計画殺人だった、という内容です。
一時の気の迷いで結婚してしまったけど、その相手がとんでもない人だった、というのは、一体動やったら見抜けるんでしょうかね…。長く付き合っていてもずっと猫被っていられる人もいるだろうし、戻れなくなった段階で本性を現されたら溜まったもんじゃないですね。
主人公のゆう子には精神科医の夫・孝介がいます。この孝介さんがまたいい人で。先に帰宅したときは食事を作って待っていてくれるし、穏やかな人のようです。体型は太めなようですが。二人はいい夫婦…だと思って読み進めていたので、最後の公園のシーンで『あんなこと』をしてしまうのはちょっとな…と顔をしかめてしまいましたし、正直話の流れにあまり影響がないんだったらなくしてほしかったなー、と思ってしまいました。うーむ。気持ちの切り替えには必要な儀式だったってことですかね。
この小説は以前ドラマ化されていたようです。
土曜ワイド劇場で『愛と死の境界線』というタイトルだったそうで、主人公のゆう子は黒木瞳さんだったそうです。何となく、アクティブな感じの女性をイメージしていたので、ちょっと意外な感じがしました。
助手の拓也くんがチュートリアルの徳井さん…これは…すごい人選ですね。びっくりです。もうちょっと若い子のイメージだったんですが…。10年前だったとしても。
あとは、原作とは設定が違う箇所があったみたいで、ゆう子がバツイチ子持ちだったり、絵本作家としても活躍していたみたいです。拓也くんの両親のキャストが Wikipedia には書かれていなかったので、あの辺りの話はざっくりなかったってことですかね。
経緯としておもしろいなと思ったのが、土地家屋調査士の団体である『日本土地家屋調査士会連合会』が、『土地家屋調査士制度発足60周年記念事業』としてのアイデアを募集したときに「『境界殺人』の映像化」という提案があってドラマ化が実現した、というところ。なかなかおもしろい提案もあるもんですねぇ。団体のイメージアップに寄与したかは知りませんが、少なくとも知名度アップには貢献したでしょうね! 事実、私も原作小説読むまでは知らなかったわけですからねー。
Kindle Unlimited で読みました。
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