葉真中顕さんの『凍てつく太陽』を読みました。
葉真中さんの小説は『W 県警の悲劇』以来です。
前回の『W 県警の悲劇』は、そのあと夏樹静子さんの『W の悲劇』を読むきっかけになりました。
こうやっていろいろ広がっていくのは嬉しいことです。
今度、エラリー・クイーンの『X の悲劇』から始まる悲劇シリーズ(っていうの?)も読んでみたいと思います。
今回の『凍てつく太陽』は、本当に本当に大作でした。
解説にも書いてありましたが、いろんな要素がぎゅっと詰め込まれるエンタテイメント小説でしたけど、本当にいろいろ考えさせられる話でした。
初めに感じたのは、三浦綾子さんの『銃口』にちょっと似ているな、というもの。
今回の小説の主人公は警察官ですが、『銃口』の方では先生でした。
同じ公務員的な感じの職業についているからなのか、二人とも「正しくあろう」という気持ちや愛国心がとても強くて、なんとなく共通しているなぁと思いました。
しかも、どちらも、何と言うか陥れられて逃奔されるような感じの話でした。
網走刑務所で前年に白鳥由栄が脱獄しているという設定で、今回は3人で脱獄を企てて見事成功しましたねー。
白鳥由栄の話は、以前吉村昭さんの『破獄』という小説を読んだことがあったので知っていましたし、大昔『知ってるつもり?!』的なテレビ番組で白鳥由栄の特集を見て、子供心にいろいろ思うところがありました。
最近ですと、映画化・ドラマ化されている『ゴールデンカムイ』ですかね。
白石くんの元になったのが白鳥由栄だったように記憶しています。
同じ『脱獄王』ですしね。
網走からの脱獄劇もなかなかの見ものでした。
本当に驚いたのが、真犯人がまさかの人物だったというところです…。
私としては、まったくのノーマークだったので、本当にびっくりしました。
そうかー。ガダルカナル島で一緒だったのか…と感慨深く思ったものの、本当に畔木さんはその遺志を継いで欲しいと思っていたのか…? というのはとても疑問に思いました。
結局、ウラン爆弾はなかったわけですし…なんか悲しい感じもしましたね…。
最後は2人の遺体が見つかりましたが、本当にそれは『2人』のものなんでしょうか…?
生きていてほしいという気持ちもあるし、安らかに眠って欲しいという気持ちもあります。
作品内にも、まったく同じことが書かれていましたね…。
最後の最後で、三影の兄嫁とその娘が陵辱されそうになっていたところがありました。
そのシーンは、『同志少女よ、敵を撃て』の最後のシーンを彷彿とさせました。
『同志少女よ、敵を撃て』のそのシーンは、物語の根幹に関わるようなシーンでした。
人間って残酷だな、って思ったのを覚えています。
今回も、まったく同じことを思いました。
でも、やっぱり八尋が止めに入ってくれてよかったな、と思います。
本当によかった、本当に。
解説にも書いてありましたが、『ゴールデンカムイ』を読んでいたおかげで、アイヌ関連の言葉もなんとなく想像がついてよかったです。
同じく解説には、同じ2018年に発売された沖縄を舞台とした『宝島』という小説もあると書かれていたので、機会があったら読んでみたいと思いました。
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