宿野かほるさんの『ルビンの壺が割れた』を読みました。
宿野さんの小説は初めてです。
この小説も、Kindle のおすすめ欄にずっと表示されていたものでした。
まー、ずっと表示されているんだったら読んでみようかな…と思ったわけです。
ちょろいかなー私…まぁ、おもしろかったからいいんです。
『書簡体小説』ということですかね。
いわゆる、手紙だけで物語が進んでいく形式です。
ただ、手紙といっても『紙の手紙』ではなく、Facebook のメッセージ機能だとのことです。
Facebook って使ったことがないのでよく知らないんですが…『現代』って感じですね。
始めは男性から女性にメッセージが送られます。
ずっと昔付き合ってた女性の Facebook のページをたまたま見つけた、みたいな感じで、「懐かしかったので」とメッセージが送られます。
一通・二通送って返事がなくて、三通目を送ったあとで女性から返事がきて、そこから2人のやり取りがスタートします。
ただ、男性の方がなんだか妙にグイグイくるというか、「こいつまだ未練があるのかな…?」とちょっと匂わせるような感じです。
二人の年齢がは50歳過ぎみたいなので、何と言うか「若い時のような勢いはないけど、昔懐かしさで」というメッセージなんですが…。
その中にも、なんかこう、『ねっちょり』とした粘り気みたいなものが感じられて、「ちょっと気持ちが悪いな…」と思いながら読みました。
メッセージのやり取りは、とりあえず敬語・丁寧語っぽい感じで進んではいます。
ただ、「この男、なんかモラハラ気質だなー」みたいな片鱗がちらほら見えてきて、そこがまた不気味さを醸し出している感じです。
進んでいくに従って、2人がどういう付き合いだったかが明らかになっていきます。
どうやらこの女性が結婚式直前に逃亡して、そこから行方不明になったこと。
それから20~30年会っていなかったこと。
女性の方は、もうすでに別の人と結婚して、子供もいるということ。
男性はいまだ独身、人寂しい感じな様子。
さらにガンも見つかったりして、ちょっと不安定な感じになっている、みたいな。
ストーリーもどんどん進んでいくんですが、相変わらず男性の方が気持ち悪い感じがして、とてもじゃないけど「ほほえましい」という気にはなれないで読んでいました。
…その原因が、ようやく最後の最後でわかります。
なるほどスッキリはするんですが、やっぱり「気持ち悪いなぁ」っていう感じです…。
まーーー、こういう『病的な』方っていうのは、やっぱり同年代の女性に痛い目に遭わされた人が多いのかなーって思ってしまいます…。
もちろんそうじゃない人もいるのかもしれないですが。
女性の方に落ち度は…まぁ、強いて言えば『バイト先』を明らかにしていなかったところに非があるのかな、とは思いますが…。
彼女も割り切っていましたし。
まぁ、その職業柄『スポーツ感覚』に陥るのもわからないでもないような気がします。
別に罪を犯していたわけではないので、彼女にはそんなに非はないですよね。
ただ、男の方がな。
もろに犯罪やってるしな。
なんだかなーっていう感じです。
圧倒的にこの男が悪いよ。
いろいろ歪みまくっていました。
一番最後のページで「まさに」と、ちょっとスカッとした感じなりました(笑)。
あとがきには「ミステリーではない」と書いてありました。
確かに『ミステリー』ではないのかも知れませんが、なんかだんだん霧が晴れていって、どういうことなのかが明らかになっていく様は、とてもおもしろかったです。
Amazon のレビューではそこまで評価は高くないみたいですが、「おもしろい」と言ってる人と「そうでもない」と言ってる人の両極端に分かれる感じですかね。
だから平均するとそんなに高くない、みたいな。
私はかなり好きでした。
やっぱり Kindle のおすすめはいいところ突いてくる、って感じですかねー。
作者の宿野さんは、似たような表紙で『はるか』という小説も出されているようです。
こっちも…読むか…まーそうなるよな…。
どうやら覆面作家さんとのことで…。
まだ2作しか出されていないようなんですが、これからも楽しみですねー。
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