森見登美彦さんの『シャーロック・ホームズの凱旋』を読みました。
森見さんの小説は『新釈 走れメロス 他四篇』以来です。
あれ、1年近くぶりでしたね…。

森見さんが描く『シャーロック・ホームズ』ということで、どんな話になるのかまったく想像がつきませんでした。
『凱旋』というワードが入っていたので、「ひょっとして続きものなのかな?」と思って調べてみましたが、そういうわけでもないようです。
読み進めていくと、『四畳半シリーズ』と『シャーロック・ホームズ』が融合をしたような不思議な世界の話でした。


そして、よくよく進めていくと…どうやら舞台は『京都』とのこと!
「京都とイギリスは似ている」みたいな感じで書かれているんですが…。
私の勝手なイメージとしては、『京都』と似ているのは『イギリス』ではなく『フランス』っていう感じなんですよね…。
なんというか、怒られそうですけど、『どちらも外の人間に厳しい』という感じが。
まぁ、別にどっちでもいいか。
で、シャーロック・ホームズたちは『ビクトリア王朝京都』という場所で暮らしています。
すごいワードですね…。
『鴨川』とかが普通にあって、本当ちぐはぐというか和洋折衷というか。
でも、不思議となんかしっくりくる感じがするんですよね、おもしろいことに。
さらに、登場人物たちが『原作』とは結構違うテイストで描かれていました。
シャーロック・ホームズは、スランプからまったく抜け出せずに、ちょっとおかしな感じになってしまっています。
モリアーティ教授は、シャーロック・ホームズの住んでいるアパートメントの上の階に引っ越してきて、そこからシャーロック・ホームズとものすごく仲良しになります。
なぜか、「一緒に天狗に弟子入りしに行く」とか、なんだかよくわからないことになっています。
途中、「これは一体何の話なんだろう…?」と何度も疑問に思うんですが…かと言ってつまらないわけではまったくなく、とってもおもしろいのでどんどん読み進めてしまうんですね。
そしていよいよ「これは推理小説じゃないな」と(ようやく)気付き、ワトソン博士が『東の東の間』からロンドンに旅立っていたあたりで、もう何がなんだかわからなくなってしまいます。
『どちらの世界』が現実なのか、どちらが虚構なのか。
チグハグさがどんどん加速していきます。
ワトソン先生のメアリーを愛する気持ちとか、アイリーン・アドラーがホームズを敬愛する気持ちとか、いろんなものが『森見登美彦さん』というフィルターを通してこちら側に届けられてきます。
そうすると、こういうテイストになるんだなーと、なんかしっくりきましたねー。
最後の方のロンドンでの大立ち回りについては、『ペンギン・ハイウェイ』の最後の全部押し寄せてくる感じにちょっと似ているなと思いました。

とりあえずよくわからないのはわからないままなんですけど、なんとなくまとまりを持って流れていきます。
そして最後、また京都に戻ってきたので、まぁよかったのかなとは思いました。うん。
確かに、『シャーロック・ホームズ的な話』を期待して読むと、ちょっと肩透かしを食らうというか、がっかりする人も多いかもしれないですね。
でも、表紙に『10万部突破』みたいなことが書いてあるので、人気があるってことなんでしょうね。
私も、おもしろかったと思いました。
こんな感じで終わってしまったので、続編的な感じなのはないのかな…?
でも、『シャーロック・ホームズ』のいろんな事件を、森見さんのテイストで書き直したりしたもの、この先出たりしないですかね?
それこそ以前読んだ『新釈 走れメロス 他四篇』のような。
きっとおもしろいことになりそうな気がするんですが…。
楽しみに待つとします。
Kindle Unlimited で読みました。
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