人はどう死ぬのか

読んだ本

久坂部羊さんの『人はどう死ぬのか』を読みました。
久坂部さんの本は初めてです。

タイトルはなんかちょっと怖い感じで、以前読んだ上野先生の本みたいな感じなのかなと思ったんですが、ちょっと違いました。

ヒトは、こんなことで死んでしまうのか
上野正彦さんの『ヒトは、こんなことで死んでしまうのか』を読みました。上野先生の本は、ここに書くのは初めてなんですが、2022年末~2023年初ころにかけて3冊読んでいました。『アンナチュラル』『法医学教室の事件ファイル』『きらきらひかる(ド...

フォーカスされていたのは『死んだ時の状態』『死んだ後の状態』ではなく、『死ぬまでの状態』だった、というか。
ちょっとの違いが大きな違いですねー。

内容はとてもおもしろく、興味深く読むことができました。
著者の久坂部さんは医師でもあり小説家でもあるという経歴の持ち主で、今まで医療系の推理小説たくさん書かれていたそうです。
『死』を必要以上に神格化するわけではなく、ある程度距離を置きつつも忌避しないというスタイルがすごくいいと思いました。

印象的だった言葉は『死は誰も練習することができない』というもの。
確かに、誰にでも必ず訪れるものであるのにも関わらず、経験者から話を聞くこともできないし、練習をしてみて本番に備えるということもできないですね。
ただひたすら考え続けて、どういう風に『死』を迎えるかは自分の中でシミュレーションするしかないというのが、なんというか辛いところですね…。
大半の人がどうしても避けてしまいがちなこの話題、必要以上に避けてしまうと自分のためにもならないということがよくわかるります。
もちろん、取り憑かれたかのようにずっとそのことばっかり考えているのは不健康ですし、メンタル的に良くないとは思います。
でも、ある程度考えておかないと、自分がどのような形で最期を迎えたいのか、イメージが湧かないうちに死を迎えることになってしまいます。
必要でもない延命措置が繰り返されるようなことを避けたいのであれば、やっぱりちゃんと1回は考えるっていうのが大事なんだなとよくわかりました。

『癌で死ぬということは意外と幸せ』というのは、前に読んだ和田秀樹先生の本にも書いてあったなと思い出しました。

医者という病
和田秀樹さんの『医者という病』を読みました。和田先生の本は『「音楽する」は脳に効く 弾く・聴く・歌うで一生アタマは進化する』以来です。お医者さんは頭が良くて人格者で…と幼い頃から思っていました。医学部は6年間もあるから、その中で『ヤバイ奴』...

そして今回この本を読んで、私もその言葉にすごく共感できるなと改めて思いました。
ある程度の死期が分かりつつ、ゆっくりそこに向かっていき、穏やかに進むためのの手段もたくさん確立されていて、それまでの間に自分でやりたいことがちゃんとできる。
それはすごくいいなと思いました。
血管系の病気だと、急に発症して、ものすごい痛みを感じて、卒倒してそのまま死ぬ、みたいになってしまうので、それはやっぱり怖いなって…。
「ピンピンコロリ」というのは理想ではあるけれども、本人には多分とっても苦痛なんだろうし、しかもそうであることを誰も証言してくれないわけだし…。

尊厳死や安楽死についてもたくさん書かれていました。
まぁ、難しい問題だなと思います。
益田先生が、「安楽死を簡単に認めてしまうと、第三者から強要されて安楽死を選んでしまうパターンとか、犯罪に利用されるパターンが出てきてしまうから、本当に慎重にならないといけない」とおっしゃっていました。
それもそうだと思います。
でも、生きていることが本当につらい人もいるんですよね。
難しい問題です。

医療現場でいろいろな死を見てきた久坂部先生は、「胃ろうにされてチューブをたくさん繋がれて、本人がこのような状態で生きていたいと到底思えないような状態で生かされ続けているのが、とてもかわいそうだと思うことがある」と。
そして、「そうならないためには、病院に行かないというのが一番」と書かれていました。
お医者さんなのに…でも、なんだか皮肉ですけど、なるほどなと思ってしまいましたね。
最期がきても救急に電話しないという『忍耐力』みたいなものが求められるんだなと。
だから、それまでの間にも死を受容することを、自分だけでもなく周りの人にもお願いして、救急車を呼ばない『忍耐力』を付けてもらうしかないそうです。
きっと家族とか近しい人は、苦しんでいる本人を見たら救急に電話してしまいますからね…。
説得しておかなければ、そういう『自分の理想の死』というのは叶えられないんだなと思いました。

身近なところですと、私が通っている歯医者の先生が、癌を治療しないで共生していくという選択をしたそうです。
初めて聞いたときはとても驚きました。
聞いたばかりの時は「治さないんだ…」と衝撃で。
まだそんなにお歳なわけでもないのにそういう選択するのか、とショックでもあったんですが、この本や和田先生の本などを読んだ今では、そういう選択もありだなって思います。
もちろん、そこにたどり着くまではいろいろな葛藤があったでしょうしね…。
ひょっとしたら今でも納得してないかもしれないし、奥さんや娘さんは本心ではどう思っているかわかりませんけど、でもすごい決意をしたんだなと、今は思っています。

私まだ40代だから、まだまだ先…だと思いたい気持ちがありますが、一応もう半分の折り返し地点にはたどり着いてしまったかもしれないんですよね。
なので、自分の理想の『死』というものを、少し深く考えてみるきっかけになった本でした。
読んで本当によかったです。

Kindle Unlimited で読みました。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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