いまさら翼といわれても

読んだ本

米澤穂信さんの『いまさら翼といわれても』を読みました。
先日の『ふたりの距離の概算』の続刊です。

ふたりの距離の概算
米澤穂信さんの『ふたりの距離の概算』を読みました。先日の『遠回りする雛』の続刊です。 すっごく意味深なタイトルじゃないですか…。最初見たとき、「お、ついに奉太郎くんとえるちゃんがくっつくのか!?」みたいな、ちょっとしたウキウキ感があったんで...

『<古典部>シリーズ』、既刊分の最終巻です。
さて、どうなることやら…。

今作はまた短編集でした。
なかなかおもしろい話揃いで、とても読み応えがありました。
全部で6つです。

1つ目は『箱の中の欠落』。
これはたまたまなんですが、まぁ年の功ということで思いつきました。
確かに妹しかいない里志くんには盲点だったかもしれないですね。
私は妹と同じ高校なんですが、妹のときのほうが1クラス少なかったような気がします。
また、いま息子と娘は同じ小学校に通っていますが、息子は4クラス娘は3クラスですね。
そういう体験から、箱は何個か余ってるんだろうなとは思っていました。
相変わらず奉太郎くんは細かいことからいろいろ気づくなぁ…すごいなと思います。
しかし、そのような形での不正とはなかなかおもしろいですね。
どんな時代でもどんな場所でも、悪いことするやつはいるんだなと思いました。
そしてたかだか、『高校の選挙管理委員の委員長』だというだけで、偉そうに人を罵倒してくるようなやつもいるんだなぁと。
ちっちぇなー。 

2つ目は『鏡には映らない』。
奉太郎くん、本当にいいやつですね…。
麻美さんに対する悪口は封印しつつ、作った人を糾弾することはしない、でも名前は残す。
ある意味一番いいまとまり方なのかもしれないですね。
自分がこの企みに気づいたらどうするかなー、と考えます。
難しいですね…。
こっそり先生とかには言いに行くかもしれないなと思います。
けど、それぐらいかなー。
直接本人には言えないだろうし、先生もどう扱うかわからないですしね。
…っていうか、いじめられた麻美さんがどんな子なのかあまりわからないですが、こんな半永久的に残りそうなものに彼女に対する悪意を残そうとするなんて、なかなかバイオレンスですね。
いやー、「自分はバカだ」って晒してるようなモンじゃないですか。
恥ずかしいなー。
将来、自分の子供に見られて恥ずかしい思いすればいいなぁ、なんて意地悪なこと思ってしまいます。
確かに奉太郎くんはヒーローでした。 

3つ目は『連峰は晴れているか』。
なるほどなー、奉太郎くんはずいぶん気遣いの男になりましたね。
今後会うかどうかもわからない小木先生について「ヘリが好きだったな」っていう印象を持ったままでいるのは、先生に対して失礼だと思ったっていうことでしょうか。
すごい心配りだなと思って、ちょっとジーンとしました。
…この『いまさら翼といわれても』の一冊で、本当に奉太郎くんの印象が結構変わっています。
なんかすごくいいやつなんだなって思い始めているんです。
えるちゃんは奉太郎くんに最後なんて言おうとしたんですかね…。
やっぱりその「結構気遣いできるんですね」的なことを言おうとしたのかな。
短かったけど、なんかまとまってておもしろかったです。 

4つ目は『わたしたちの伝説の一冊』。
摩耶花ちゃんが漫研を辞めた理由がようやく語られました。
なるほどなー。
これはごたごたしすぎですね。
やめてよかったんじゃないかなと思いました。
しかも、先輩とタッグを組めることになって、きっと彼女にとってはすごくプラスになるんだろうなと思います。
とはいえなんと言うか…神山高校は進学校…なんですよね…?
「それでこんなぐっちゃぐちゃな争いするの?」と思ってしまうんですが…。
もっと早くに2つに分けて、描きたい人はガンガン描いて、と棲み分けをした方が良かったんじゃないかなって、正直思いました。
「漫研なのに漫画描けない」みたいな変なコンプレックスが合ったのかもしれませんが、だからってこんなに「性格悪っ」って感じになりますか…?
暇だったら勉強しろよ、スポーツしろよって思っちゃいます。
まぁ脳筋ゆえですが。
「なんかもっと他にやることないの?」って思いますね。
まぁそういう、言ってしまえば『低俗な人たち』と別れて、自分の決めた道をきちんと突き進んでいけるのであれば、漫研を辞めたことを正解にできるんじゃないかなと思います。
…古典部はやめないのかな?
まぁもちろん、摩耶花ちゃんのオアシス的な感じで残しておくっていうのはいいと思います。
漫画に全振りするっていうのも手かなとも思いますけどね…。
ただ、摩耶花ちゃんがいなくなったら、みんな悲しむでしょうね。
あと、奉太郎くんの読書感想文、本当にすごいですね。
尊敬します。
なるほど、そういう見方もあるんだなー。
目から鱗でした。 

