中山七里さんの『作家刑事毒島の暴言』を読みました。
中山さんの小説は『連続殺人鬼カエル男 完結編』以来です。
『作家刑事毒島シリーズ』の最新作です。
前回の『作家刑事毒島の嘲笑』は長編だったので、今回も最後で全部繋がる感じの連作短編集かな、と思って読んでいたんですが、普通の短編集(?)だったようです。
今回は5つの話が入っていました。
まー、相変わらずの毒島節。
スカッとするような、やりすぎているような…という感じですね(笑)。
最初は『予選を突破できません』。
いやぁ…なんか、聞いていて…何と言うか、恥ずかしいというか…何と言うか。
本当に毎回毎回、中山先生上手だな…と思ってしまいます。
こういうの、『共感性羞恥』ではなく『他者羞恥』というらしいですね。
ChatGPT に教えてもらいました(笑)。
登場人物が恥ずかしがっているのを読者・視聴者も一緒に感じてしまうのが『共感性羞恥』。
登場人物は特に恥ずかしがっていないんだけど、読者・視聴者が勝手にシチュエーションに恥ずかしがってしまうのが『他者羞恥』ということですかね。
容疑者は、「まぁなんとなくだけど、この人が犯人だろうな」と目星をつけていた人でした。
確かに最後毒島さんが言っていた通り、何のひねりもなくプロットも甘いというのには同意しますけど…。
最初、連作短編集だと思っていたので「これが伏線になるのか…!?」と思っていたんですが、そうではなかったみたいです(笑)。
2つ目は『書籍化はデビューではありません』。
何とも皮肉なタイトルですね…。
最近殊に増えている『なろう系小説』などのジャンルについて、でした。
もちろん、そこから切り出されてめちゃくちゃ売れている『薬屋のひとりごと』とか『本好きの下剋上』のような作品もあります。
これらは完全に一大コンテンツとして認識されていますし、他にもそういう作品はたくさんありますよね。
でも、そうじゃないのも…きっとたくさんあるんでしょうね…。
毒島さんも言っていましたが、お金出して読むのとタダで読むのとでは読者の心持ちも全然違ってくるわけですし、今回の事件に関しては誰も損はしていない…ですね。
まぁ、「命をかけるまで、だったのか?」という思いはものすごくありますが、誰かに強要されたわけでもないんですよね…。
犯罪としては微妙なライン、でしょうか。
結局実行したのは本人ですし、結局話題性から部数につながるんでしょうし、担当もウハウハでしょうね。
ここを読んでいたときは、まだ連作短編集だと思っていたので(笑)、先日読んだ『殺戮の狂詩曲』のように「実は書き込みの人が真犯人で、最後まで引っ張るのでは…!?」なんて思っていたんですが…。
考えすぎだったようです(笑)。
3つ目は『書評家の仕事がありません』。
書評家 VS 読書系 YouTuber の戦い、そこから殺人に発展してしまったという話でした。
でもまぁ、難しいですね。
何と言うか、別にその YouTuber うんぬん、書評うんぬんという世界じゃなくても、普通に会社勤めをしていても、やっぱり最初の3年ぐらいは新人っぽい感じで扱ってくれます。
私の場合は、最初の会社の7年目で1回転職して、ベンチャーっぽい若い会社に再就職したんです。
そこでは若い子が毎年毎月いっぱい入ってくるので、気がついたら中堅どころ、みたいなかんじでした。
自分もその会社に入って、まだ1年も経っていないのに…と思っていたのを思い出しましたねー。
あと、毒島さんの最後の言葉「小説家は書評家がいなくても仕事があるけど、書評家は小説家がいないと書評が書けない」。
これは確かになるほどな、と思いました…。
しかし、「警察と犯罪者の関係」って、なかなかすごい言い回しですね…。
そもそも『書評家』という人がいること自体はもちろん知っていましたが、どのようにして書評家になるのかはまったく知らなかったです。
『書評家』としてデビューするという流れがおもしろかったですね。
まぁ、今の時代ですと、「YouTuber が発掘した本が大ヒットする」というのはよく見るようになりました。
私自身も「話題になってるから読もう」と思っちゃいます。
誰も損をしていないですし、素敵な宣伝方法だなと思っていましたけど、なるほどこういう見方もあるのか、と思いました。
