伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』を読みました。
先日の『グラスホッパー』と同じ『殺し屋シリーズ』です。
いやー…。
今回もすんごい話でしたねー…。
前作の『グラスホッパー』も、展開が早いのとわけわかんないのですごかったんですけど、今回もめちゃくちゃ展開が早かったです。
舞台が東北新幹線の中、というのがまた良かったです。
最近ではそうでもないですが、前は年に3往復くらいは乗っていましたし、やっぱりよく知る車内なので想像しやすかったです。
『はやて』と『こまち』が連結されて、東京から盛岡まで行く新幹線の中。
本当は約5分後の次の駅『上野』で降りる予定だったのに…結局ズルズルと終点まで行ってしまう、不運な殺し屋が『天道虫』くんが主人公…でいいんでしょうか。
彼の本名(?)は七尾くんなんですが…ここは正直良くなかったんでしょうけど、この『殺し屋シリーズ』の特設のページを見てしまったんですよね。
殺し屋シリーズ最新作の『777 トリプルセブン』で主人公が七尾くんだったので…「彼は死なないんだな」と思って、ちょっと安心したんですよね…。
このシリーズ、本当に『GANTZ』並みにすぐ人が死ぬので…。
一方で『果物』という殺し屋2人組が出てきました。
『蜜柑』と『檸檬』です。
すごい名前だな、誰がつけたんだ。
それとはまた別の『木村』と『王子』という…2人組でもなんでもないんですけど、まぁある意味『ペア』が出てきました。
そして、その『王子』という中学生男子。
コイツが本当にムカつくヤツで。
「でも、なんだかんだ言ってのうのうと生きていくのかな…」なんて悲しく思っていたんですが…。
これは、彼は『始末された』ということでいいん…ですよね?
もう、本当に読んでる間中ずっとムカムカしていて。
彼はどうやら丹精な顔立ちをしていて、とてもかわいらしい素直そうな男の子の外見をしているようなので、それで大人はみんな騙されてしまうらしいんです。
どうも『庇護欲』をかき立てられるような存在のようで。
でも、実際は本当に、本当に極悪なヤツで、サイコパスといって差し支えないような性格です。
5歳の子供をデパートの屋上から突き落としたり、友人やその飼い犬に電極つけて電気流したり。
そんな非道な行いをしれっと普通の顔でやってしまうようなタイプの子供でした。
…難しいですよね。
大人って、自分が子供だったときにも結構凶悪なことを考えていたでしょうし、そのことも覚えているはずなのに、子供を見ると『純粋無垢』だと思いたがる、というか。
王子の場合、その外見もうまく作用していたようで、そうやっていろんな人を騙してきたみたいなんですよね。
今回王子の『ターゲット』となってしまった木村は、まーいわゆる『よからぬ仕事』、『裏稼業』をしていた人物ではあったんですが、最近はそちらからは足を洗って警備員なんかで生計を立てていたみたいです。
でも、先述した『デパートの屋上から突き落とされた子ども』が彼の息子でして。
一命はとりとめたものの、未だ意識不明。
そこで王子を殺しに来たところ、逆に手のひらで転がされてしまっている、という状況です。
メインとしてはこの『天道虫(七尾)』、『果物』2人組、『木村』と『王子』という感じで、それ以外の様々な『殺し屋』たちが巻き込まれていく、という流れでした。
そもそもそれぞれ(果物は本当のペアですが)違う目的のために動いていたはずなのに、なぜだかすべて一本につながっているような感じ、本当にすごいですよね…。
さらに、前作の主人公だった鈴木くんとか槿(あさがお)とかもちらっと出てきていました。
『殺し屋シリーズ』といっても、前作をまったく読んでなくても話は通じる感じです。
でも、やっぱり鈴木くんとか槿とかが出てくると、ちょっと知り合いに会ったかのような感じで嬉しくなっちゃいました。
前回は寺原というラスボス的な存在がいましたが(本当のラスボスではなかったけど)、今回は峰岸という男が同じようなポジションでした。
蜜柑と檸檬、それから天道虫に、それぞれ同じような仕事を頼んでいて、そのせいで新幹線の中がカオスでカオスで…。
『新幹線』という高速で移動している密室の中で、まず死体は5・6体でしょうか?
トイレに何体も押し込められ(生きている人もいたけど)、座席にも2体ほど座らせられていて、多目的室の中にも一体かー…。
ひどい新幹線だよ…。
しかも、途中から乗ってきた『老人夫婦』によって、さらに死体は増えまくってますね…。
具体的に何人なのか、もはやわからないです。
極めつけは、盛岡駅のホームでもたくさん死んでるし。
いやぁ、乗務員の人とか清掃係の人とか…阿鼻叫喚だったでしょうね…。
殺し屋の天道虫くんは、新幹線に乗っている間中ずっと自分の不運を嘆いていたんですが。
いやいやいや、こんな新幹線に乗って、生きて出られたということ自体、ものすごい幸運で強運ですよね!
ちょうど手に蛇が巻き付いたのも、席を離れるためのいい口実になりましたし。
…『口実』じゃなくて『事実』ですけど…。
そのシーンの静寂、一瞬「今頃になってアナフィラキシーショックが来たのか!?」と思ってびっくりしちゃったんですけど、そうじゃなくて良かったですよ。
いやー、私がこの新幹線に乗っていたら、『殺し屋』じゃなくても殺されてるんじゃないかな…と思ってしまいますわ。
今回、いわゆる『まったく関係のない一般の方々』は被害を受けなかった、ということで大丈夫だったんでしょうか…?
『殺し屋』の皆さんがお仕事を遂行されるのは構わないんですが、『こちら側の住人』には被害を及ぼさないでほしいな、というのが正直なところです。
今回、前回の主人公の鈴木くんも、一応『こちら側の住人』だったわけですからね。
この小説は、ハリウッドで作られた『ブレット・トレイン』という映画の原作にもなってるらしいです。
主演はブラッド・ピットさんだったとか。
まぁ確かに、『殺し屋シリーズ』トシテではなく、今回の部分だけ切り取ったとしても、かなりスリリングな展開で映画の題材には良かったのかもな、と思いました。
映画は見てないので、どういう出来だったのかは知らないですが。
やっぱり、最後王子がどうなったのかが本当に気になります。
例の殺し屋夫妻、『業界』ではかなり有名な人だったらしく、きちっと『仕事』をしてくれたんだろうな…と期待したいです。
そして、『木村のおじさん』が死んでなかったこと、息子が目を覚ましたこと、本当に良かったなと思いました。
まぁ、木村さんも悪いこといっぱいしてる人なんでしょうから、このまま幸せになるのはなー…と思うところはありますが、今はまぁ素直に喜びたいです。
蜜柑と檸檬は、すごくおもしろいコンビだったので…残念だなと思いました。
『きかんしゃトーマス』は、息子が小さかったころによく見ていたので、多分蜜柑よりは私のほうが詳しいと思いました(笑)。
いいキャラクターだったので、ね。
天道虫くんは…とりあえず『777 トリプルセブン』で再会できるのを楽しみにしておきます。
真莉亜ちゃんも、そこにいるのかな?
Audible で読みました。
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