モロッコ水晶の謎

読んだ本

有栖川有栖さんの『モロッコ水晶の謎』を読みました。
先日の『スイス時計の謎』と同じ『<国名シリーズ>』です。

9冊合本版のラストです。
悲しい…。
今回も短編集、全部で4つの話が入っていました。

1つ目は『助教授の身代金』。
『金田一少年の事件簿』の、『速水玲香誘拐殺人事件』かと思いきや『タロット山荘殺人事件』だった的な話。
確かに、玲香ちゃんの誘拐のときも、金田一くんに無理難題言ってがんばらせたあげく、身代金の受け渡しは失敗でした。
でも、実はそれこそが犯人の思惑だった…という流れでした。
今回の場合、最初の殺人犯はびっくりしたでしょうね…。
まさか誘拐犯が別にいて、身代金を要求してくるとは思っていなかったでしょうから。
さすがの火村先生も、誘拐事件だったの出張って行くこともできなかったですねー。
なににしても、誘拐犯の方はかなり悪趣味だったな、と。
『<国名シリーズ>』もずいぶん読んできて、最初は誰も携帯電話なんて持っていない状態だったにも関わらず、この時点では「ここまで来たか~」という感想ですよ。
『犯人に告ぐ』じゃないですけど、日本では『誘拐ビジネス』はそんなに存在感があるわけじゃないので、このままそういう誘拐犯が蔓延っていない世の中のままで進んでいってほしいな、と思いますけどね~。
にしても、タイトルの『助教授の身代金』、絶対火村先生だと思うじゃないですか…。
ずるいなぁ(笑)。

2つ目は『ABCキラー』。
なんだかすっきりとしない結末だったように感じちゃいました。
リレー殺人の様相を呈していたのはおもしろかったんですけど、犯行声明的なものを誰が書いたのかわからないので、その人に踊らされてしまった感がちょっとありました。
それにしても、やっぱりアガサ・クリスティーの『ABC 殺人事件』というのは、みんながこぞってモチーフにしたがるぐらい素晴らしい小説なんですねー。
以前読んだ『そして誰もいなくなった』のように、『六枚のとんかつ』でも同じようなモチーフで書かれていました。

あとは、まぁちょっと毛色が違いますけど、『連続殺人鬼カエル男』なんかも、順番に殺害(一部フェイク)していく話でした。

今まで集合したことがない、大阪・神戸・京都の警察の方々が揃ったのも、なかなかおもしろかったですね。

3つ目は『推理合戦』。
たまにはこういう犯罪性のない短い話も、とってもいいと思いました。
急に出てきた推理で、なぜそれを当てられたのかを考えていくという話です。
『タネ』がわかれば「まぁなんてことない」という感じでしたが、アリスさんがまさか書きかけの推理小説の犯人を当てる、というシチュエーションもおもしろかったです。
犬に吠えられるのが嫌いだからと言って、そんな役割を与えなくてもいいのにー。
漫画家さんだったら人の顔をかき分けたり、小説家さんだったら人名考えたりと、本当に大変だろうなと思います。
『金田一少年の事件簿』のさとうふみや先生も、以前そんなこと言ってましたねー。
登場人物の名前に地名が多いのも、ひょっとしたらそういう理由なのかもしれないなーと思ったりもします。

最後は『モロッコ水晶の謎』。
表題作、そして合本版最終話です。
なんだかすごい話でした。
先日読んだ『死神の浮力』・『死神の精度』みたいな…?

そこで出てきた千葉さん的な「今日は、死なない」みたいな感じでしょうか…。
なんだかんだで、彼が一番占いを信じていた…っていうことになるんですかね。
怖いわー…。
若さゆえの大胆さ、と言っていいんでしょうかね…。
でも、自白がなければ結局逮捕できなかったかもしれない…のかな?
なんというか、不思議なはなし、というか、なんというか…。
最後の最後がこれですと、ちょっと不完全燃焼な感じがしちゃいます。
ただ、Amazon のレビューを見ると、大絶賛している人も「残念」と言っている人もいて、やっぱり好みって違うんだなーと改めて思いました。

『9冊合本版』、本当に贅沢な時間を過ごすことができました。
楽しかったです!

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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