5つ目は『長い休日』。
なるほどねー、奉太郎くんの省エネ主義はこういうところから来てたのか、と。
ちょっと悲しくなりました。
自己防衛の反応だったとは。
まぁ世の中、自分だけ楽して人に面倒を押し付ける人っていうのは…まぁいますね。
私もどちらかというと押し付けられるタイプかもしれないです。
会社のシュレッダーのゴミ出しとか、ウォーターサーバーの交換とか、近々やらなくてもそんなに困らないことなんかは、なんか溜まっているのが嫌なのでやってしまうことが多いです。
でもまぁ、これくらいなら別にいいんですけどね。
担任の先生はギルティですね…。
こんなに後々まで心に傷を負わせているわけですから…。
にしても、お姉ちゃんの「長い休日」と「いつかそれを終わらせてくれる人が来る」という言葉はすごいなと思います。
奉太郎くんは、『長い休日』をえるちゃんに終わらせてもらえたのかな。
まだまだ人生は長いから、そういうことも自分の中で咀嚼しつつ、折り合いをつけて生きて行って欲しいなと思います。
悪い人たくさんいるけど、悪い人ばっかりじゃないです。
まぁ、いわゆる『しっぺ返し戦略』ってことっていいんじゃないかなと、最近の私は思うようになりました。 

6つ目は『いまさら翼といわれても』。
表題作です。
えるちゃんの物語だったんですね。
奉太郎くんはやっぱりすごいなと思いました。
おばあさんが嘘をついてるだろうなっていうことは、何となくわかっていました。
プラス、家で何かしら進路についてとか言われたんだろうな、ということも察しがつきました。
でもまさか、「千反田家を継がなくていい」って言われてたとは…。
彼女にとって知らず知らずのうちに『千反田家を継ぐ』ということが自分のアイデンティティみたいな感じになっていたんでしょうから、それを根底から揺らがされてしまって、どうしていいかわからなくなってしまったんでしょうか。
とってもかわいそうだなと思います。
もちろん、お父さん・お母さんにも事情があってそうなったんだろうとは思いますが、もうちょっと考えてあげて欲しかったなー、と。
しかし、歌詞と自分の心情をシンクロさせて「歌えない」と降りて行った、というのはなかなかすごいですね。
私は、インストゥルメンタルの曲を聞くことが多いせいなのか、あんまり歌詞について考えることがないんです。
メロディーラインが綺麗だな、とか、この旋律はグッとくるな、っていうのはあるんですが、歌詞に助けられたり、傷ついたりっていうことがあまりなかったから、ちょっと想像ができませんでした。
「この曲の歌詞がいい」なんて言っているのをよく聞いたりするので、私の方が少数派なような気もがします。
しかし、自分が苦しんで辛い思いをしている時に、まさか迎えに来てくれる男子がいるなんて…。
そんなん王子様じゃん、惚れちゃうじゃん!
すごいですねー…。
私だったら、この先奉太郎くんしか見えなくなると思います…。
高2のこの時期、これから受験なのに、本当困ってしまいますよ。
…それはいいとして、結局合唱コンクールには出られたのかな、とちょっと心配です。
ここで物語が終わっているところが、またずるいなーって思っちゃいます。
一緒に次のバスに乗って戻ったか、それとも2人でこのままサボタージュしてしまったか。
どっちなんでしょう?
なんとなくですが、ちゃんと会場に行って、みんなの前で謝って、ちゃんと自分の役目はこなしたような気がします。
そうであってほしいなと、ちょっと思います。
まぁ、難しいですね。どっちでしょうね。

ここ数日はどっぷりと古典部の世界に浸ることができました。
女子高かつバリバリの運動部だった自分の高校時代とはまったく違う『青春』、なかなか堪能できたと思います。
ただ、この 『<古典部>シリーズ』、2001年から始まってまだ高2…。
『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』みたいなのはまぁ仕方ないとして、『おおきく振りかぶって』なんかも全然進級してくれないですよね(笑)。
ちゃんと完走まで見届けたいと思いますが…。
この『いまさら翼といわれても』が2016年刊みたいなので、すでに8年経っているわけですよ…。
ぜひ、がんばっていただきたいです。

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さちこ

40代2児の母。2011年からフリーランスやってます。東京の東の方在住。
第一子が発達グレー男児で、彼が将来彼の妹に迷惑かけずに生きていけるよう、日々奮闘中です。

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