二人の誘拐者

読んだ本

翔田寛さんの『二人の誘拐者』を読みました。
翔田さんの小説は『知能犯』以来です。

今回の『二人の誘拐者』は、以前読んだ『真犯人』『人さらい』に続く『日下警部補シリーズ』でした。

この2作の共通点は、『誘拐』がストーリーのメインになっているということです。
今回も、タイトル通り『誘拐』事件が発生します。

読み終えて真っ先に思ったことは、「犯罪からは何も生まれないな」ということでした。
甥っ子を息子のようにかわいがっていて、命に関わる病気に罹患していて、どうしても死んでほしくなくて、そしてお金は十分にある。
そういう立場だったら、こんな方法を取ってしまうかもしれない、という気持ちは…わからなくはないです。
でもねー…結局最後はすべてを失ってしまいました。
自分の地位も名誉も、大切に育ててきた職も。
大事に思っていた甥も、その結果職を失うことになってしまいました。
ひょっとしたら、孫(甥の娘)からも、この先生きている限り蔑まれるかもしれないです。
結局は何もかもなくなってしまったんですよね。
10年前に、小さな女の子が一人、つらい思いをしながら死んでいった、というだけになってしまいました。

今回のもう1つのテーマは『臓器移植』でした。
『臓器移植』、金田一少年の事件簿でいえば『金田一少年の殺人』ですね。
以前読んだ本でいえば、『仮面病棟』や『死の臓器』シリーズでしょうか。

今回誘拐されたて亡くなってしまった女の子の父親は医師でした。
娘を失ってからは、移植医療に命を捧げるかのように打ち込んで、レシピエントやその家族からたくさんの感謝の言葉をもらって生きる気力にしてきたとのことでした。
それはとても素晴らしいことですし、彼のおかげで命を救われた人もたくさんいたわけですから、本当に感謝してもしきれないことだと思います。
でも、失った娘さんは返ってこないんですよね…。
まだ幼かった娘さん。
私立中学受験をしようと勉強して、急な移植に対応すべく外出もほとんどせず、一生懸命生きていた12歳の女の子が、死んでいい理由なんてありませんでした。
しかも、とても苦しんだのかもしれないんですよね…。

私が高校生くらいのとき、2時間ドラマ系だったと思うんですけど、今回に類似したケースのドラマを見ました。
犯人の女性(多分)が、誰か成人男性を山小屋のようなところに監禁していて、その女性が食料か何かを買いに行ったときに交通事故で死んでしまって、監禁されていた男性も結局少しずつ弱るようにして死んでしまう、みたいな話だったような気がします。
少しずつ弱って、お腹が空いて空いて…そして死んでしまうなんて。
ものすごい恐怖を感じたのを覚えています。
そのような思いを味わわされたこの子は、本当につらかったでしょうね…。
しかも、『黒幕』はその事実を知っていて目を背けたわけです。
匿名での電話とか投書とか、なんとかしようがなかったんでしょうか。
その人物の職業からいっても、信じられないような鬼畜の所業だと思いました。
ギリギリまで犯行を認めようとしなかったという点からも、その罪にふさわしい量刑を望むばかりです。

死んでしまった女性は、もちろん許されないことをしてしまったんですが…自分が同じような境遇になってしまったら『それ』を選ばないという自信はないですね…。
結局、罪の意識に苛まれた結果、一番知られてはいけない人物に漏れてしまいました。
それも『運命のいたずら』的な感じですね。
『せん妄状態』について、知識としては知っていたものの、なるほどここでか…と驚きました。
多分、知らされてしまった本人もひどく驚いたでしょうね。

誘拐された女の子の父親に情報を漏らしてしまった人物の行いも、痛いほどわかります。
10年もの間ずっと苦しんできたわけで、それを考えたら状況を教えてあげたくなってしまうよな、と。
もちろん、職業的にも許されない行為ではありました。
まぁ、ギリギリ『証拠』がなくて、自主的に退職したので、これからは心機一転家業に専念してほしいですね。
私は今のところ警察のお世話になったことがないんですけど(多分)、ドラマとかで刑事さんが詳しく状況を教えてくれないのは、こういう事態を想定してのことなんですね。
難しいですね。

話の流れとしては、以前読んだ『64』に似ているな、と思いました。

やられたことをやり返す、ではないですけど、当事者にならないと本当の苦しみはわからないのかもしれません。
それに近い思いを、少しでも味わわせてやりたい、と思うのは当然なのかな、と思いました。
こちらは、それにさらに臓器移植という問題も絡められていたので、とてもおもしろく(というとちょっと不謹慎な気もしますが…)読みました。

タイトルの『二人の誘拐者』というのは、最初の誘拐の犯人と、後の誘拐の犯人の二人を指す、ということでいいんでしょうかね?
後の誘拐犯は、対象児をどうにかしてやろうなんて気は持っていなかったので、あまり同列に置きたくない気もしますが…。
裁判ではどの程度の刑になるんでしょうかね。
結局、『犯罪』にしてしまうと、同じ土俵に立たされてしまうんでしょうかね。
そういう点でも、やっぱり何も生まれないですね。

Audible で読みました。

[AD]二人の誘拐者
[AD]Audible
さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

さちこをフォローする
読んだ本
シェアする
さちこをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました