ペルシャ猫の謎

読んだ本

有栖川有栖さんの『ペルシャ猫の謎』を読みました。
先日の『英国庭園の謎』と同じ『<国名シリーズ>』です。

今回も短編集。
7つの短編が入っていました。

最初は『切り裂きジャックを待ちながら』。
これはなんかすごく盛り上がりそうな感じしたのに、ちょっと肩透かしだったなという印象でした。
さらに、最後のあれは火村先生の失態じゃないかなと思ってしまうんだけど…コナンに怒られるんじゃないかな…。
なんか、これからいろいろこねくり回して盛り上がってきそうな感じだったのにー。
もったいないなって思ってしまいました。
結局犯人の動機は「被害者のことが好きで好きでたまらなかったから殺した」的な感じなんでしょうか?
もちろん、殺人をする人の心境なんて分かりたくもないですけど、異常ですよねぇ…。
殺しちゃったら、当然なんだけど死んじゃうわけじゃないですか。
もう会えなくなっちゃう。
なんとかいなしてそのまま現状維持、とはできなかったんでしょうか?
にしても、せっかくの舞台だったのになくなってしまって。
犯人以外は本当にかわいそうだなと思います。
以前読んだ『霧越邸殺人事件』、あれも劇団の人たちのお話でしたが、「自分の劇団だったら何をしてもいい」と思っちゃうものなんでしょうか…?

あと、『ロシア紅茶の謎』しかり、劇団の人たちっていうのはこういう三角関係四角関係みたいな恋愛でもつれてる印象なんですよねー。

実際はどうなんですかね。
…結局、やっぱりもったいないなっていう印象でした。

2つ目は『わらう月』。
女性の月に対する恐怖と、それにまつわる怪しく甘美な思い出が混ざり合って、ちょっと神秘的な感じがする話でした。
この女性は、結局どれぐらいの罪に問われることになるんでしょうか?
別に自ら進んでやったわけではないし、彼女が手を下したわけでもないんですけど、やっぱり何か罪に問われちゃったりするんでしょうね。
まさかこんなに簡単に見破られるとも思ってなかったんでしょうけど。
さすが火村先生、私だったらずっと気づかなかっただろうなと思います。
女性は、本当に何も疑わずに工作に協力してあげただけなんでしょうか?
「ひょっとしたら」ってもちろん思っていた…よね?
彼女にとって、『月』はこれからもずっと『怖いもの』としてつきまとってくるんでしょうね。
月なだけに。
…失礼しました。

3つ目は『暗号を撒く男』
いわゆる『メモリーパレス』というヤツですね。
なるほど、これは気づいたらすごいなと思いました。
なかなか合理的な暗記法をご存知の被害者だったようで…。
インターネットが発達した今だったら調べればわかりそうですけど、これをこの時代(1997年)に実践していたというのはなかなかすごいなと思いました。
立派なところに家持ちで、シュッとしたアラフォーの男性、とってももったいないかったような気がします。
鳴子のこけしが出てきてびっくりしました。
宮城県鳴子温泉の名産品がこけしなんですよね。
うちの実家(仙台)にすらないんですけど…よく手に入れたなぁ。
ハサミの代わりに、なんか代用になりそうな置き物にでもしておけば、殺されずにすんだかもしれないんですかねぇ。
朝井先生、アラフォーでいとこが高校卒業っていうのは、なかなか年が離れていますね!
従弟からしたら、マウンテンバイクなんてポンと買ってくれる小説家の従姉がいるんですもんねー。
うらやましい!

4つ目は『赤い帽子』。
はりきりボーイ森下くんの奮闘記。
火村先生もアリスさんも出てこなくて、なかなか異色作なのでは、と思いました。
私は警察小説が好きなので、こういう話もおもしろいなと思います。
やっぱり、警察は組織の力で少しずつ少しずつ証拠を積み重ねていくという手法なんだな、と改めて思いました。
とっても大変だし、根気がいるし、みんながみんなスポットライトが当たるわけじゃなくて、無駄になる仕事もすごくたくさんあるんでしょうけど、こういう人たちのおかげで毎日安全に暮らせてるんだなと思うと、本当に頭が下がる思いです。
最後はなんだかあやふやな感じで終わってしまったんですけど、結局森下くんの考えた通りの事件だった、ということでいいんでしょうか?
彼がアルマーニのスーツを常用してのも、こんな理由があったんだなーとしみじみ。
ひょっとしてこれが初出なんでしょうか?
順番通りに読んでいない弊害で、これが初めてなのかどうかがわからないというのが辛いところです。
連載された雑誌は、大阪府警内部でしか流通しない雑誌ということがすごいですね。
そんなところから仕事をいただけるってだけで本当に素晴らしいですし、それを逡巡しつつも引き受けた有栖川さんもすごいなと思いました。

5つ目は『悲劇的』。
火村先生とアリスさんの掛け合いがなくて、レポートの文だけだったので、なんだかショートショートのような感じの話でした。
この学生は、ちょっと心が不安定な状態になっていてとてもかわいそうだなと思います。
誰か近くに支えてくれる人がいるといいんですけど…。
そして、本当に世の中不公平というか、理不尽だなと思うことはたくさんありますよね。
とても悲しいです。
地球規模で見れば、人間なんて地球に住み着いた寄生虫的な存在に過ぎないんですから、どうでもいいことなんでしょうけどね。
自分の身の回りでそういうことが起きてしまうと、確かに無力感で苛まれるというか。
「なんでこんなひどい目に遭わなきゃいけないんだろう」って、悲しくなっちゃうかも知れないですね。
普段は「理不尽に慣れてはいけない、声を出さなければいけない」と思いますが、『あおざくら 防衛大学校物語』や『海猿』なんかでは理不尽が普通に起きてしまう世界なんですよね…。
話がそれました。
確かに、火村先生が付け足した部分だけを見ると、なかなかセンスがあるなと思ってしまいますが…。
この学生に見せたら、どうなんだろう…?
吹っ切れて回復するか、もっと病状が悪くなるか…。
まぁ、火村先生は精神科医やカウンセラーではないので、ね。

6つ目は表題作『ペルシャ猫の謎』。
なるほど、こういうちょっと『アンフェアぽい話』もたまにはあるんだなと。
確かに、そういう心の病でそういう風になることがある、という知識はあったものの、それを出されちゃうとなー…という思いも、なくはないです。
まぁ、いろいろと腑に落ちない点があるような気もするんですが。
あとは、これが『<国名シリーズ>』の1つに数えられてしまうというのはちょっと残念な気もしちゃいます。
館シリーズでいうところの『人形館の殺人』みたいな感じでしょうか…。
猫とのふれあいのシーンが結構良かっただけに。

最後は『猫と雨と助教授と』。
すごく短い話でした。
それはそれは猫が好きなんだろうな、というのがすごく伝わってきますね。
私は猫を飼ったことないので、生態とかはよくわからないですけど、言葉が通じないながらもそうやってすり寄ってきて、自分に対して愛情を持って接してくれている小動物がいたら、それはそれはかわいく思うんだろうな、と想像します。
実際に、有栖川先生の飼い猫に対する愛情がすごく伝わってきました。

今回のあとがきにあった『ミッドナイト・ドリーム・スペシャル 真冬の夜のミステリー』という番組、ものすごいお宝映像ですね…。
どこかで見られないかな…。
宮部みゆきさん、法月綸太郎さん、綾辻行人さん、有栖川有栖さんって、よだれが出そうです。
関西ローカルの番組だったそうなので…こっちでは絶望的かな…。
残念。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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