道尾秀介さんの『いけない』を読みました。
道尾さんの小説は『N』以来です。

発売した時に、『王様のブランチ』で紹介していたのを見て、買って読んだ記憶があります。
ただ、今回再読してみてあまり覚えていなかったですねー…。
覚えていたのは『正直よくわからなかった』という感覚でした。
今回通しで読んでみて、その後に考察のサイトなんかをいろいろ見てみて、それでようやく全貌がつかめたような気がします。
なるほど、こういう話だったのかと。
中編くらいの話が4つはいっていました。
どれにも『絵』や『写真』があって、それを見るとこの内容の恐ろしさのようなものがわかって愕然とする、という仕掛けです。
私は今回も Audible で聞いたので、どうするんだろうと思ったんですが、ナレーションで「写真1」とか言われたときに、Audible で添付資料の PDF の『写真1』自分で見に行く、というスタイルでした。
まー、Audible ではこうするしかないでしょうねー…。
1つ目は『弓投げの崖を見てはいけない』。
一通り読み終えて、最後に表示される地図を見て、「誰が死んだのか」を当てるみたいな趣旨だったんだと思います。
以前読んだときは全然わかんなくて。
今回は「この人はこっちから来たから、除外」みたいなことを考えるのが、ちょっとめんどくさいっていう感じでしたが、「後の方には全然出てこなくなってしまったあの人が、あの事故で死んでたんだな」というのがわかりました…。
要するに私は「話の流れを考えて推理する」ということはほとんどできず、「過去に読んだ小説や漫画のパターンで認識していた」ということがわかってしまいましたねー。
まぁ、楽しみ方は人それぞれです…。
この事件は本当に悲しみしか残らなかったなーと思いました。
息子が同乗していたのを途中まで明かさなかったのは、正直ちょっとずるいなと思いましたが。
しかも父親本人は生きてたわけだから。
たまたま同じ名前だったのは…まぁ仕方ない、かな…?
まぁ、実際にそういう状態になったらとても辛いだろうな、とは思います。
何よりも、今回は奥さんが一番しんどかったですね、きっと。
旦那は目が見えなくなるし、息子は死んじゃうし、さらに昔付き合ってた元カレも死んじゃったし。
さらにさらに、旦那と一緒に死体処分することになったし…。
「昨日までは平和だったのに、どうしてこんなことに…」って思っているでしょうね…。
2つ目は『その話を聞かせてはいけない』。
今時の小学生って、こんなにあからさまにいじめるか…? って、正直ちょっとそこは疑問に思いましたが、まあそういうこともあるのかな。
カーくんがかわいそうでした。
途中でいなくなってしまった共同経営者の人は、一体どういう事情だったのかわからないですが、まぁその後に店も盛り返したみたいだし、良かったと思いました。
しかし、ばーちゃん、子供殺そうとするとかね…。
カーくん相手に、嘘をついている素振りをまったく見せなかったところが、本当に怖いと思いました。
そして、そんな中でも山内くんとちゃんと友情が育めて良かったね、と。
せめて子供達にとっては、平和な街であってほしいなと思います。
3つ目は『絵の謎に気づいてはいけない』。
まさか黒幕がその刑事さんだったとは…という感じでした。
若い刑事は殺されてしまいました。
かわいそうです。
何と言うか…やっぱり宗教って怖いなと思ってしまいます。
人を狂わせますね…。
たまに週刊誌の噂みたいな感じで、芸能人・警察関係者・政府要人とか入信しててどうのこうの、みたいな話を見ますが、実際この話みたいなこともあったりするのかなーって思うと怖いですね。
慎ましくも真っ当に生きている人たちが、変に不利益を被らないような世の中になってほしい、とは切に願います。
結局、この刑事が1章での証言をしたがために、犯人は逮捕されなかったわけですし。
何と言うか…仲間を犠牲にしてても守らなきゃいけないものなのかな、とちょっと理解が追いつきません。
まぁ、価値観は人それぞれということなんでしょうか。
昨今のスマートロックは、簡単にドアから外せるようなものではないけど、犯人が取り付けて取り外したんだったら、剥がれやすい素材にしておいたのかな?
「今はスマートロックが登場してしまったから、密室殺人とかもなかなか考えづらくなってきた」という話をどこかで読んだ記憶があります。
2019年の本なので、それの先駆け的な感じなのかな?
最期は『街の平和を信じてはいけない』。
最初はなんでこんな仰々しいタイトルなのかわかりませんでした。
読み終えて考察が書かれているサイトをいろいろ読んで、「これまでにこの本の中で犯罪を行ってきた人が、誰も逮捕されていないということが、このタイトルで表されている』と読んで、すごく恐ろしくなりましたね…。
それにしても、自分の告白が書かれた手紙がなくなっていて、代わりに白紙の便箋が入ってて、本当に肝を冷やしただろうと思います。
その手紙は結局、破られて風に流されてしまったから、発覚しないでこのまま終わるんでしょうね。
あとはもう、どこまで良心の呵責に耐えられるかによって、彼の寿命が決まるんじゃないかなと思いました。
私だったら無理だな…。
前回読んだ『N』もそうですが、話の構成・つながりがすごいなと改めて思いました。
なんとも言えないもやもやした感じ、また抱えてしまいますねー。
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