半落ち

横山秀夫さんの『半落ち』を読みました。
横山さんの小説は『第三の時効』以来です。

第三の時効
横山秀夫さんの『第三の時効』を読みました。横山さんの小説は『クライマーズ・ハイ』以来です。定期的に横山秀夫さんの作品が読みたくなります。骨太な警察小説を欲するんでしょうか。というわけで、評判が高かったこちらの作品を読みました。6つの短編が入…

横山秀夫さんといえば『半落ち』、と第一想起に出てくるくらい有名な作品だと思います。
寺尾聰さん主演で映画化されたのも覚えていました。
なんですが、実はちゃんと全部読んだことがなかったんですよね。
そして映画もちゃんと見たことがないんです。
先日から横山秀夫さんの作品を読み始めているんですが、「『半落ち』をちゃんと読んでみたいな」と思ったところからでした。
(じゃぁなんで最初に『半落ち』を読まなかったのかは、私にもわかりません)
映画の主人公である寺尾聰さんで、主人公の梶さんを想像して読みました。

途中で『ベルトコンベアー』という言葉が出てきます。
犯人が逮捕されて、身柄を勾留されて取り調べを受け、検察で引き渡されて、裁判にかけられて、刑務所に入れられる。
その流れを揶揄した言葉でした。
今まで思ったことはなかったんですけど、確かにこの小説での梶さんの流れを見ていたら、「言いえて妙だな」と思ってしまいました。
被告人が何も言わないでいれば、こうやって最後までベルトコンベアーに乗せられたかのごとく終点まで連れて行かれちゃうんですね。
今回については、それが梶さんの望みでもあったわけですし、一応本人の犯行であるというのは覆りようのない事実だったわけなので、それが悪かったわけじゃないです。
本人も「情状酌量なんかはいらない」と思っていたんでしょうから、まったく文句もなかったと思います。
でも、彼を助けたいと思っている人もいたわけですし、ある意味で犯行は仕方なかった思える部分もあったので、もう少し刑を軽くしてあげてほしかったとは思いました。
でもねー…例の『空白の2日間』が明らかになれば、それで嫌な思いをしてしまう可能性がある人がいる、というわけですもんね。
自分にとって最後の砦となっている『その人』を守りたい、と思う気持ちも伝わってきました。

物語は6章立てになっていて、主人公である梶さんの視点ではなく、章ごとに変わる別々の語り部の視点から梶さんを映していました。
自主したあとで取り調べを担当した刑事から始まり、その後に担当した検事、この事件の新聞記者、梶さんの担当の弁護士、裁判を担当した裁判官、そして刑務官。
それぞれの人がそれぞれの立場から梶さんを見て、梶さんと関わっていきます。
梶さんの心の底にある真っ直ぐな信念と強い決意に触れて、彼の人となりに興味を覚えて、彼に好意を持ち、なんとかして彼を助けたいと思うようになります。
…梶さんはきっと本当にいい警察官で、それまでもいろんな人に好かれてきたんでしょうね。
もちろん、今回やってしまったことはいけないことではあるんですけど。

「50歳になったら自殺するかも」の意味がわからなくて、しばらく混乱していました。
今回の大きなポイントが『骨髄バンクでのドナー登録』でした。
で、自分の中ですっぽ抜けていたのが、『適合してから改めて骨髄を採取する必要がある』ということです。
例えば『精子バンク』のように、『先に採取して保管しておけるもの』ではないから、適合者が出た場合に備えて『生きて』いなければいけない、ということなんですよね?
そのことを思いつけなかったので、「どうして待つ必要があるの? もちろん生きていてはほしいけど、今すぐだとなにか不都合があるの?」となってしまっていました。
お恥ずかしい。

で、単純に疑問だったのが、「受刑者がドナー適合者になった場合、採取することはできるのか?」ということです。
今の時代、いろんなことを教えてくれる Gemini さんがいるので聞いてみたところ、「大丈夫、そして過去にそういう事例もある」とのこと。
すごいなー。
一時的に刑の執行を停止して釈放する、もしくは護送という形で外部の病院につれていくことができるんだそうです。
ただ、実際に過去にこういう例はあるものの、「いつのことなのか」「どこであったのか」ははっきり断定できないようになっているらしいです。
それは今回の小説の内容とも合致していて、ドナーとレシピエントの個人情報の保護のため、だそう。
要するに、厳密に報道されてしまうと、「自分のドナーが例の受刑者だったのでは」と思ってしまい、いろんな意味でレシピエントの負荷になる可能性がある、ということですね。
まぁ、気にする人は気にしそうなことですからね。

横山さんの代表作の一つであるこの『半落ち』ですが、重厚で濃密な物語でした。
本当におもしろかったです、大満足でした。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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