小説などの最後に書いてある解説は、内容を深堀りしてくれたり著者の近況や時代背景なんかを教えてくれるので、毎回毎回とても楽しく読んでいます。
そして、言われてみれば確かに、その一作だけ読んで書いたような解説って…まぁほとんどないですよね…。
その著者の今までの経歴、ちょっと前に書いた本の内容、諸々のエピソード。
毎回読み応えがあって大好きなんですが、大変な仕事なんだなと改めて思いました。
もちろん、軽快な語り口で感情たっぷりに身振り手振りも交えながら伝えられる YouTuber はとても目立つので、登録数や労力やらいろいろ比較すると悲しくなっちゃうかもしれないですが…。
きちんとした解説が書ける書評家だったのであれば、とっても惜しい人材をなくしてしまったかもしれないですね。
4つ目は『文学賞が獲れません』。
まず、『文庫書き下ろし』という存在が、作家さんにとってはそういう位置づけだというのに驚きました。
読者である自分は何とも感じていなかったんですけど、言われてみればそうなんだなーと。
「初めから文庫で出してくれてありがたいな」なんて思っていたんですけどね…。
今回の犯人は最後の最後で明らかになるんですが、そこで毒島さんが「あなたと同じ体型をしていたんです」という言葉を犯人にかけるシーンがありました。
その『体型』というのがよくわからなくて、この章だけもう1回読んだんですが、結局『体型』に関わる記述が見当たらなくて、「よくわからないな」というのが印象でした。
なんか、すごく太ってたとか、そういうことなんでしょうか?
名前的にそういう想像を…してしまわなくもないような感じなんですけど…。
同じ名前の方に申し訳ないですかね…会ったことはないですけど。
ただ単に、「体型がおんなじだった」と、サラッと流していいことですかね。
まぁ、どこの業界にも、自分の立場を利用して弱い立場の人をいたぶったり虐げたりする人はいますよね。
ただ、毒島さんも言っていましたが、「その人の人間性と、その人が書く小説とはまた別のもの」というのは、ある意味救いではありますよねー…。
たまに、作家さんの嫌な噂とかを読んだりしてしまって、ちょっと悲しい気持ちになったりすることもありますけど…「別なんだ」と思えば変に嫌いにならなくて済みますね。
賞レースというのはどこの業界でも大変ですね。
確かに、いつできなくなるかわからない、だからこそ確固たるものが欲しい、と思うのは理解できます。
だからといって『ずるっこ』は良くないですけどね。
最後の最後、毒島さんが献花する様子が、毒島さん流の弔い方でした。
ちょっとジーンとしてしまいました。
高千穂さんが隠れたのも、なんとなく分かるような気がします。
最後は『この世に神様はいません』。
いやー、やっぱりこの手の『宗教本』の怪しさといったらすごいですね。
以前読んだ中山さんの『笑えシャイロック』で初めてこの手の話を読んで、本当に驚いたのを思い出しました。
そして、その後に『ふたたび嗤う淑女』でも同様の手口が出てきました。
確か、共通の人物が出ていたはずです。
時系列的には『笑えシャイロック』よりも『ふたたび嗤う淑女』の方が後だったような。
今回の話では、それとは違う宗教の話だったんですけど、まーどこでも同じような感じなんだろうなー…。
しかし、今回はこの『覆面作家』が被害者になるだろうと予想していたので、違う人が殺されてびっくりしました(笑)。
覆面作家はきっとこの宗教の『何か』に『消される』んだろうな…と思っていただけに。
しかも、最後の『種明かし』が、なんだか既視感があって…。
なんかこの間、こういう内輪もめっぽい感じの話、出ていましたよね…。
いやぁ…怖いわ…。
中山さんは、どのシリーズでもいろんなネタをビシビシ入れてくれるんですが、いつも「大丈夫かな…『消され』ないかな…」と勝手に心配になってしまいます。
とても好きな作家さんなので、末永く作品を出してほしいんですけど…。
是非とも健康で長生きしていただきたいです…。
この『作家刑事毒島シリーズ』は、比較的軽快な感じの割にいろんなネタが見られるので、とても好きなシリーズです。
ぜひとも続編をお願いしたいです。
Kindle Unlimited で読みました。
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