宮部みゆきさんの『ペテロの葬列』を読みました。
先日の『名もなき毒』の続刊です。
『杉村三郎シリーズ』問題の第3弾。
嫌な結末だけ覚えていたので、読み進めるのが結構つらかったです。
正直、『あの結末』に至るまでの内容はほとんど忘れていました。
バスジャックから始まり、セクハラパワハラ、殺人犯の逃亡、自殺、もう1回バスジャックからの死体探し、そして最後の最後で…。
なんだかとっても盛りだくさんで、そのうちの何個も新聞紙面に乗るような大事件だったので、さすが杉村さんは事件を慣れしてるなあ、という感じでしたね…。
にしても、菜穂子には本当にムカついてしまいます。
なーーにが「置いていかれているような気がする」だよ、なーーーにが「嫉妬している」だよ。
それだけ財力があるんだったら、夫を疑ってるんだったら、それこそ探偵でもつければよかったじゃないですか。
杉村さんから一方的に、本人が「いい」と言ったとはいえ、彼の今までの人生の何もかもを奪っておいて、それでこんな結末って本当にひどすぎます。
世間知らずのお嬢様って言われても仕方ないのに、実際言われているだろうに、考えることだけはいっちょ前。
知り合いだったら本当に好きになれないだろうと思いました。
…まぁ、住む世界が違いすぎて知り合いにはなれないでしょうけどね…。
「庇護されるのがいや」とか言うんだったら、本当に自分の力だけで生きてみればいいのに。
絶対無理でしょーよ。
『前野』さんと『間野』さんのことについても、ただの言い訳にしか聞こえませんでした。
そのことと彼女自身が犯した過ちと、どっちが先だったのか、彼女の言い訳の中からは判断つきませんでしたし。
やっぱり自分がやましいことしている人は、配偶者に対してもそうやって疑いの目でしか見られなくなるんだな、と。
『悪口は自己紹介』じゃないけど、そういうものの好例だなと思いました。
社長秘書の橋本さんも、まぁ「ふりまわされてしまった」という感じかもしれないけど。
それでも、もうちょっと考えたほうが良かったのでは…。
結局こういう結末になるってこと、想像できなかったんでしょうかねー…。
成就してもしなくても、今の生活は続けられないですもん。
すべてを捨てる価値があると思ったってことなのかな。
桃子の学園祭で橋本らしき人がいたっていうあのくだりは、結局何だったんでしょうか?
「まさか桃子は杉村さんの子じゃないとか…?」って一瞬思ったけど、それは違いますよね…?
「自分の愛する人の子供の学園祭に顔を出したかった」という感じだったんでしょうか?
杉村さんの『後釜』に入ること考えていたんでしょうか?
あとは今多会長。
杉村さんは確かに元社員ですけど、菜穂子は自分の娘なんだから、彼女のしでかしたことで夫婦が壊れたんだったら、ちゃんしたと謝罪くらいはするんじゃないんでしょうか…?
そりゃ娘はもう成人すぎているとはいえ、一言くらいちゃんと謝るでしょうよ。
いや、本文には載っていない舞台裏でしたかもしれませんけどね。
そこに違和感がありました。
社長だから、と言われたらそれまでですけど…。
でもまぁ、一番の犠牲者は娘の桃子かなとも思います。
彼女を自分の母親を反面教師にして、ちゃんとたくましく生きてほしいなと思うけど…無理かなー。
純粋培養されてるっぽい感じもありますし。
濡れ衣着せられた足立さんは不幸だったとしか言いようがない感じでしたし、高越の奥さん(仮)も不幸でしたね…。
子供、どうするんでしょうね。
産んだらちゃんと愛せるといいんですけど…。
事件は一応ちゃんと収束しましたけど、いろんな人の心にガッツリと傷を付けていきました。
『物語』として見ると、本当にたくさんのイベントがあって、それがちゃんとつながっていて大きくうねりながらもゴールに連れて行ってくれたので、いつもながらにすごい構成だな…と思います。
でも…この中の登場人物だったら…しんどいですねー…。
自分がどの登場人物だったとしても、この事件が人生のターニングポイントになったでしょうね。
園田編集長が過去に受講した『ST(センシティビティ・トレーニング)』、本当に恐ろしいものですね。
密室空間でのこういったやり取り、確かに自殺者が出てしまってもおかしくない状況になりそう。
『スタンフォード監獄実験』を想起しました。
あちらはランダムで決められた役割ですが、こっちははじめから役割が決まっている分、余計に効果があったんでしょうね。
これが今日の『自己啓発セミナー』につながっていると思うと、まだまだその連鎖が断ち切れていないことが伝わってきます。
もちろん、ちゃんと正しく人のためになる『自己啓発セミナー』は、たくさんあるんでしょうけど。
それにしても、前作から2年経っているとはいえ、『ゴンちゃん』の話題が全然なくてちょっとびっくり。
普通に卒業とともにやめたとかなんでしょうけど。
なんかこう、もうちょっと余韻というか、一応秋山さんとのパイプを作ってくれたし、いい働きをしてくれた人だったのになー。
まぁ、出版関係のバイトさんって、そんな扱いなんですかねー。
ドラマでは、菜穂子は国仲涼子さんでした。
国仲さんといえば『ちゅらさん』のえりぃだったので、そのイメージを壊されたくないなー…と思ったんですが。
でもきっと菜穂子の役も合っていたんだろうなぁと想像できてしまいます。
秘書の橋本さんが高橋一生さんだと知り、唸りましたね…。
なかなかの絶妙なキャスティングだと思いました。
すごいなぁ。
そして、Wikipedia に『小泉孝太郎はドラマ化にあたって宮部みゆきによって指名され、主演に起用された』とありました。
なるほどなー!
杉村さんの独特の雰囲気、宮部さんご本人のご指名とあってぴったりですね。
これで、杉村さんの『今多コンツェルン』時代は終わりです。
にしても、こういう続き物が出ている『ミステリー小説』で、主人公の職業だったり境遇だったりがこんなにがらっと変わってしまうようなものって、なかなかないんじゃないかなと思いました。
まぁ、全てのミステリー小説を読んだことあるわけじゃないのであまり大口は叩けないですけど。
『新宿鮫』で鮫島さんが晶と別れたのだってびっくりしたのに。
私はこの『ペテロの葬列』、発売日に単行本で購入して楽しみにしながら読んだんですが、内容にすごくムカついちゃって妹に本をあげてしまって、その先はずっと読んでいませんでした。
まさかこの続きがが出ると思ってなくて、しかも私立探偵になったと知ってとてもびっくりしました。
まあ、杉村さんはある意味夢を叶えたみたいなところはあるのかもしれませんね。
これからのびのびと仕事に精を出せればいいんだろうなとは思います。
いかんせん杉村さんは人が良すぎるから、探偵って仕事が向いてるのかな、とは思っちゃいますが。
ある意味、ここから先はすっきりした新しい気持ちで読めるような気がするので、せっかくだからちゃんと最後まで読もうと思っています。
残りは全部短編なんですよねー。
ちょっと寂しい気もします。
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