恒川光太郎さんの『ヘブンメイカー スタープレイヤー』を読みました。
先日の『スタープレイヤー』の続刊です。
『スタープレイヤー』と同じ素材のはずなのに、またガラッと全然違う話になっていて、本当にすごいなと思いますね…。
やっぱり、これがプロの作家さんということなんでしょうねー。
解説に書いてあったんですが、『恒川光太郎が流行りの『なろう系』を書いたらこうなる、みたいな感じ』、なるほどなぁと思いました。
『宮部みゆきさんみたいに自分の土俵から少しずつ登っていくのではなく、恒川さんはいきなり相手の土俵に行き、でもそこからは自分の世界ができるみたいな感じ』というようなことも、解説に書いてありました。
両方とも好きな作家さんですが、まさにそのとおりだなと思いました。
今回は主人公が二人いる感じです。
その二人の主人公の両方のパートを行ったり来たりしつつ、どこへ繋がるのかを楽しみにしながら読んでいました。
主人公の一人、逸輝の方は…まぁちょっと悲しい感じのお話でした。
彼が純粋すぎたのか、ちょっと愚かだったのかわからないけど、これぐらいの人のたくさんいると思いますし、彼は結果的にはすごくいいことをしたんじゃないのかなって思うんですけどね。
華屋さんが、まぁちょっと逸輝くんには合わなかったんでしょうかね。
初恋の女性だったから、二人で幸せになってほしいなとは思いましたが、まぁこういう終わり方もあるんだろうなー…と。
『青春の1ページ』みたいな感じでしょうか。
そこから先に進んでいくに連れて、なんかもうどんどんすごい肩書きがついてきて、弟子もどんどん増えてきて。
でも最後急にドロンといなくなったときに、なるほどこういう感じで『反乱』や『内乱』って起きてしまうんだなぁ、とすごくよくわかりました。
『人種』っていうのは、時には埋められない壁になるんですね…。
怖かったです。
日本にはほとんど日本人しかいなくて、普段『人種』というものを意識することがほとんどないんですけど。
その、今まで積み重なってきた恨みとかそういうものが、こういうときを機会にドカンと爆発してしまって、こういう大きな争いになるんですね。
しかも、それが『聖戦』なんですもんね…。
でも、そこで指導者的になってしまったの男の人を、『敵側の人種の幼い女の子』の姿に変えたっていうのは、なかなかすごい機転でしたね…。
殺害の指示を撤回せざるを得なくなります。
なかなかすごい解決方法だなと唸ってしまいました。
そして。
まさかの葉山くんが逸輝くんだったとは…。
はじめに登場してきたとき、なんか暴走族やってたみたいなことを言っていたので、正直あまり好きになれなかった人物でした。
というか、いつかこの人が変なことを起こすんじゃないかと思って、ずっと警戒しながら読んでいました。
…まさかこういう仕掛けだったとはねー!
『自分で少しずつ記憶を消していく』というのがおもしろいなぁと思いました。
前回のスタープレイヤーで出てきた『マキオ』が「まだ若いとき」って言っていたので、前回の小説『スタープレイヤー』よりももう少し前の話だということがわかります。
そして、前半でたまに出てきた『ヘブン』という言葉が、ここでの舞台になっていました。
いやーすごいですね。
やっぱり、スターボードを受け取ったばっかりのときに、なんかどうでもいい願いを叶えちゃって、後の方では願いの叶え方がどんどんダイナミックになっていくのは同じだなと思いましたが、まさかそんなに大きい建造物を建てて、1つの種族全部を囲おうとするなんて。
なかなか思いつけないですね…。
やっぱり『失恋』という大きな壁を乗り越えて、ある意味諦観の境地にたどり着けたのと、あと途中で奴隷として買ったレビがすごくいい人で、彼がさらに諦観を持っていたというところが、きっと逸輝くんの思考を変えたんだろうなと思いました。
死者を生き返らせるっていうのには賛否両論あると思います。
『でも不慮の事故で、本人に非がないのに死んでしまった』という条件で生き返れた人達っていうのは、きっと多くは嬉しかったんじゃないかなと思いますね。
たとえ、そこが地球じゃなかったとしても。
そして、まさか小学校時代の親友と、また親友になれるなんて。
すごい巡り合わせだなって思いました。
逸輝くんの最後の願い、『全員にスターボードを持たせる』っていうのは、なかなかおもしろいですね。
確かに、今みんなが持っているスマホ、全員で持った方が楽しいし、そうするべきですね。
そういうことに願いを使えるっていうのはすごいと思いました。
そして…本人は元の場所に戻った…っていうことでいいんでしょうか?
なんかやっぱり不思議な感じの話でした。
あと引く読後感ですね…。
最後の最後、30年ぐらい経った後の物語がちょこっとだけ書かれていました。
そこに出てきたのが夕月で、これまた『前回の主人公の登場』というなかなかのサプライズをいただけたなと思って読みました。
夕月は星を1個だけ残した状態での邂逅だったんでしょうか?
ヘブンに着いたららどうするのかなーって思いますね。
そこから先を想像するのも、またおもしろいです。
Kindle Unlimited で読みました。
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